△ 「背中のイジン(再演)」シーン21


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照明が天星会に。満がオドロに洗脳されかけ苦しんでいる。美香子、月子、貝塚も出て来る。

「美香子、月子、目を覚ませ…」
美香子 「お兄ちゃんこそ!」
貝塚 「あなたの力があれば、もっともっと沢山の人が幸せになり、もっともっと彷徨える魂が救われ…」写真

典子を先頭に、花音、周作、あきほが入って来る。典子は特攻服にハンマー(ムジョルニア)を持っている。

典子 「もっともっと沢山の金儲けが出来るってか?!」
「典子さん…」
花音 「良かった、潤たちの先回りが出来たみたい。」
典子 「(ゆっくり貝塚に近づいて行き)てめ、よくもみっちゃんにひどい事してくれたな!」
貝塚 「ひどい事?とんでもない…」
典子 「(貝塚の目の前に立ち)おいコラ。(ハンマーでどつく)」
貝塚 「痛っ。」
典子 「あれはひどい事って言うんじゃねえのかコラ。(ハンマーでどつく)」
貝塚 「痛っ。」
典子 「浅草レーディースを締めたこの『ハンマーのおノリ』様をなめんじゃねえぞコラ。(ハンマーでどつく)」
貝塚 「痛い!警察呼びますよ。」
あきほ 「もう呼んだよ。もうすぐ着くんじゃない?」
貝塚 「ほう。でも捕まるのはあなた方ですよ。不法侵入と暴力行為で?」
典子 「暴力行為だ?暴力行為ってのはこういう事を言うんだよ!」

典子がハンマーで攻撃しようとした瞬間、オドロが手をかざす。

典子 「痛たたたたた…」
花音 「どうしたの典子さん?」
典子 「わかんない…急に腹痛が…あ痛たたたた…」
「気を付けて下さい!悪霊がすぐ近くにいます!」
周作 「こいつが悪霊ですね!これでどうです!(悪霊退散ポーズ)」
典子 「どこ?どこに悪霊いんの?」
貝塚 「あなたも霊が見えるんですね。でも残念ながらオドロちゃんはそう易々と倒せませんよ。」
周作 「うわっ!確かに手強いです!」

周作、オドロに押されながらあちこち逃げ回る。

あきほ 「どうしよう、全然見えないから助けらんない…」写真

花音を後ろから美香子と月子が抑える。

美香子 「おとなしくして。」
月子 「しなしゃい。」
花音 「ちょっと放してよ!」

そこへ周人が飛び込んで来る。

周人 「花音!」
花音 「周人!」
貝塚 「おお、今日は入会者が多いこと。」
周人 「花音を放せ!」

美香子、ナイフを取り出し、花音に突きつける。

「やめるんだ美香子!」
周人 「美香子って…美香ねえちゃん?」
花音 「え?誰?」
典子 「みっちゃんの妹。10年くらい前に家を出て行った。」
周人 「花音が引っ越して来る前だよ。」
「どうしてこんな事を…」
美香子 「みんなの幸せのためよ。」
花音 「少なくとも私は幸せじゃないんですけど?」
「貝塚は悪霊を使って金儲けをしてるだけだ。」
周人 「悪霊?」
周作 「見えないでしょうがこいつです!(また悪霊に押され)うわわわっ!」
美香子 「人を救ってお金をもらって何が悪いの?」
月子 「そうよ、当然よ!」写真
美香子 「私はあの人たちみたいには絶対ならない!」
「あの人たちって…まさか…」
美香子 「そしてあの人たちを探し出して、今の私の力を見せつけてやるのよ!」
「もうよせ!忘れろ!俺たちを捨てた人たちの事なんか!」
月子 「捨てた?…お姉ちゃま、月子たち捨てられたの?」
美香子 「ええ…月子はまだ小さかったから…」
月子 「月子、初耳…」
美香子 「ろくに金も取らずに霊媒で人助け。挙句の果てに借金山のように作って、幼い私達三人残してどこかに消えた。人助けが聞いてあきれるわ。実の子すら救えなかったくせに!」
「親なんかいなくたって生きて来られたじゃないか!」
美香子 「私達二人はね…でも月子は…月子は…」
月子 「お姉ちゃま…」
美香子 「何もしてあげられなかった…あなたが病気になっても…あんなに苦しんでいても…何も…」
月子 「お姉ちゃま…お姉ちゃまだって、あの時子どもだったんだから…」
典子 「もしかして…今の会話から察すると…」
あきほ 「もう一人ここにいる…?」
「えぇ。二十年前に死んだ下の妹だ。」
周人 「え?」写真
「お前は本当によく月子の世話をしてくれた。月子もお前にべったりだった。だからお前が月子の霊を憑けた時、僕は何も言わなかった。だけど分かっているんだろ?ここままじゃ月子まで悪霊に!」
美香子 「悪霊になんてさせない!月子はずっと私の側から離さない!」
「月子が悪霊になればお前の命だって…」
美香子 「それでも私は…」
月子 「お姉ちゃま。」

