トップページ > ページシアター > 背中のイジン > シーン7|初演版 【公演データ】
照明、若干怪しげに。天星会の一室。霊媒師の美香子(みかこ)と月子(つきこ)が登場し、
その後ろから一組のカップル、新露潤(にいろじゅん)と飯島レイ(いいじまれい)がついてくる。
潤 「お陰様で私達、来月結婚することになりました。」
美香子 「それは良かった。」
月子 「良かった良かった。」
潤 「全て美香子様のお陰です。」
美香子 「いえ、私もまた、貝塚様に導かれて、お二人に幸せを運んだに過ぎません。」
潤 「美香子様。今月のフォーチュン・クリスタルを。」
美香子 「わかりました。」
美香子、小さな水晶玉の様な物を取り出して呪文を唱える。
美香子 「マービー、アーマージュ、サタウラネプ。マービー、アーマージュ、サタウラネプ。サンッ!!(潤に水晶を差し出し)お二人の幸せな結婚生活に。」
潤・レイ 「ありがとうございます。」
潤 「これ、いつものでございます。(封筒を差し出す)」
美香子 「(受け取り、中身を確認し)確かに。」
潤 「では、失礼します。」
美香子 「あ、ちょっと待って。(封筒から一万円札を取り出し)少ないけど、これ、ご祝儀。」
潤 「ありがとうございます!」
美香子 「お幸せに。」
潤、レイ、深々と頭を下げ、ハケる。
月子 「さすがぁ〜!お姉ちゃま素敵!」
美香子 「えぇ。」
月子 「ファッションも素敵!」
美香子 「えぇ。」
月子 「しかもご祝儀だなんて、優しくて素敵〜!」
美香子 「ええ。」
月子 「お姉ちゃまのお陰で幸せな人たちがどんどん増えていくのね。」
美香子 「えぇ。でも、私も月子のお陰でいつも気分爽快、元気ハツラツだわ。ありがとう。月子。」
月子 「お姉ちゃま〜。」
奥から貝塚賢明(かいづかけんめい)と黒いマントの男が現れる。
貝塚 「流石ですね、美香子さん。」
美香子 「貝塚様。」
貝塚 「あなたが来てからこの天星会は、本当に沢山の迷い人を救える様になりました。素晴らしい。」
美香子 「もったいないお言葉です。」
貝塚 「そこでどうでしょう?あなた天星人(てんせいびと)になってみる気は?」
美香子 「天星人?!」
貝塚 「あなた程の力があれば当然かと。」
美香子 「身に余る光栄です!」
貝塚 「但し、天星人になるためには通常5年の修行が必要。3年目のあなたがなるのは異例中の異例。そこで、一つ条件を。」
美香子 「どのような…まさか…」
貝塚 「そう、あなたのお兄様の事です。」
美香子 「ですが、兄には何度声をかけても…」
貝塚 「大丈夫。あなたらなきっと、いや、彼を連れて来られるのはあなたしかいないのです。お願いしますよ。美香子さん。」
美香子 「はい…必ずや。」
貝塚、黒マントの男、ハケる。
月子 「お姉ちゃま!天星人よ天星人!もう、素敵過ぎて背中から羽が生えちゃいそうですぅ!」
美香子 「えぇ…」
二人ハケる。暗転。
(作:松本じんや/写真:はらでぃ)