△ 「時空の異邦人」シーン4


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裏山のタイムマシン。その脇からイタチの 「みかん」、タヌキの「かぶ」、小熊の「あんず」がひょこひょと顔を出す。
辺りの様子を伺い、みかんがかぶに「お前見て来い」と促し、かぶ、恐る恐るタイムマシンに近づき、ちょんと触って逃げ帰る。

かぶ 「ハガネだお!ハガネだお!」写真
みかん 「ハガネの社かいや!、ぴや〜。」
あんず 「いつの間じゃ?いつの間じゃ?」
かぶ 「朝にはなかったお!」
みかん 「なかった、なかった」
あんず 「いつの間じゃ?いつの間じゃ?」
かぶ 「さっきのイカズチと関係ありや?」
みかん 「うぬ、もっぺん見て来いや。」
かぶ 「今度はうぬが行けお!」
あんず 「わちが参る!」
かぶ・みかん 「うぬはだめじゃ!」
みかん 「うぬじゃ!」
かぶ 「うぬじゃ!」
あんず 「わちが参る!」
かぶ・みかん 「うぬはだめじゃ!」
みかん 「うぬじゃ!」
かぶ 「うぬじゃ!」
あんず 「わちが参る!」
かぶ・みかん 「うぬはだめじゃ!」
あんず 「ガオウ!」

間。

かぶ・みかん 「うぬはだめじゃ!」

あんず、だだをこねる様に

あんず 「ああ!!ああ!!ああ!!」

奥から鼻歌。みかんとかぶがあんずを引っ張る様に慌てて隠れる。瀬名登場。インカムで話している。

瀬名 「そう、『次元エネルギー電池』が完全におしゃか。つまり…そういうことだ。あ、吉山は?…そう、わかった、うん、じゃ、後ほど。」

ため息をつく瀬名。が、直ぐに開き直り。

瀬名 「いや、大丈夫、なんかかんかやって結局戻れるんだ。明るくいこう!明るく!できることからこつこつと!」

瀬名、鼻歌まじりに作業を続ける。鼻歌はスーパー三和のイメージ・ソング「サンワ・マイ・フレンド」

瀬名 「よし。ポチッとな。どうだ?…お!!よし戻った!サイコ・メディカル・バリュー・チェックと…え?なんだこの数値?おいおいおいまじかい?!まだ、直ってないってか?!…待てよ…それともこの時代って、どこもかしこも妖気だらけって事かい?」

