△ 不等辺ワークショップ第71回 (2009/12/13)


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写真  進行役を務めた林です。いま青森市内でこれを書いています。今日は12月21日(月曜)です。昨日まで弘前市で高校演劇の東北大会があって、それを観劇した帰りです。外はものすごい雪です。朝からずっと吹雪いている。弘前市も3日間ずっと雪でしたが、青森市はもっとすごい。弘前と青森とでは雪がちがいますね。量も質もちがう。これと比べると弘前の雪は可愛かった。この降雪と積雪ではマチ歩きはできそうにないな、と思ったのでパソコンを開きました。なんとか午前中にこのレポートを書き終えてしまおう。

写真  第71回のワークショップについてレポートします。12月13日(日曜)の午後、世田谷区祖師谷の会場でおこないました。この会場を使うのもこれで4回目です。そろそろ慣れてきましたよ。馴染んできた。思えば今年は春に八幡山の本拠地を追われ、しばしジプシー状態だったのでした。使い心地のいい会場を新たに見つけることができて良かったです。午前11時にアシスタントの柴田愛奈さんと落ち合って、ロビーで簡単な打ち合わせ。会場の設営をしてみなさんをお迎えします。

写真  今回のメインはです。橋口譲二さんの写真集「職」をテキストに使います。さまざまな職業の方々のポートレイトが1冊にまとめられています。おもしろいのは被写体の一人ひとりに簡単なインタビュー文が添えられていること、そしてどの職業も同じ職場の先輩と後輩がセットになっていることです。見開きの左ページが先輩、右ページが後輩。先輩後輩のインタビュー文を読み合わせると、職業生活のイメージがより広がります。この写真集、13年前に出版されたものなのですが、じつは私、発売されてすぐに買って、橋口さんのサインももらったんですよ。当時から橋口さんの写真のファンでした。それはさておき。今回はこのなかから10枚ほどの写真をピックアップ。写真の部分だけをひとり1枚ずつ配って、その人物について想像を働かせてもらいました。写真 豊かに色づけし肉付けをする。趣味やら生活習慣やら悩みごとやらetc.特に職業生活について具体的にイメージを膨らませるようにお願いしました。写真 ちなみに用意した写真は「食品サンプル製作者」「動物園飼育係」「花火師」「漁師」「アミューズメントロボット外装製作」「義肢装具師」「セレモニースタッフ」の方々のものです。写真を勝手に使わせていただいてすみません。写真から想像を膨らませる作業が第一段階です。ここまでは個人作業。

 第二段階はその人物を演じます。演じると言っても、やるのは簡単な自己紹介およびQ&A。もちろん主語は「私」です。これはおもしろい。緊張もしたと思いますが、そういうことも含めて丸ごと見応えがありました。やっぱり雄弁なのはその人物の息遣いだったり口調だったり声音だったり表情だったり身体の姿勢だったりします。写真 いわゆる「準言語」的な情報ですね。セリフの内容そのものよりも、その周辺にあるものがもっと雄弁にその人物を印象付ける。例えば「好きな恐竜はなんですか?」「プテラノドンです」と、文字で書いてしまえばただこれだけの会話ですが、実際のこの会話はものすごく情報が豊かでした。質問と回答の間に30秒以上の間があってね。観る者を引きつける、豊かな人間味がそこに感じられました。一人ひとりの魅力をどう引き出すかが、質問者の腕の見せどころです。写真 事前に準備された自己紹介のときよりも、やっぱりQ&Aのときのほうがその人物が見える。『ZOO』では、相手に質問をすることで自分が何者なのかを知りました。それに対して『職』では、相手の質問に答えることで自分が何者なのかを知る。そんな質問ができるといいですね。自分のためにする質問ではなくて相手のためにする質問。ZOO『職』は背中合わせだなぁ。でもどちらも人と人とが関わることで人の新たな側面が見えるという点では同じ。とっても演劇的です。

