△ 「時空の異邦人」シーン7


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奥からおじい、おばあを先頭に、瀬名、吉山、大林、桃太郎、犬吉、大猿が出て来る。

おばあ 「ささ、こっちじゃ。」写真
吉山 「大丈夫ですか?」
瀬名 「だいじょぶだいじょぶ。」
桃太郎 「そいつらは山の神を名乗るおおかみの化身「牙」の一味じゃ。」
犬吉 「何年も息をひそめてたが、ついに出てきおったか。」
おじい 「みかん、かぶ、あんずたちはここにもよう遊びに来るええ化身たちじゃが、牙の連中はどうにも手がつけられん乱暴者でのぉ。」
吉山 「化身って何なんでしょうね?」
瀬名 「見かけは人間だが、サイコ数値は人間の1200倍もあった。」
吉山 「1200倍?!」
大林 「まさか、ほんとうに妖怪か何かか?」
瀬名 「それだけじゃない。空気のサイコ・メディカル・バリューも我々の時代の3〜400倍近くある。」
大林 「え?!それって…」
瀬名 「この時代は全てのものが妖気に包まれてるらしい。」
大林 「技術畑の俺にはそっち系の話はどうにも理解できん。」
瀬名 「それでも、桃太郎ってのは…」
吉山 「しかし気になりますね。そいつらはタイムマシンを見て「ようやくみつけた」って?」
瀬名 「ああ,確かに言った。『電光様』がなんだとかかんだとか。」
おじい 「電光は牙達の頭じゃ。強い妖術を操るらしい。」
大林 「ラスボスっぽいな。」
桃太郎 「おきじから聞いた。電光はおきじの父上の仇じゃ。」
おばあ 「ああ、母上もさらわれたと言っとったな。」
大林 「なんだか、我々の探し物ともかかわりがありそうだな。」

外から声

ざくろ 「ごめんくだされ。」
大猿 「誰か来おったぞ。」
桃太郎 「あの声は、ざくろじゃ。」
おばあ 「おお!ざくろ殿か!」

おばあさんが玄関へ。そこに熊の化身のざくろとあんず、みかん、かぶが現れる。

ざくろ 「お久しゅうございます、おばあさん。」
おばあ 「これはこれはざくろ殿、よう来なさった。」
み・か・あ 「こんにちは、おばあさん。」
おばあ 「ああ、お前達もよう来たよう来た。ささ、あがんなさい。」
ざくろ 「雷様がいらっしゃったと言うのは?」
おばあ 「ああ、あそこじゃ、3人おられる。」

ざくろ、あんず達を連れて中にはいる。

ざくろ 「これはこれは雷様、お初にお目にかかります。我は山に住む化身たちの長…・なんじゃっけ?」
吉山・大林・瀬名以外 「くま、くま。」
ざくろ 「熊の化身ざくろと申します。」
吉山 「あ、どうも、吉山です。」
大林 「大林です。」
瀬名 「瀬名です。」
ざくろ 「裏山の社におられたというのは。」写真
瀬名 「あ、はい、僕です。」
ざくろ 「この度は、娘のあんずと、こちらの二人の命を救うて頂いて、ありがとうございます。」
瀬名 「あ、いえ…」
ざくろ 「聞けばこやつら、救うて頂いたのにもかかわらず、イカズチに驚いて、礼も言わずに逃げ帰って来たとか。そんであらためて礼を言わせにまいりました。ほれ、」
み・か・あ 「先程はありがとうございましたでございました。」
瀬名 「あ、どういたしまして。あ!どうイタチましてってのはどうかな?はははチョーうける!ははは…」

