△ 「背中のイジン(再演)」シーン30


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上手のみ照明が浅草の通りに変わる。周作、タクシーを止めようとするが中々止まらない。

周作 「ああ!なぜ止まらないんです?!辻待ち自動車が一等早いと言うのに!…そうだ!地下鉄!」

周作がハケると、照明、下手の病室に替わる。

周人 「周作さんは…?」
道子 「今ちょっと外に…」
周人 「周作さんに伝えてくれ…今度は俺があんたの…守護霊になってやるからって…」
典子 「周人あきらめんな!あきらめんじゃねぇよ!」
おじい 「周人!」写真

照明、上手のみに替わり、あきほの車。運転席はあきほ。助手席に満。リアシートに花音。

「銀座だ、間違いない。周作さんはあの場所で死ぬ気だ。」
あきほ 「大丈夫!車で先回りできる!」

車、いきなりパンクする。

あきほ 「え〜っ!ちょっと何でこんな時にパンクするかな?!」
花音 「タクシー拾いましょう!」

三人降りてハケる。上手のみ照明が上手前サスに替わる。周作がサスに入り息を切らして走るマイム。

周作 「この先の大通りだ!そこで車に飛び込めば!よし着いた!」

周作が立ち止まると照明が銀座の大通りに。同時に道路工事の音。

周作 「…なんですかこれは…なんでこんな…なんで今日に限ってこんな!」

周作、膝を落とす。花音、満、あきほが出て来る。

あきほ 「いた!あそこ!」
「間に合った!」
花音 「周作さん!」

三人駆け寄り、大通りを見る。

「工事中で通行禁止か…」
周作 「お願いです!僕をここで殺して下さい!」
「何言ってんですか!」
周作 「周人君が、周人君が死んでしまう!」
花音 「だからって殺すなんて…」
周作 「大丈夫です、殺人にはなりません!死ねば僕の体は消えてしまうんです!」
あきほ 「消える?」
周作 「周人君を…周人君を助けて下さい…」

そこへ、パーカーのフードを被った貝塚が現れる。

貝塚 「見つけましたよ。」
花音 「…誰?」

貝塚フードを取る。

「貝塚?」写真
あきほ 「どうしてこんなところに?」

浜崎と後藤が現れる。

浜崎 「貝塚!!」

貝塚が銃を取り出す。

周作 「危ない!」

貝塚が発砲。銃弾が周作の胸を貫く。

花音 「周作さん!!」

後藤、浜崎、貝塚を取り押さえる。周作、胸を押さえて膝まづく。

満・あきほ 「周作さん!」
貝塚 「殺してやる!みんな殺してやる!ははははは!」
浜崎 「連れて行け!それと救急車!」
後藤 「はい!」

後藤、貝塚を連れてハケる。

周作 「呼ばなくていい…」
浜崎 「何言ってんだ、撃たれたんだぞ!」
周作 「おかしい…消える気配がまるでない…」
浜崎 「おい!早く救急車!」
周作 「違う…そうか思い出しました、ここではない!」
花音 「ここじゃない?」
周作 「私が死んだのは実験室です!実験室に戻って下さい!」
「何だって?!」
周作 「頼む…」
あきほ 「でも…」
浜崎 「俺の車に乗れ。」
「え?」
浜崎 「早くしろ!」

5人ハケる。照明、下手の病室に替わる。

周人 「みんないる…?」
道子 「家族はそろってるよ。」
周人 「じいちゃん…」
おじい 「なんだ周人?」
周人 「実験、成功させろよ…」
おじい 「ああ。」
周人 「姉ちゃん。」
典子 「なに?」
周人 「みっちゃんに苦労かけんなよ…」
典子 「余計なお世話だ。」
周人 「母ちゃん…」写真
道子 「なんだよ。」
周人 「…長生き…しろよ…」
道子 「当たり前よ!そう簡単にくたばってたまるかってんだ!」

周人の脈拍が止まる。

道子 「周人?」
典子 「周人!」

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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