トップページ > ページシアター > 背中のイジン > シーン12|初演版 【公演データ】
照明が変わると仁志家の玄関先。みんなぞろぞろ出て来る。
森島 「早速なんですが周作さん、実験装置の修理を手伝って頂けませんか?」
周作 「やぶさかでないですよ。」
周人 「俺も手伝うよ。」
花音 「ダメダメ。そろそろ出ないと授業遅刻よ。」
周人 「うわっ、もうそんな時間かよ。」
花音 「じゃ、失礼します。」
周人 「また後でな。ひいひい爺ちゃん。」
周人、花音、ハケる。
満 「あの、ちょっとだけ周作さんとお話してもいいですか?」
森島 「どうぞ。じゃ、先、行ってます。さっきのラボで。」
周作 「わかりました。」
おじい、森島、ハケる。
あきほ 「先生。」
満 「あ、そうだよ原稿があった…」
あきほ 「後で取りに来ます。一度戻るんで。」
満 「え?戻れるの?」
あきほ 「編集長が許してくれました。周作さんの取材、本腰入れろって。」
満 「助かった…」
あきほ 「そうだ、さっきの水晶玉みたいのってお借りできますか?」
満 「ああ(ポケットから水晶玉を出す)これ?良かったら差し上げますよ。」
あきほ 「え?いいんですか?でも妹さんから…」
満 「大丈夫。ホントにいらないから。」
あきほ 「ありがとうございます。じゃ、また。あ、原稿は原稿で。」
満 「はいはい。」
あきほ、去る。満、ため息。
周作 「あの、僕に話って?」
満 「あ、はい、さっき弟さんですか?って聞かれてましたよね?」
周作 「えぇ、部屋の外でうろうろされてた方です。」
満 「彼が見えたんですね?」
周作 「はい。見えましたが、それが何か?」
満 「あれはこの家の者ではありません。」
周作 「え?」
満 「しかもこの世の者でもない。」
周作 「この世のって…じゃ、彼は…」
美香子と月子が出て来る。
美香子 「お兄ちゃん。」
月子 「お兄ちゃま。」
満、ため息。
美香子 「お久しぶり。」
月子 「ぶり。」
満 「(周作に)ちょっと失礼。(美香子達を周作から離し)もう来るなと言っただろ。僕は行く気はない。」
美香子 「どうして?お兄ちゃん程の力があれば、大勢の人を救えるのよ?」
月子 「のよ。」
満 「この力を金儲けに使いたくはない。」
美香子 「天星会はそんな集団じゃないわ。」
月 「ないない。」
満 「お前たちこそ目を覚ませ。あいつらに利用されているのが分からないのか?」
月子 「ひどいよお兄ちゃま。お姉ちゃまはお兄ちゃまのためを思って…」
美香子 「いいわよ、月子。」
月子 「でも…」
美香子 「お兄ちゃんも同じなのね、あの人たちと。」
満 「何?」
美香子 「きれいごとだけでは人は救えない。現に私たちは…」
月子 「なあに?あの人たちって…。」
美香子 「ごめんなさい月子。何でもないの。…また来るわ。」
美香子、去る。
月子 「お兄ちゃまのバーカ!べェ〜ッ!」
アカンベェをして月子去る。
周作 「何でしょう、複雑なご事情がありそうですね。」
満 「すいません、お恥ずかしい所を…」
周作 「いえいえ。あ、それよりさっきの「この世の者ではない」と言うのは?」
満 「あぁ、えぇ…とにかく、僕もその実験に関わらせてもらった方が良いようです。行きましょう。」
周作 「はい。」
二人、去る。その後から再び鎧を着た男が登場し、二人を追うように去る。
(作:松本じんや/写真:はらでぃ)