間。吉山、大林、瀬名に首を振る。

瀬名 「800年前でも駄目かこれ…」
みかん 「愉快じゃ!愉快じゃ!」
かぶ・あんず 「愉快じゃ!愉快じゃ!」
ざくろ 「こらこら!失礼であろう!」
みかん 「これはこれは、失礼イタチました。」
かぶ・あんず 「愉快じゃ!愉快じゃ!」
瀬名 「この時代も悪かないね。」、
おじい 「こんためにわざわざ来られたのか?」
ざくろ 「いえ、実は、ついに時が来たと思い、大事なお話をしに参りました。」
おばあ 「大事なはなしとや?」
ざくろ 「『電光』達にかかわるお話にございます。」
桃太郎 「電光の?」
ざくろ 「実は我々化身は、電光の力によって生まれるのです。」
吉山 「電光が化身を生み出している?」
ざくろ 「そうですじゃ。わしらも始めは電光と共に暮らしていたんじゃが、あまりの横暴さに耐えきれず、狼の化身達を残して、みんなで逃げ出したんじゃ。」
大林 「仲間割れか。」
ざくろ 「もう十と五つも前の話しじゃが、逃げ出す前に恐ろしい事を聞いたんですじゃ。」
桃太郎 「恐ろしいこと?」
ざくろ 「いずれ人間を根絶やしにするのだとか。」
桃太郎 「なんじゃと?!」
ざくろ 「しかし、中には殺してはならぬ人間もおるとかで、それを見極める「のちの目」という力を持った人間を捜しておるんじゃ。」
吉山 「のちの目…」
ざくろ 「今までも「のちの目」を何度か見つけたが、手を組むことを拒まれて始末したとか。」
桃太郎 「なんと極悪な事じゃ。」
ざくろ 「こんな話も聞き申した。電光は、のちの世から来おったとか。」
桃太郎 「のちの世じゃと?」
瀬名 「のちの世って…」
犬吉 「もし人間を根絶やしにするってのがほんとであれば…」
大猿 「盗賊オニなんぞより,遥かにたちが悪いでござるぞ!」
犬吉 「退治に行かねば!」
大林 「ちょっといいか?」

大林、吉山と瀬名を呼んで話す。

大林 「これはあくまで俺の憶測だけど、今から十五年前というと、我々が到達するはずだった時間だよな。」
瀬名 「試作機が落ちた時間だ。」
大林 「ざくろさん。裏山の社は?」
ざくろ 「ああ、先程前を通って拝んで来ましたじゃ。」
大林 「あの社と同じ様な物をどこかで見ませんでしたか?」
ざくろ 「ああ、電光達のあじとにそっくりのものが。」
瀬名 「ビンゴ!」
大林 「場所は?」
ざくろ 「覚えておる。高尾の山の中じゃ。」
瀬名 「やった!探しに行けるぞ!」
吉山 「試作機が電光のあじとってことは…」
大林 「こうは考えられないか?試作機の中には例の『ボックス』だけでなく、誰か人間が入り込んでいたとすれば?」
瀬名 「まさかそいつが電光?」
大林 「さっきの「のちの世から来た」ってやつだ。」
吉山 「しかし、化身を生むとかって話は?」
瀬名 「しかもやつが人間ならどうして人間を根絶やしにしようと?」
大林 「それは正直まったくわからん。が、やはり試作機の中身に関係あるかもしれない。」
瀬名 「狼達がうちらのタイムマシンを探しに来たのは?」
大林 「恐らくうちらがサルベージに来る事も知っていて。タイムマシンも何かに利用しようとしてるんじゃ?」

外で物音。

桃太郎 「参る。」

桃太郎が様子を見に行く。奥から声。

桃太郎 「おきじ!どうしたんじゃおきじ!」

桃太郎、おきじを抱えて戻って来る。

みんな 「おきじ!」
おばあ 「いったいどうしたんじゃ?」
おきじ 「牙の連中に…」
桃太郎 「牙たちにやられたのか?!」
おきじ 「お菊さんが…」写真
桃太郎 「お菊?お菊がどうしたんじゃ?!」
おきじ 「さらわれた…」
桃太郎 「なんじゃと?!」
おきじ 「お菊さんが…「のちの目」だって…」

おきじ、気を失う。

桃太郎 「おきじ?!しっかりせい!おきじ!」
ざくろ 「いま、お菊さんが「のちの目」と…」
犬吉 「お菊さんが奴らの手助けを拒んだら…。」
大猿 「始末されてしまうぞ!」
桃太郎 「直ぐに助けに参らねば!ざくろさん!あない頼み申す!」
ざくろ 「承知。」
吉山 「僕も行きます!」
瀬名 「俺も!」
大林 「俺も行く!」
吉山 「二人はタイムマシンの修復を!」
大林 「しかし!」
吉山 「二人にしかできない事です!」
瀬名 「吉山。」
吉山 「いざとなったら。イカズチがあります。」
ざくろ 「ぬし達もここに残れ。」
あんず 「父上!」
みかん・かぶ 「ざくろさん!」
ざくろ 「心配せんでよい。必ず戻る。おじいさん、おばあさん、この子たちを頼み申す。」
おじい 「ああ。大丈夫じゃ。」
おばあ 「気をつけてのぉ。」
桃太郎 「大猿、おぬしも残れ。」
大猿 「なぜじゃ?」
桃太郎 「良く見てみい。ここにはおぬしが必要じゃ。」
大猿 「…まかされよう。」
桃太郎 「では、行って参る。」

ざくろ、桃太郎、犬吉、吉山、はける。

大猿 「御武運を!」
おじい 「ささ、みなこっちじゃ。」

おじいに連れられ、残りのみんなもはける。

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

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