△ 「時空の異邦人」シーン19


トップページ > ページシアター > 時空の異邦人 > シーン19 【公演データ

<前一覧次>

裏口からタイムマシンに乗り込んだ大林、みかん、かぶ、あんず、じいさん、ばあさんが出て来てドアの窓から外を見ている。
おきじ、外で奮闘している。

大林 「奴らが裏口に気づいてなくて助かった。」
瀬名 「あぁ、でもみんなも助けられないかな?」

ボーッと立っていたお菊が、ハッと我に返る。

お菊 「わちは…何をしとったんじゃ?」
おね 「ん?」
おばあ 「お菊さんが我に返った様じゃ!」
お菊 「離せ!」

お菊、思いっきりおねの足を踏む。

おね 「痛っ!痛っ!」
おばあ 「逃げた!」

お菊、おもいっきり逃出して、おねが追う。

おね 「こら待てぇ!!」写真
おじい 「逃げ切れよ!」

大猿。おきじ、二人とも徐々に劣勢になって来て、タイムマシンの中が、街頭テレビに 群がる人の様に興奮して来る。そしておきじがいよいよ危なくなった時、瀬名が飛び出る。

瀬名 「ああ、だめだもう見てらんない!」
大林 「瀬名さん!」

瀬名、おきじの助っ人に入る。銃とプロテクターのお陰で奮闘する。しかしやっぱり劣勢になる。みかんとかぶの様子が変わる。

みかん 「かぶ…」
かぶ 「みかん…」
みかん 「この使命感…思い出して来た。」
かぶ 「わたしも。」
みかん 「きっとこう言う意味ね。」
かぶ 「ええ」
みかん 「私達も出ます。」
かぶ 「開けて下さい。」
大林 「しかし」
みかん 「それが私達の任務ですから。」
かぶ 「お願いします。大林さん。」
大林 「君たちは…」
おじい 「どうしたんじゃおぬしら?」
おばあ 「人が変わったようじゃ。」
大林 「わかった、開けるぞ。」
あんず 「わちもじゃ!」
みかん・かぶ 「あなたはダメ。」

みかん・かぶ、とび出す。瀬名に襲いかかろうとしたみねと闘い、みねを倒す。

みね 「なぜ、うぬらが…」

みね、気を失う。

瀬名 「お前達…」

牙、大猿が飛び出して来る。大猿がとどめをさされそうになった時。みかんとかぶが割って入る。

みかん 「眉村隊長!」
かぶ 「目を覚まして下さい!」
瀬名 「眉村隊長?…って…まさかサルベージ・ツーの…」
「うぬら、なにをぬかして…うっ…」

牙、頭を抱える。

みかん 「隊長!」

牙、みかんとかぶに襲いかかる。みかん、かぶ、迎え撃つ。

かぶ 「隊長!任務を!我々の任務を!」写真

牙、再び頭を抱え、しゃがみこむ。

「ううう…伊達…鏑木…」
みかん・かぶ 「隊長!」

みかん、かぶ、牙に近づくが、突然立ち上がった牙に斬られる。

瀬名 「かぶ!みかん!」
あんず 「やじゃ!やじゃ!」

瀬名と牙が向かい合う。

瀬名 「ちっきしょお!」
大林 「瀬名さん!」

瀬名も斬られるかと思った瞬間、犬吉、ざくろが出て来る。

犬吉 「牙!」
あんず 「父上!」
ざくろ 「これは…」
「一足遅かったの。」
ざくろ 「よくもよくも!!」

ざくろ、犬吉、牙と戦う。倒れていた大猿、おきじも起き上がり加勢。流石に牙も劣勢になり四人に斬られる。

「人間なんぞに…人間なんぞに…ほろぼされて…たまる…か…」

牙、倒れる。おね、お菊を連れて戻って来る。

お菊 「離せ!離さんか!」
おね 「大人しくせんか!大人しくせんと…」

おね、敵だらけの状況に気づき、手を上げるが、おきじに腹を殴られ倒れる。タイムマシンのみんなも出て来て、みかんとかぶの周りに集まる。

あんず 「父上〜!」
ざくろ 「あんず。すまんかったの…」
瀬名 「みかん!かぶ!しっかりしろ!」
みかん 「瀬名さん、大林さん…」
かぶ 「無事で良かった…」
瀬名 「待ってろ!すぐ治療してやるからな!」
みかん 「瀬名さん…(首を横に振る)」
かぶ 「あなたなら、わかるはずです…」
瀬名 「…くっそお!」
あんず 「みかん!かぶ!」写真
みかん 「あんず…あんたも無事でよかった…」
ざくろ 「おぬしたち、ようやった。ようやったの。」
瀬名 「君たちは…」
かぶ 「ざくろさん…あれを…」
ざくろ 「ああ…」

