△ 不等辺ワークショップ第22回 (2004/11/07)


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写真
 リーダーを務めました、はやしなるひこです。ワークショップの様子をざっとお伝えします。
 今回から受付の際に会場費としてひとり100円のカンパをお願いしています。恐縮です。これまで完全無料で21回つづけてきましたが、ついにチカラ尽きました。劇団がじゃなくて私がです。劇団本体は磐石の財務内容を(たぶん)キープしています。劇団員もご安心を。この程度でチカラ尽きる私に愛を。いつも心に太陽を。アルジャーノンに花束を。
 会場入り口の受付テーブルに貯金箱を置いて、アシスタントの越後かずえと私が「いらっしゃいませ〜」などとやっていましたら。通り掛かりのおばさんから「あんたたち、新潟の地震の募金かなんか?」と尋ねられました。あのとき私が「そうです」と答えていたら、それっていま流行の「オレオレ詐欺」の一種だったわけだ。このワークショップが史上もっとも犯罪に接近した瞬間でした。私はウソがつけなくて幸い。そういや「越後かずえ」というのは新潟っぽい名前だよなぁ。

『ジャグリング』〜『バースデイ』

写真  携帯電話やデジタルカメラについてのお願いを述べたあと、すぐに「ジャグリング」をはじめました。例によって「ネーム」「フード」「サイレント」の3つのボールを使ってキャッチボールをします。フードの呼び名はハヤシライス、いちぢく、松の実、石焼きいも、オレンジ、おはぎ、みそ汁、クリームシチュー、ハムサンド、マスタードに決まりました。

 ひきつづき「バースデイ」に進みます。また輪になって、一個のボールを順々にパスしていきます。やることは「ジャグリング」とよく似ていますね。こんどはボールを誕生日プレゼントに見立てて、相手に手渡しします。

  1. 相手に「お誕生日おめでとう!」と言って差し出す。
  2. ちっちゃい子どもがお母さんに「お母さん。これ、○○した△△!」と言って差し出す。
  3. おじいさんおばあさんがお孫さんに「◎◎。これ、○○した△△!」と言って差し出す。

写真  最初に「1」を回し、「2」と「3」をそれぞれ試し、最後は「2」と「3」を同時に(2種類のボールを使って)回しました。
 こう書いてみて気づきました。「1」から「2」に進むときに格段にむずかしくなっていますね。難易度がぐっと上がる。「○○した△△」は、たとえば「庭で拾ったもみじ」みたいに毎回その場で思いついたことを言うのです。「キリンが逆立ちしたピアス」とか(古い…)。「◎◎」は孫の名前で、フードの呼び名を使います。これはルールが凝りすぎだったかなぁ。スピードアップすると、アタマが混乱してなにがなんだかわかりません。「松の実。これ、庭で拾った松の実!」とか。おじいさん、なにを言っているのかね。私だけど。ルールには合っているけど。

『ごみ問題』

写真  五味太郎の絵本を問題集として使うゲーム。去年もいちど同じゲームをやりましたね。今回はルールを一新。完全リニューアルです。リサイクルと言うべきか?
 出題者がたとえば「はげましことば」を出題するとします。回答者たちは「しっかり!」とか「あとちょっとだ!」とか、ひとりひとり「はげましことば」を答える。そこまでは去年と同じです。今回はさらに、いま答えたことばを「せいの!」で一斉に叫びます。みんな一ヶ所に固まっていて、出題者に向かって叫ぶんですね。出題者にそのことばをかける。そのことば(だけ)を言いながら、肝心なのは「愛」を伝えることです。
写真  これ、うれしいよね。ぜったい。出題者は一身に、数々の「はげましことば」を受けます。そしていちばん「愛」を感じたひとりを選びます。選ばれた人がつぎの出題者になります。それを繰り返す。仮に出題が「けなしことば」や「おわかれことば」であっても同じ。伝えるのは「愛」なんですね。
 このゲームはお正月の「箱根駅伝」がヒントになっています。あれってタスキの受け渡しのときに叫んでいますよね。待っているランナーが、走ってくるランナーに向かって。大きく手を振って。強い感情をこめて。私はテレビで見ていて、あんな具合に自分を呼んでくれる人が待っていたら、そりゃがんばっちゃうよなぁと思ったのでした。うれしくて。実際この「ごみ問題」、手応えのあるゲームになりましたね。またかならずやりますよ。

『ボイ・トレ』〜『テキスト・リーディング』

写真  ボイストレーニング。いわゆる発声練習です。輪になって立ち、声の受け渡しをします。特定のひとりに向かって「アーーー」と声をかける。相手はそれを受けて、「アーーー」と声を返す。このとき相手と同じ高さの声を出すのがルールです。これを順に繰り返します。発声練習というか、むしろ聴く方の訓練ですね。相手の声をきちんと聴くこと。その後「アーーー。アーーー」と音を2音ずつにしたり、目を閉じたりとひねりを加えていきます。

 相手の声を聴き、声を合わせる感じをつかんだ上でテキストの朗読に進みます。テキストは山田詠美の「ぼくは勉強ができない」。主人公の秀美(高校生男子)とその祖父の会話。話題は浪費癖のある仁子(秀美の母親)のこと。母の浪費癖のせいで家族がつましい食生活を強いられることに対する不満。などなどが語られている部分です。文庫本で2ページ弱の分量でした。
 テキストをまず一読。黙読。朗読。つぎに文章を句読点で区切って、句読点ごとに読み手を替えて全員で朗読します。さらに句読点を2つずつ、3つずつ、4つずつとバージョンアップさせました。声を重ねていくんですね。やっていると「声のサーフィン」をしている感じですね。波を待つように、特定のだれかの声が聞こえるのを待ってタイミングをはかるのです。

