△ 不等辺ワークショップ第75回 (2011/03/26)


トップページ > ワークショップ > 第75回

<前一覧次>

写真 写真  進行役を務めた林成彦です。3月11日の東日本大震災の犠牲になった方々のご冥福をお祈りし、被災者の方々に心からのお見舞いを申し上げます。 震災後、私は一週間ほど北海道に行っていたのですが、東京に戻ってみて、夜のマチが暗いのにおどろきました。特に青梅街道は暗かった。停電やら節電やら品薄やら臨時ダイヤやら、東京も震災以前とは別の東京になっています。毎日のことなので慣れるっちゃ慣れるわけだけど、少しずつストレスはたまっているんでしょうね。震災の影響で私はいくつかの仕事がキャンセルになりました。それは仕方ない。私が今回のワークショップを中止(自粛)しなかったのは、時間と気持ちを持て余していた私自身のためです。わがままですみません。「アタマと身体を両方とも使う」。「初対面の相手と意思の疎通を図る」。「アイデアや思いつきを持ち寄る」。「普段の自分とはちょっと違った行動をとる」。これがこのワークショップのテーマです。他でもない私自身がそういう体験をしたかった。あるいは単に大きな声を出したり大きく体を動かしたり大きく笑ったりしたかった。いやぁ、やってよかったです。こういうのって大事だなと再認識しました。演劇やそのワークショップはひとりではできません。ご参加くださったみなさんのおかげです。ありがとうございました。みなさんにとっても何か得るもののある時間であったならいいけれど。

写真 写真 さて。そのワークショップのレポートです。午前11時に自転車で会場へ。快晴でよかった。会場ロビーでアシスタントの田澤恭平くんと簡単な打ち合わせ。 今日は当日キャンセルが多いかなー、いったい何人集まるのかなー。そんな心配は杞憂でした。時間通りにみなさんいらっしゃいました。嬉しいです。いつものように何となく輪になってフリートーク。「おもてなしゲーム」はいつの頃からか「おもてなしトーク」に変わりました。ワークショップ本編はウォーキングからスタート。準備体操を始めたら「準備体操やるようになったんですね!」と尋ねられました。はい、やるようになりました。以前はやっていませんでしたね。今日は大きく体を動かしたくて、そういう遊びをこの20〜30分後にやる予定だったんですが、結局やらなかったなぁ。段取りを間違えた。普通にワークショップを始められたこと自体が嬉しくて、ちょっと上の空だったかもしれません。身体をほぐし、会場に慣れ、お互いに慣れたら、2チームに分かれてテマリ。チーム名は「おてなみ、ひー」と「ひいふーおおい」です。各チームのメンバーの頭文字を並べたもの。プレイの前にチームで円陣を組んでチーム名を叫びます。…叫んでもあまり気合いの入らなさそうなチーム名だなぁ。試合は17対4で「ひいふーおおい」の勝ち。おめでとうございます。

写真 写真 続いて30秒スピーチ。お題は「3月と聞いて思い出す音楽」です。 できればJ−POPに限定。曲にまつわる思い出や曲に対する思い入れを30秒間語ってもらいます。3月っていろいろエピソードがありませんか? 特に多感な時期は。そのエピソードと曲がリンクしていたりしませんか。私は候補曲が多くてですね、選びあぐねましたが、薬師丸ひろ子の「月のオペラ」。あれは高校に上がる年の3月だ。「明日が見える魔法をあなたにもおしえてあげる」という辺りが好きなんです。聴いていると魔法でなにか素敵なことが本当に起こるような気がした。薬師丸ひろ子マジック。興味のある方はユーチューブでどうぞ。これらのスピーチ内容を素材に一人ひとりのニックネームを決めました。「コショウ(故障)」「ケンドウ(剣道)」「タケダ(武田)」「さくら」「るいせん(涙腺)」「ゴフク(呉服)」「サブちゃん」「ものらん」「ぼろぼろ」「ふっかつ(復活)」「ロマン」「こっそり」。最後のは私です。こっそり聴きました。だって魔法だから。「ゴフク」はいい名前ですね。語感がいいし、呼びかけやすい。「タケダ」はスピーチした曲が想像されますね。暮れなずむ街の光と影のなか。3月だなぁ。50音順に並んだり、名前を呼んでキャッチボールをしたり、急ごしらえのニックネームを頭に入れて田澤くんタイムに進みます。アシスタントの田澤くんにバトンタッチ。プログラムも進行もお任せ。真っ昼間なのに、灯りを落とすと半地下のこの会場はかなり暗くなるんですね。新鮮。ささやかな節電。

写真 写真  。これは橋口譲二さんの写真集「職」(メディアファクトリー)をテキストに使います。第71回のワークショップでもやりました。よければそのレポートもご参照ください。私は学生の頃から橋口譲二さんの写真の大ファン。特に「それぞれの時」(新潮文庫)は名著だと思います。「職」も素敵な写真集です。その写真のコピーをひとり1枚ずつ配布。1枚の写真から人物について想像を巡らせます。どんな仕事をしているのか。どうしてその仕事に就いたのか。その仕事の魅力はなにか。逆に苦労していることはなにか。将来はどうなりたいか。などなど。過去と現在と未来をイメージします。10分ほど思いを巡らせたら、自己紹介タイム。写真の人物について一人称で自己紹介します。ひとり1分。そして質問タイムもひとり1分ずつ。喋ることで、質問に答えることで、さらにイメージが深まるのではないかな。周りの人だけじゃなくて本人にとっても。なので重要なのはむしろ質問する側です。本人のイメージを深めたり広げたりするような質問ができるか。他者とのコミュニケーションを通して自己理解が深まる。それって、考えてみたら普通のことですね。