ざくろ、2枚のカードを出し、瀬名に渡す。。

瀬名 「…サルベージ・ツー、伊達美香、鏑木由美子…これは…」
ざくろ 「二人にまだ人間の意識が残っておる時預かったもんじゃ。」
瀬名 「人間の意識って…」
大林 「オレたちを助けに来たサルベージ・ツーの…」
みかん 「隊長…深町君…これで任務完了です…・」
あんず 「やじゃ!やじゃ!」
かぶ 「元気でな…あんず…」

みかん、かぶ、息を引き取る。

瀬名 「おい!みかん!かぶ!…」

桃太郎、吉山到着。

桃太郎 「これは…」
お菊 「桃太郎さん!」
犬吉 「牙達は倒したんじゃが…申し訳ござらぬ…」
大林 「みかんとかぶ、そして牙は、サルベージ・ツーの隊員だったんだ。」
吉山 「そんな…」
おきじ 「桃太郎。電光は?」
桃太郎 「倒しました…」
おきじ 「そうか…」
桃太郎 「仇は討ちました。…姉上。」写真
おばあ 「姉上?」
おきじ 「…母上に…会ったのか?」

桃太郎、うなづく。

おじい 「母上とや?」
おきじ 「そうか…そうか…」
桃太郎 「じゃが、電光は…電光の正体は…」
吉山 「電光は…深町でした…」
大林 「深町?!」
瀬名 「なんだって?!」
吉山 「でも、狐に魂を乗っ取られていて…助けられなかった…」
瀬名 「それじゃサルベージ・ツーのメンバーはみんな…」
ざくろ 「わしとあんずも、元は人間。薬王院にお参りに来た親子の旅人じゃった。休みに立ち寄ったのが電光の社。まんまとつかまり、わしら熊の魂を宿されたんじゃ。」
あんず 「わちも…人間じゃったのか…」
ざくろ 「ああ、そうじゃ。みかんとかぶは、そん頃まだわずかに人間の意識があっての。自分らは幾とせかのちに現れる吉山様達を助けるための存在じゃと。イタチとタヌキの意識になってからは、二人を娘の様に見守っておったが、わしはわかっとった…いつか、このような時が参ると…」
あんず 「父上…」
「みんな…すまない…」
犬吉 「牙!」
大猿 「まだ生きとったか!」

倒れていたみねおねが、牙の前によろよろと立ちふさがる。

みね 「牙様に近づくな!」
「牙ではない…」
みね 「え?」
「私はもう牙ではないんだ…」
吉山 「眉村さん?」
「吉山君だね…本当にすまなかった…」
吉山 「眉村さん!」

吉山、眉村に近づこうとするが、みねに阻まれる。

みね 「来るな!」
おね 「みね。牙様はもう…」
みね 「黙れ!」
眉村 「ボックスは手に入れたか…?」
吉山 「はい、ここに!」
眉村 「…良かった…それだけは…必ず…必ず持ち帰ってくれ…。」
吉山 「必ず。」
眉村 「それが私と…牙の願い…」
吉山 「牙の?」
眉村 「頼んだぞ…」

眉村、息を引き取る。

みね 「牙様!牙様!」
ざくろ 「わかっておるのだろう、みね。お前達も元は人間。電光にだまされて化身にされた旅人の兄妹。」
みね 「黙れ黙れ!」
ざくろ 「電光が死んで妖術は解けた。我々化身はいずれ元の人間に戻るじゃろう。そん時その悲しみも一緒に消える。」
みね 「黙れ…黙れぇ…」

みね、泣き崩れる。おねがそれを支える。

瀬名 「なんだよこれ…なんでうちらを助けに来た人達が、みんな死んじまうんだよ…」
大林 「瀬名さん…」
瀬名 「親父達のせいだ…親父達がタイムマシンなんて開発しなければ!」
吉山 「瀬名さん!」
瀬名 「吉山!お前は父親を尊敬してるんだろうけどな、俺は大嫌いだった!家族そっちのけで研究に没頭してあげくの果てがこれだぞ!冗談じゃねえ…冗談じゃねえよ!」
おばあ 「天命じゃよ。」写真
吉山 「え?」
おばあ 「全ては天命。始めから決められておることじゃ。」
おじい 「起きてしまった事は変えられん。誰かのせいにしても、何も生まれん。」
おばあ 「生きちょる分だけ、辛い事にも山程出会うもんじゃ。」
おじい 「明日おっちぬかもしれんしの。」
おばあ 「そんでも、雷様方に出おうたことは、ほんに良かったと思っとるぞ。」
おじい 「あん人達も、きっとそう思っていたはずじゃ。」
大林 「瀬名さん。我々の任務はまだ残っています。」
吉山 「任務を果たす事を、きっと彼らも願っています。」
瀬名 「…ああ…」

暗転。

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

<前一覧次>


トップページ > ページシアター > 時空の異邦人 > シーン19 【公演データ