『ペンキ屋』

写真  まずは「あ」から「ん」まで50音の会話を試し、そして透明な部屋に入って壁にペンキを塗ります。ペンキを塗りながらの50音会話。それを3部屋塗ったかな。4部屋目からはさっきのテキストを参考にします。「ぼくは勉強ができない」に書かれているセリフや情景、人物など。それを踏まえて「それっぽいセリフ」を言うこと。「ペンキ屋」をこういうルールでやるのは、ワークショップでははじめてですね。私個人はこれに演劇創作の新たな可能性を感じてもいるのですが、どうでしょうか。
 今回はほかに、途中からささやき声の会話に変えたりなどのひねりも加えましたね。「ペンキ屋」はいろいろな工夫がほかにも考えられそうです。最後の部屋ではBGMをかけました。その曲の影響か、会話の内容がぐっと「家族寄り」になったというか、家族を思いやるようなセリフが増えたのがおもしろかったです。それまではむしろ「貧乏寄り」で。つましい暮らしを嘆くようなセリフが多かったのに。曲の存在って大きいですね。家族のありがたみをイメージさせる曲だなんて。なにを使ったかはご想像におまかせです。


写真  今日はこれにて終了。質疑応答やMVPの発表をすませ解散。自由参加のうちあげに至る。私にとってはなかなか悪くない、いい日曜日でした。ご参加ご協力くださったみなさん。お疲れさまでした。ありがとうございました。日曜日が毎週こんなだといいですね〜。

 今回は参加の呼びかけをこのホームページ上でおこないました。今後もそのつど参加者を「大募集」します。ホームページの案内をお見逃しなく。リピーターの方のご参加ももちろん大歓迎です。お知り合いの方をご紹介くださるのもとっても嬉しいです。ぜひ奮って遊びにいらしてください。演劇をおもちゃにして遊びましょう。ただし遊ぶからには、妙な下心なく、私は子どものような本気さで遊びますよ。

写真 そうそう。ワークショップでははじめて私はノドを嗄らしてしまいました。「ごみ問題」でですね。大きな声を出しすぎましたね。空気も乾燥していましたね。でももう何年もワークショップをやっているのに、ノドをやってしまったのははじめてなんですよ。びっくりです。「ごみ問題」の後、声だし系のゲームがつづくのに…。未熟者だ。
 今回使った曲は山崎まさよしの「僕はここにいる」、あがた森魚の「Be My Baby!」、さだまさしの「北の国から」の3曲でした。じつはもっといろいろ用意していたんです。自分で選んだ曲を稽古場でかけるのって気持ちがいいんですよね。次回はもっとたくさん曲をかけようかな。
 ほかにも反省点として。私は「輪になってください」っていうのが多いですね。ゲームのたびに輪になっている。輪をもって尊しとなす。いつも多いけど、今回は特に多かった気がします。反対に「ペアになってください」ってのを私はほとんどやらないけど、すこしはやってみてもいいかな。バリエーションのためにね。どのゲームも次にやるときはちょっとひねってみますよ。それを自分の宿題にします。お楽しみに。ひねりのアドバイスもよければぜひ。ではでは。また稽古場で。  


写真とても新潟っぽい名前ではあるのですが、越後は4代続いた八王子っ子なんですよ〜。
さてさて、久しぶりにアシスタントをやらせてもらって思ったんですけど、やっぱりいいですね〜ワークショップ!
参加メンバーの硬〜い表情が「ジャグリング」中にどんどん崩れて、あっという間にいい笑顔になってる。
しかも「微笑み」なんてもんじゃなく、かなりの「大笑い」顔ですよ。見ているこっちも「うふふ♪」となってしまいます。
今回印象的だったのは、普段は会社員でいらっしゃるというオレンジさん(40代後半男性)でした。
不等辺の公演を何度か観てくださっていて、自分の幅を知りたくての参加だったそうです。
なんというチャレンジ精神!しかもとても魅力的で、今回のMVPを獲得されました。後から芝居経験ゼロと聞いて一同びっくり。
これからも、芝居経験の有無にかかわらず、色々な人に参加してもらえたらうれしいですね。


★アンケートより

●初めてだったのでものすごく緊張していたのですが、とても優しい雰囲気で楽しかったです。
○ありがとうございます。ぜひまた遊びにいらしてくださいね。

写真 ●自分の可能性(?)を引き出そうと参加しました。楽しい時間を過ごせたと感謝しています。
○こちらはただ遊びの場を提供しただけで、たいしたお役には立てなかったかも…。遊びながら、ご自分でなにかに気づいていただけたならなによりです。

●ずいぶん久しぶりのワークショップ参加でしたが、昔よりも雰囲気がやわらかくなっている気がしました。
○私も歳をとりましたからね…。今回のような感じで、コンスタントに回数を伸ばしていきたいです。

●「ごみ問題」は声の大きさやアピール度というより、”いやし対決”なのかも。
○そうかも。そうだったかも。「ごみ問題」というより「なごみ問題」だったかも。だから私の愛はだれにも届かなかったのだ…。

●「ごみ問題」は、時間を区切るなどして考えつかなければ参加できないとした方が切迫して思いつくかも。
○なるほど。それもアイデアですね。じつは「ごみ問題」のルールを作ったのが土曜日だったのです。昨日の今日なので、思いつきだけでやってしまいました。「バースデイ」も土曜日ですし、朗読テキストを決めたのも土曜日でした。怠慢だなぁ。もうちょっと早くから準備しないと…。

●「リーディング」と「ペンキ屋」の融合は、短い時間ではむずかしいのかも。
○そうですね。あの辺りの混ぜ合わせ具合にも工夫が必要だったかなぁと思います。

●最後にも「ジャグリング」をやってみたかった。
○やりましょう。次はやります。

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