写真  ここから小グループによるフリートーク。 もちろん役の人物のままです。イス取りゲーム方式でグループの顔ぶれをシャッフルして3回おこないました。ドトールとかスターバックスとかでお喋りしているイメージです。1回目と2回目は初対面トーク。若手の社会人同士のコンパみたいな感じ。3回目はモードを切り替えて同窓会トーク。全員が高校時代の同級生だったという設定にします。社会に出てそれぞれの仕事に就いて、ある程度の苦労もして、大人の顔になってきたみなさんです。同窓会だと喋っている雰囲気ががらっと変わるね。こうしてお喋りすることで、急速に馴染んだ感じがあるんじゃないかな。役の人物と自分とが。役の人物同士はもちろん。

写真  ここまでの流れを踏まえて告白四角歩きに進みます。同窓会の帰り道という設定で、小グループで思い出話をしながら歩く。最後はある人物がある人物に告白をして幕が下りる。このワークショップでやるのは初めて。じつは高校演劇の講習会のために作ったプログラムです。それを今回は『職』と組み合わせてみました。お喋りしながら5周ぐるぐる歩くというだけの作品なのにね、3本ともひじょうに見応えがありました。ちなみに作品のタイトルはそれぞれ「卒業写真」「仰げば尊し」「気まぐれロマンティック」。どれも『30秒スピーチ』のときにスピーチされた曲名です。実際に曲の用意はないけど、BGMで流れているイメージですね。きっと告白の直前にインですね。この同窓会は3月にやったんでしょうね。泣いちゃいますね。でも明日からまた未来に向かって歩いてね。みなさん、お疲れさまでした。ありがとうございました。

写真  次回のワークショップは5月28日(土曜)の予定です。 「俳優を目指さない演劇ワークショップ」です。ぜひ多くの方にご参加いただきたいです。お申し込みをお待ちしています。特に20代30代の方、遠慮なさらず。これって珍しいでしょ。逆でしょ。普通の演劇ワークショップだと、20代30代はボリュームゾーンです。参加者全員が20代30代というものも珍しくない。このワークショップもスタートしてしばらくはそうでした。でも私は広くいろんな世代の人たちと遊びたい。コツコツとアナウンスを続けた結果、おかげさまで参加者の世代は上にも下にも広がり、今回はついに真ん中の20代30代の参加者が…。まぁ、それもどうかと思うわけです。全世代の方、ぜひ遠慮なさらず(ただし高校生以上ですよ)。このレポートを書いているのは4月1日(金曜)です。今日から新年度。それにふさわしく、東京は暖かく、すっきりと晴れています。次回のワークショップの頃には、私たちの暮らす世界が今日よりも少しでもよくなっていて、もっと気持ちよく遊べるようになっていることを祈って。

 不等辺演劇倶楽部 林成彦(はやしなるひこ)


写真 写真  こんにちは。アシスタントを務めました田澤恭平です。 アシスタントは、参加者のみなさんがグググッと盛り上がっていく感じが分かって嬉しくなってしまいます。笑顔になっていくのを見ながら、林さんはすごいなぁとひたすらに感心してしまうのです。

 今回も田澤時間を頂きました。2パターン考えてきたのですが、事前の打ち合わせで暗闇ワークをすることにしました。普段どうしても視覚に頼りがちになりやすいので、眼を閉じて貰い、他の感覚だけで世界を感じて貰いました。

 先の震災の爪痕は深く、僕の住む東京も計画停電で今までとは違う雰囲気です。災害とはなかなか仲良く出来ませんが、ワークショップを通して、少しでも笑顔に、自分の感覚が力になることを知って頂けたらとおもっています。

 皆さんに色々とご迷惑をおかけしてしまいましたが、とても幸せな時間を過ごせました。ありがとうございました。


★アンケートより

写真 写真 ○みなさんすぐにうちとけて、明るい感じでよかったです。
○あだ名を決めるやつ、おもしろいですねー。
○告白、ビビりました…笑
○写真からの自己紹介→お芝居の流れが興味深かったです。
○「写真→プロフィールを考える→同窓会話」の活動がとてもおもしろかった!!
○思い出を語りながらシーンを作っていくプログラムは、とても自然に演技に入ることができ、良かったです。
○ぐるぐる歩きながら演じながら思い出話(架空)をするのは会話しやすくていいなぁと思いました。
○いつもどおり、的確な説明でわかりやすかったし、少しずつハードルを上げていく感じがプロい。
○思ってた以上にゲームで、緊張もありましたけど、とても楽しめました。元気がでました。参加してよかったです。
○年齢性別それぞれの仕事関係なく対等に一緒に遊べるというのは、こうしたワークショップのおもしろさですね。

<前一覧次>


トップページ > ワークショップ > 第75回