潤とレイが入って来る。潤はフラフラ。

「美香子様…」
美香子 「あなたたち!」
周人 「潤!」
レイ 「美香子様、潤君を救って下さい!」
周人 「大変だ!すぐに病院に連れて行かないと!」
「美香子様、新しいクリスタルを…ゲホッゲホッ…」
周人 「しっかりしろ潤!」
「美香子、これがお前の言う幸せを与えるって事なのか?」

追いやられていた周作が追い詰められて戻って来る。

周作 「うわあっ!!もうダメかもしれません!!」
花音 「周作さん!」
貝塚 「はははは、だから言ったでしょ?無駄だって。」
「美香子!術を解け!」
月子 「お姉ちゃま…」
潤・レイ 「美香子様…」
貝塚 「オドロちゃん。面倒だからそのままその人を取り殺してしまいなさい。」
美香子 「貝塚様?取り殺すって…」
貝塚 「我々にこんな雑魚、必要ありませんから。」
周人 「やめろお!(オドロに飛び込んで行くが、跳ね返される)うわっ!」
周作 「う〜っ!これ以上はもう…」
「美香子!!」

美香子、ナイフを捨て、悪霊退散のポーズ。満の金縛りが解け、満も悪霊退散のポーズ。
途端にオドロがひるみ、典子の腹痛も止む。

典子 「おっ、腹痛治った!どこだ悪霊!ここか!こっちか!(見えないがブンブンハンマー振って頑張る)」

オドロ、更にパワーアップして反撃してくる。

全員 「うわああああっ!!」
周作 「ダメです!強すぎます!」。そこに反対側から鎧武者が現れる。周作 「うわ!武者まで来た!」
「まだ悪霊がいたのか?!」

刀を抜き、迫る。

周作 「これはもう絶体絶命です〜〜っ!」

武者、いきなりオドロに斬りかかる。オドロ、ひるんで手かざしをを止め、みんなコケる。

全員 「うわあっ!!」写真
周作 「え…?」

オドロ、武者に手かざしを連打するが、武者は全て切り捨て、襲ってきたオドロを斬る。
オドロ、フードがめくれて恐ろしい顔があらわになり、絶叫して消え去る。

周作 「何で…あんた…」

武者、何も言わず消える。

周作 「あ、ちょっと…」
典子 「どうなったの?悪霊?」
「消えました…」
貝塚 「…オドロちゃん?…ちょっとオドロちゃん…どこ?どこ行ったの?」
周作 「奴はもういません。」
貝塚 「いないって…まさかそんな…」
「あきらめろ。あんたはもう終わりだ。」

貝塚、悲鳴をあげながら走り回り、美香子の捨てたナイフを拾い、振り回す。

貝塚 「殺してやる!殺してやる!お前らみんな殺してやる!」

典子、余裕で貝塚の背中をとり、肩を叩く。

貝塚 「ん?」

貝塚が振り向いた瞬間スローモーションになり、典子のハンマーアタックが炸裂。貝塚、ダウン。

典子 「往生しいやぁ〜。」
あきほ 「姉(あね)さんって呼ばせて下さい。」
典子 「(満に近づきかわいい声で)みっちゃあん。私、やったよ!褒めて褒めて!」
「すごい。」
典子 「きゃ〜〜っ!!」
花音 「いいんだ今ので。」

美香子、膝を落とし、満が近寄る。

「美香子。」
美香子 「ごめんなさい…お兄ちゃん…月子…」
月子 「お姉ちゃま。ありがとう。月子、そろそろ行くね。」
美香子 「月子…」写真
月子 「今まで本当に楽しかった。ずっと生きてたみたいに楽しかったよ。」
「月子…」
月子 「でもやっぱり悪霊になってお姉ちゃまを襲うなんてできないし…」
「ごめんな…月子。」
月子 「ううん。月子は大丈夫。お姉ちゃま、元気でね。」
美香子 「月子…」
月子 「お姉ちゃま、お兄ちゃま…大好き!」