あんず、くしゃみをして、みかん、かぶ、あんず、慌てて顔を引っ込める。

瀬名 「ん?」

瀬名、首をかしげ、気のせいだと思い作業に戻る。みかん、かぶあんず、また顔をのぞかせる。

瀬名 「で、修繕の記録ね。カメラカメラ。」

瀬名、カメラで写真を撮る。フラッシュがたかれ、「みかん」「かぶ」「あんず」驚く。

三人 「ぴゃあ!」

三人、慌てて引っ込む。

瀬名 「ん?…ま、いいか。」

瀬名、一度奥へ行く。

かぶ 「ありゃなんぞ?」
みかん 「光ったぞい!」
あんず 「人間に見えた。」
みかん 「ありゃ多分人間じゃねえぞい!」
かぶ 「うちらの仲間?」

瀬名、鼻歌を歌いながらノートパソコンを持ってまた出て来る。三人また慌てて引っ込む。インカムに通信。

瀬名 「はいこちら瀬名。…おお、もう戻ってくんの?…うん、了解。(通信が終わる)さあ、二人が戻って来るまでに、ちょいと進めとこう。」

瀬名、腰掛けてノートパソコンをうつ。また鼻歌を歌っているが、そのうち歌詞が入る。

瀬名 「♪みんなの〜みんなの〜あかるい笑顔〜」

隠れて見ていた三人が、徐々に歌にノリ出す。

瀬名 「♪街〜は今、かが〜やいて、昨日より、優しい〜、街〜は今、かが〜やいて、昨日より、さわやぁか〜」

ノリノリになって、いつの間にか三人とも瀬名の近くに出て踊っている

瀬名 「♪エ〜ンジョ〜イショッピン…グ…」写真

瀬名,三人に気付き歌がフェードアウト。見つめ合う瀬名と三人。

みかん 「何奴じゃ!」
かぶ 「じゃ!」
あんず 「じゃ!」
瀬名 「いや、君たちこそ。」

三人、困った感じになり

みかん 「わちは!イタチの化身、「みかん」じゃ!」
瀬名 「イタチ?化身?みかん?」
かぶ 「わちは!タヌキの化身、「かぶ」じゃ!」
瀬名 「か、かぶ?」
あんず 「わちは!…なんじゃっけ?」
みかん・かぶ 「クマ、クマ」
あんず 「そうじゃ!クマの化身、「あんず」じゃ!」
瀬名 「動物…ごっこ?」
あんず 「ごっこ?」

瀬名、ハッと思いつき、装置を三人に向ける。

瀬名 「う〜わ!なんだこの数字?!サイコ数値が人間の1200倍?!…まさか…本物の…もののけ?」
みかん 「お前は、何の化身じゃ?」
瀬名 「えっと…化身…あ、そうだ…。化身ではない。雷様じゃ。」
みかん 「雷様?!」
かぶ 「そう言えばさっき」
あんず 「光った光った!」
みかん 「じゃが、稲光にしてはちと小さくはなかったか?」
かぶ 「鬼の姿もしとらんし。」

家の方から銃声か聞こえる。

み、か、あ 「ぴゃああ!」

三人、思わず瀬名の後ろに逃げ込む。瀬名、家の方を気にする。

瀬名 「銃声?まさか…(通信)こちら瀬名。今のは銃声?…え?イカズチのデモンストレーション?…ああ!そう言う事!了解。」
みかん 「誰としゃべっておる?」
瀬名 「あの家におる仲間じゃ。」
かぶ 「あん所ん仲間と話しができるのかお?!」
あんず 「地獄耳じゃ!」
瀬名 「今の大きな音は、仲間が放ったイカズチじゃ。」
みかん 「イカズチをおじいさん達に?!」
瀬名 「え?あのじいさん達知ってるの?」
かぶ 「仲ようしとる人間はあん家の人達だけだお!」
あんず 「(泣いて)じいさん黒こげじゃあああ。」
瀬名 「あんずるな。ちと見せてやっただけじゃ。」
あんず 「まことか?」
瀬名 「まことじゃ。」
みかん 「よかったぞい。」
かぶ 「みかん、こん方は本物の雷さまだお!」
みかん 「本物じゃ本物じゃ!」

あんず、顔は残して体を後ろにひねる。

みかん 「なんじゃ、あんず?」
あんず 「へそ!へそ!」
かぶ 「へそ?」

かぶ、みかん、瀬名を見てハッとして、あんずと同じポーズになる。

瀬名 「いや、へそは取らないよ。」
あんず 「まことか?」
瀬名 「まことじゃ。」

三人、ホッとして元のポーズに戻る。

みかん 「しかし、本物の雷様は妙ななりじゃのぉ。」
かぶ 「妙な歌も歌っとったお。」
瀬名 「歌?…ああ、でもあれは近所のスーパーの…」
あんず 「じゃが、あんな愉快な歌は初めてじゃ!」
みかん 「雷様の国の歌はみんなあんなんか?」
瀬名 「いや、いろんな歌があるよ。」
あんず 「クマの歌もか?」
瀬名 「え?クマ?…ええっと…あ、あるある。」
あんず 「どんなうたじゃ?」
瀬名 「えっとね…♪ある〜日、森のなぁか、クマさんに、であ〜った」

みんなまたノリ出す。

瀬名 「♪はなさぁくも〜り〜の〜み〜ち〜、クマさんに〜で〜あ〜あった〜」
あんず 「愉快じゃ愉快じゃ!」写真
みかん 「イタチの歌は?」
瀬名 「イタチ?…イタチは…♪い〜い日〜、たイ〜タチ〜…うわ苦しいなこれ…」
みかん 「♪い〜い日〜、たイ〜タチ〜、ほい!い〜い日〜、たイ〜タチ〜、ほい!」

