トップページ > ページシアター > 背中のイジン > シーン33|初演版 【公演データ】
暗転の中、心電図の停止音が響く。照明、下手の病室のみに。全員肩を落として動かない。
森島が心電図のスイッチを切り音が止む。照明、全体灯りになる。そこへ潤が帰って来る。
潤 「周人!俺の身代わり作戦成功したぞ!おい…(病室の状況に気づき)周人…?」
実験室の全員も入って来る。
花音 「周人!」
満 「周人君は?」
森島、首を振る。
あきほ 「そんな…」
花音 「(周人に駆け寄り)周人?…周人?!」
美香子 「周作さんは?」
満 「今…消えたんです…なのにどうして…」
森島 「えっ?…ちょっと待てよ!そんな事って!」
おじい 「ワシだ!ワシが実験なんぞしなければ!」
花音 「私が先祖の霊を呼び出そうとしたから!」
満 「それを引き受けたのは僕だ!」
道子 「違う!誰も悪くない!誰も悪くないのよ!」
典子 「じゃ、なんで…二人とも助けようとしてたのに、なんで二人とも死んじゃうんだよ!」
あきほ 「なんなのよこれ…?」
潤 「意味分かんねえよ!」
典子 「おい!起きろよ周人!病院のベッドで寝るなって何度言ったらわかるんだよ!」
道子 「典子。」
典子 「(周人を揺さぶり)寝るならてめえの部屋で寝ろって言ってんだろ!起きろよ!起きろよ!!」
道子 「典子やめて!」
花音 「待って!今…」
満 「え?」
周人 「ううっ…」
おじい 「まさか…」
道子 「周人?」
典子 「周人!」
全員が周人を囲み、周人の名前を呼ぶ。周人は目を覚まし、起き上がる。
周人 「うるせぇな周人周人って!サッカーの試合じゃねぇんだからよ!」
道子 「周人!(周人に抱きつく)」
周人 「いてえよ母ちゃん!」
典子 「我慢しろよ(周人の頭をはたく)」
周人 「いてえよ姉ちゃん!」
おじい 「良かった、本当に良かった!」
周人 「そうだ、周作さんは?」
全員シーンとなる。花音が近づき
花音 「いるわよ。(周人の背中をポンと叩き)周人のここに。」
周人、事情がわかりうつむく。が、すぐに笑顔になり、自分の背中に向け
周人 「お帰り。ひいひい爺ちゃん。」
その場の全員が癒されたような笑顔になり、ゆっくり暗転。
(作:松本じんや/写真:はらでぃ)