#078 パソコン用語の読み方

1999/09/01

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 今回は単語の読み方編である。

 以前にも話したが、パソコン関係の用語には所謂「頭文字語」すなわちアクロニムが非常に多い。とりわけ3文字のものが多く、その例はこの前いくつか列挙してみたが、これらの読み方には、およそ次のような法則があるようだ。

 実際に適用してみよう。大抵の3文字アクロニムは「3文字とも子音」である場合が多い。例えば、DTP=ディーティーピー、TFT=ティーエフティー、FTP=エフティーピーなど。これらはアルファベットをそのまま並べて読む。非常に読みにくい例だとWWW=ダブリューダブリューダブリューというアクロニムがある。Wが3つ並んで字面は良いのだが発音するとどうにも間延びしてしまっていけない。少し略してダブダブダブなどと読むと、衣服のサイズが大きい様を表す擬態語のようになってしまってしまりがわるい。素直に元のWorld Wide Web=ワールドワイドウェブと読んだ方がかえってすっきりするというものである。

 母音を含む場合でも、母音が端にあったり2文字以上あったりすると、やはりアルファベット読みになる。USB=ユーエスビー、CPU=シーピーユー、GUI=ジーユーアイ、CGI=シージーアイ、EMS=イーエムエスなどである。筆者はかつてUMBを「アンブ」などと勝手に読んでいたのだが、この法則にのっとれば「ユーエムビー」と読むべきなのであろう。

 第2の例、つまり母音が真ん中一つだけという場合は、発音のしやすさからか、通常英単語風に読まれる。RAM=ラム、ROM=ロム、DOS=ドス、FEP=フェップ、FAT=ファット、GIF=ジフなどがそうである。

 第3の例はあまりないが、ISA=「アイエスエー」または「アイサ」、ISO=「アイエスオー」または「イソ」、EDO=「イーディーオー」または「江戸」、IDE=「アイディーイー」または「井出」と読まれている。

 3文字アクロニムに関連して言えば、MS-DOSのファイル名につく拡張子もたいてい3文字だ。これらも上の法則にほぼ従って読まれる。MS-DOSの場合に実行形式のファイルになる3種類の拡張子 .BAT .COM .EXE は、そろって第2,第3の例にのっとり「バット」「コム」「エクゼ」などと読まれる。その他 .SYS は「シス」だし .DOC は「ドック」だし、.TAB は「タブ」である。システムの設定を記述する config.sys と autoexec.bat は、それぞれ「コンフィグ・シス」「オートエクゼック・バット」などと呼ばれていたりする。それにしても、今となっては随分懐かしい響きである。

 読み方がいろいろあって統一されていない単語もコンピュータの世界にはいろいろある。有名なところで「Linux」を何と読むのか、ということが話題になっている。作者がそのことを明示していなかったこともあって、「リナス」「リヌクス」「リナックス」「ライナックス」などと色々に読まれていて、国や地域やグループによってそれぞれ読み方が異なったりして面白い。

 同様にTeXは「テフ」「テック」「テッハッ」などと読まれたり、GNUは「ジーエヌユー」「グニュー」「ニュー」「ヌー」などと読まれたり、いろいろだったりする。ちなみにGNUとは「GNU is not UNIX」の略で、自己再帰的なアクロニムである。

 それにしても、前にも少し話したことであるが、とかく日本では外来語を略して読むことが多い。略して言いやすくなるならいいのだが、日本語の場合、却って妙ちきりんな言葉になったりしている場合が多い気がする。例えば「Internet Explorer」を「IE」などと略す。字面だけならまだいいが、これを「あいいい」などと発音するものだから、なんだかとても間抜けである。一方「Netscape (Navigator/Communicator)」を「ネスケ」なんて言うのも負けず劣らず間抜けである。ちなみにNetscape Communications社の見解では「Netscape Navigator」と書いて「Mozilla(モジラ)」と読むのが正しい読み方らしい。あまり流行っていないようであるが。

 このほか若い人たちの間では、「メールアドレス」を「メアド」と言ってみたり、「(掲示板などへの)書込み」のことを「カキコ」と言ってみたり、妙な略語が流行っていたりする。もっとも役所文書でも「スーパーコンピュータ」のことを「スパコン」と言ったりしているから、同じ様なレベルなのかも知れない。


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