写真  第三段階はその人物同士でコミュニケーションをとります。『四角歩き』の要領で、歩きながらペアでお喋りをしました。これもおもしろかったなぁ。順繰りに流れていくなかで、背景に大きな物語が垣間見えたのが素敵でした。物語というか世界というか。山形に長澤まさみ似の奥さんがいるのに出張先の東京で女性に声をかけていたりとか。写真 ゾウの義肢作りを発注されて目を白黒させていたりとか。あっちにこういう人たちのドラマがあり、こっちにはこういう人たちにドラマがあり、あっちとこっちは合流したりすれちがったり、人と人とが出会ったり出会わなかったりして、全体として見えてくるものがある。小さなピースをいくつも組み合わせることで、ピースには描かれていない、もっともっと大きな絵が見えてきます。それって演劇作品の醍醐味だと思います。今年の東北大会で最優秀賞を受賞した作品もそうでした。この『職』も、上演時間は10分間ほどの小さな作品ですが、十分に魅力的な演劇作品でしたよ。全体としておもしろい。

写真  ご参加くださった「豚キムチ」「チキンタツタ」「北京ダック」「肉じゃが」「シーチキン」「くじら」「ジャーキー」のみなさん、お疲れさまでした。これらのニックネームは肉料理をお題として命名されたものです。ちなみに私は「ホットドッグ」、アシスタントの柴田さんは「チョリソー」でした。前回から始めた3秒自己紹介、なかなかいいゲームだなー。しばらく定番にしようかしら。そう言えば「弟が反抗期です」というの、いい自己紹介ですよね。ぐるぐると何周も回転したなかで、この一言がいちばん印象に残りました。

写真  年内のワークショップはこれで終了です。2009年は1年間で9回やりました。ご参加ご協力くださったみなさん、ありがとうございました。2001年にスタートして早くも丸9年。いよいよ10年目に突入です。次回は1月31日(日曜)です。「俳優を目指さない演劇ワークショップ」です。初参加の方は大歓迎、2回目3回目の方ももちろん大歓迎です。高校生以上であれば年齢不問、演劇経験も問いません。多くの方からのお申込みをお待ちしています。楽しく演劇で遊びましょう。来年もよろしくお願いします。

 不等辺△劇団WS管理部 林成彦(はやしなるひこ)


写真 写真 今、子どもたちの遊ぶ機会が減っている。
公園も規制が厳しく、昔のように自由に遊べるわけではないし、核家族化が進んでいるから家の中でおじいちゃんおばあちゃんと遊ぶ機会も少ない。
学校では休み時間に校庭や教室で遊べても、放課後は塾に行く子どもも増えた。
両親が共働きだと放課後は学童保育や児童館で遊ぶ機会はあるが、そんな子どもたちも年々増加の一途をたどり、スペースが狭くて現場は困っているそうだ…という話はさておき、林さんのワークショップはいわば高校生から中高年までの遊び場だ。
今回の参加者からも、幅広い年齢層の方が集う場だから貴重だというご意見があった。
異なる世代の方と一緒に遊ぶ場…今回の参加者は7名と少なめだったが、家庭環境の変化も受け、今後ますます需要が増えていくのではないだろうか。
これをお読みになっているあなたも、猫がコタツで丸くなっている間に、林さんのワークショップをちょっと覗いてみませんか?
費用対効果は私が保証します(笑)


★アンケートより

写真 写真 ○初対面の方と自然に楽しめました。
○はじめの頭文字で名前を連想していくゲームの時から和やかな雰囲気があって、あっという間の4時間でした。
○導入から水のように溶けこめるような雰囲気づくり。試行錯誤の中から作られてきた場なのだろうと思います。
○体を動かしてほぐしていくと、体自身が「動きたい」と感じるのかなと思いました。
○肉料理を名前(呼び名)にするアイデアはとっても良いのですが、やっぱり呼びづらかったです(笑)
○今回やったことは全て楽しかったのですが、人物になりきっての自己紹介は面白かった!
○自分はいったい何を表現したいのか?を考えてみるキッカケになりました。良い時間に感謝です。
○林さんにとってのこのWSはご自分のインプットにもなっているとは思いますが、皆さんに合わせて臨機応変に対応されているところがすばらしいですね

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