みんな歌い、ノリ出す。

瀬名 「うわ、なんか…はずかしい…」
かぶ 「タヌキは?タヌキの歌は?」
瀬名 「タヌキ、タヌキ…ええっと…」
かぶ 「ないのか?ないのか?」
瀬名 「いや、いっぱいあるはずだけど、あれ?出て来ないな…」
かぶ 「ないのかあ?ないのかあ?」
瀬名 「いや、ああ!♪子だ〜ぬき〜、ねえ、こ〜こ〜ろ〜ま〜で白く…ダメだ…」
かぶ 「♪子だ〜ぬき〜!」
みかん 「♪子だ〜ぬき〜!」
あんず 「♪子だ〜ぬき〜!」
瀬名 「ああ…やめて…」
かぶ 「ははは!愉快じゃ!愉快じゃ!」

みね、おね、登場。

みね 「おお、おお、そりゃ良かったのぉ」
み、か、あ 「ぴゃああ!」

みかん、かぶ、あんず、瀬名の後ろに隠れる。

瀬名 「なんだこいつら?」
みかん 「オオカミの化身の「みね」と「おね」じゃ。」
瀬名 「オオカミ?」
かぶ 「乱暴もんだお!」
おね 「みね。これは。」
みね 「間違いない。同じもんじゃ。ようやくみつけた。」
おね 「これが電光様の言っておった…」
みね 「まずは牙様に報告じゃ。」

オオカミ達、瀬名に気づく。

みね 「ん?見慣れん奴。うぬ、なに奴じゃ?」
みかん 「か、雷様じゃ!」
おね 「雷様?」
みね 「面白い、こいつも連れて行くか。」
おね 「いい土産じゃ。」

みね、おね、瀬名に近づき

みね 「雷様とやら、我らと来てもらおうか。」
瀬名 「は?なんで?」
おね 「問答無用じゃ。」

みね、おね、瀬名を抑えて連れて行こうとする。

瀬名 「ちょっと待て!何すんだ!」
みね 「黙れ!」

瀬名抵抗する。

瀬名 「離せコラ!」

瀬名がみねおねの腕を振りほどく。みねが瀬名をなぐり飛ばす。

瀬名 「うっ!」

瀬名、倒れる。

みね 「逆らうと八つ裂きぞ!」写真

みかんとかぶ、格闘のポーズをきめ、立ちふさがる。

おね 「ほお、こりゃめずらしい。」
みね 「うぬらがこんなまねをするとはのぉ」
みかん 「お、おい、なんでうちらこんなことしとる?」
かぶ 「し、知らん、体が勝手に動いたお。」
みね 「覚悟はできとるんだろうな。」
みかん・かぶ 「できとらん!」
おね 「遅いわ。」

みね、おね刀を抜く。

みかん・かぶ 「ぴやあああ…」
みね 「死ね!」

みねおねが刀を振り上げた瞬間、瀬名が銃を撃つ。

み・か・あ 「ぴゃっ!!」

瀬名以外しゃがみ込む。

おね 「まずい!イカズチじゃ!」
みね 「くそっ!覚えておれ!」

みねおね去る。

瀬名 「あいててて…大丈夫か?」

みんな怯えている。

みかん 「イカズチじゃ、イカズチじゃ…」
かぶ 「おそろしや、おそろしや…」
瀬名 「あ、心配ない、これは…」
みかん・かぶ 「ぴゃあああ!」

みかん、かぶ走り去る。あんず、ぼ〜っとして残っている。

あんず 「おそろしや、おそろしや。」

みかん、かぶ、戻って来てあんずを抱え,瀬名と目が合って止まる。

瀬名 「…これはね…」
みかん・かぶ 「ぴゃあああ!」

みかん、かぶ、あんずを抱えて走り去る。瀬名ため息。

瀬名 「ま、いいか。…いててて。うわ、耳血出てるし!…ま、いいか。」

インカムで通信しようとする。

瀬名 「瀬名です。あれ?あ〜、あ〜…壊れてるし…ま、いいか。」

奥から声。

吉山 「瀬名さ〜ん!」
瀬名 「おお。だいじょぶだいじょぶ!」

瀬名はける。

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

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