月子、消える。満、美香子の肩に手を置く。

「うううっ…」
レイ 「しっかりして、潤君!」
周人 「潤から離れろ!」
レイ 「いや!私は潤君と一緒に…」
周人 「潤が死んじまうんだ!」
「周人君、きみ…」
周人 「あ、うん、なんか俺も見えるようになっちゃたみたい。」
花音 「私達三人だけ見えないのね。」
典子 「くそぉ…」
あきほ 「くやしい。」
周人 「あ、そうだよ!大事な事忘れてた!あいつだよ、あいつがいれば!どこ行っちゃってんだ?」
典子 「誰探してんの?」
周人 「ここに来るまで一緒だったんだけど、相当方向音痴って言ってたからな。あ、いた!あんな所に!おい!こっちこっち!」

探し物をしている男が出て来る。

「あぁ〜〜っ!!」
周人 「やっぱりそうか!」
「レイちゃん!」
レイ 「え…?…潤君?」
花音 「ちょっと、また誰か入って来たの?」
典子 「くそぉ…」
あきほ 「くやしい。」
「良かった、やっと見つけたよ!」
レイ 「どうして?…どうして潤君が二人も?」
周作 「どうして見間違えますかねこれを?」
「じゃ、こっちがホンモノ?」

レイ、ビン底メガネを取り出してかける。

周作 「え?メガネ?」
「幽霊がメガネ?」
レイ 「あ、こっちが潤君だ。」写真
周人 「おいアンタ何言ってんだ!潤をこんな目に遭わせといて!」
レイ 「ごめんなさい…あの、私、大変な間違いを…」
「レイちゃん。」
レイ 「ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
「…そうか、そうだったのか…良かったね、やっと見つかって。」
周人 「潤…」
レイ 「…うん。」
「ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません。」
「いえいえ。」
「レイちゃん、そろそろ。」
レイ 「でも…」
「じゃあね、レイちゃん。元気でね。って、幽霊に「元気でね」はないか。はははは。」
レイ 「さよなら、潤君。」
「さよなら、レイちゃん。」

男とレイ、消えていく。

周人 「潤…お前、人が良すぎなんだよ。」
「周人。」
周人 「ん?」

突然、潤が周人に抱きつき、号泣。

「うわああああ〜っ!」
周人 「おいおい。」
「殺してくれぇ〜!俺を殺してくれぇ〜!」
周人 「ば〜か。医者の卵だぞ。殺せるか。」
「しゅうとぉぉぉぉ〜〜っ!」
典子 「(また満の腕を取り)さ、行きましょ、行きましょ。」

全員部屋を出ようとした時、浜崎と後藤が入って来る。

浜崎 「警察だ!」
典子 「遅っ!!」写真
後藤 「あ、典子さん…(典子が満と腕を組んでいるのを目撃)あ…」
典子 「こんにちは、後藤さん。」
後藤 「こっ…こんにちはぁ…(膝を落とす。)」
あきほ 「渉さん遅すぎ。」
浜崎 「やっぱりあきほさんの通報だったのか。」
周人 「え?知り合い?」
あきほ 「姉の旦那。義理の兄。」
花音 「え〜っ?!」
浜崎 「危ないから首を突っ込むなと言ったでしょ?」
あきほ 「おかげで貝塚を捕まえられるよ。(貝塚を指さし)拉致監禁に殺人未遂。」
貝塚 「(寝言を言うように)みんな殺してやる〜。」
あきほ 「ね?」
浜崎 「何がどうなってる?」
「ううう…」
周人 「潤がヤバイ!」
周作 「急いで戻りましょう!」

みんな去ろうとする。

浜崎 「ちょっと待てお前ら。」
周作 「病人が先です。」
浜崎 「医者か?」
周作 「はい。」
周人 「卵です。」
浜崎 「他に事情が分かる者は?」
美香子 「私が。」
「美香子。」
美香子 「あとは私が。」
あきほ 「私も行くわ。(満に)先生。私の車で。」

あきほ、満に鍵を渡す。

「ありがとう。」
周人 「行こう!」

周作、周人、潤、満、花音、出て行く。

浜崎 「おいちょっと待て、お前ら勝手に…」
あきほ 「大丈夫、あの人たち知り合いだから。」
浜崎 「知り合い?」
後藤 「僕もです。ほら、こないだ話したかかりつけの病院の。」
浜崎 「何?」
後藤 「あの人ですよ。瀬名周作だって言い張っている人。」
浜崎 「なんだと!」写真

貝塚、目覚めてまた暴れる。

貝塚 「殺してやる!みんな殺してやる!」
後藤 「浜崎さん!」

後藤、浜崎、貝塚を取り押さえる。

浜崎 「後藤!手錠!」
後藤 「はい!おとなしくしろ!」

後藤、貝塚に手錠をかける。

浜崎 「連行するぞ。」
後藤 「はい。」
浜崎 「あきほさん。彼女を。」
あきほ 「(美香子に)行きましょう。」

美香子、相槌をうつ。全員ハケる。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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