△ 「時空の異邦人」シーン2


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明転すると、刀を背負った少女がたたずんでいる。

おきじ 「母上。あん子は強ぉなりました。本気でたたこうたら、わちはもう勝てんくらいじゃ。そろそろ時が参ったのでは…また来ますじゃ。」写真

おきじ、去る。反対側から出て来た男が膝間付く。

「はっ。電光様の仰せの通り、みね、おねの二人は社を探しております。は?『のちの目』も現れたと?!はっ。道具はここにございます。(胸に手をおく)お任せあれ、この牙めが必ずや。」

牙、立ち上がり、胸からスマートフォンの様な物を出して確認し、去る。みね、おね登場。

おね 「みね。本当に現れるのかのう。」
みね 「おね。うぬは電光様の予言を信じぬと申すか?」
おね 「そうではない。が、もう幾日もこうして…」
みね 「我らがこの姿を頂けたのは、選ばれし者であるからじゃ。牙様も言うておったではないか。」
おね 「それはわかっておる。」
みね 「じゃったらつべこべ言わず探さんか!みつければ、牙様もお喜びになろうぞ。」
おね 「牙様の喜びは我らの喜び。」
みね 「参るぞ。」

みね、舞台奥へ進みストップモーション。

おね 「じゃが、うぬの牙様への想いはちと違うの。人間の姿になんぞ、なったせいじゃ。」写真

おねも舞台奥へ進み、ストップモーション。みかん、かぶ、あんず現れる。

みかん 「なあんか愉快なことはないかのぉ。」
あんず 「のぉ」
かぶ 「はらへったお…」
あんず 「お。」
みかん 「かぶ、なんか思いつかぬか?」
かぶ 「はらへったお…」

あんず、手を上げる。

あんず 「はお!」
みかん 「はい、あんずちゃん!」写真
あんず 「ぐんるぐんるはどうじゃ?」
みかん 「ぐんるぐんる?」
かぶ 「そりゃなんじゃ?」
あんず 「みなでぐんるぐんる言いながらまわるんじゃ。」
みかん 「おお!やっちみよう!」

あんず、その場でぐるぐる回り出す。

あんず 「ぐんるぐんるぐんるぐんる!」

みかん、かぶ、まねしてまわりだす。

みかん、かぶ 「ぐんるぐんるぐんるぐんる!」

しばらくまわってみんなフラフラ。

あんず 「どうじゃ、愉快じゃろ!」
みかん、かぶ 「どこがじゃ!!!」
あんず 「ああ!ああ!ああ!」
みかん 「き、気持ち悪くなったぞい…おえ…」
かぶ 「わちは余計にはらがへったお…」
みかん 「そじゃ!おじいさん、おばあさんとこに参って飯を頂こうぞ!」
あんず 「頂こう頂こう!」
かぶ 「飯だお!飯だお!」

3人、舞台奥へ進み、ストップモーション。桃太郎登場。

桃太郎 「おきじの奴遅いのぉ。そうじゃ、きっと体の具合が悪いんじゃ。今日は稽古はできんの。残念じゃ、残念じゃ。」

ニコニコして去ろうとした桃太郎の後ろから、おきじ登場。

おきじ 「残念じゃのに、たいそう嬉しそうじゃな。桃太郎。」
桃太郎 「お、おきじ…元気じゃったか…」
おきじ 「おお、今度は元気では悪かった様な顔じゃ。」
桃太郎 「い、異な事を…随分遅かったではないか。」
おきじ 「人と会っとった。長話になってしもうての。」
桃太郎 「おお!おきじにも良いお方ができたか?!どこのどなたじゃ?!いつ嫁に参る?!」
おきじ 「桃太郎。さように稽古が嫌か?さようにわちが邪魔か?」
桃太郎 「い、否、否否否…」
おきじ 「じゃったらとっとと稽古じゃ!」

おきじ、去ろうとする。

桃太郎 「遅れて来たのはうぬであろう…」
おきじ 「なんじゃ?!」
桃太郎 「参りますじゃ、参りますじゃ!」

突然、雷が落ちる様な音にみんな同時に驚く。

桃太郎・おきじ 「わあ!」
み、か、あ 「ぴゃあ!」
みね・おね 「うわっ!」

みかん、かぶ、あんず以外は再びストップモーション。

みかん 「なんじゃ?!イカズチか?!」
かぶ 「どこじゃ?」
あんず 「あっちじゃ!」
みかん 「行っちみるぞい!」

みかん、去る。

あんず 「ぞい!」

あんず、去る。

かぶ 「飯はどうするんだお〜っ?!」

かぶ、去る。

おね 「イカズチ?」
みね 「例の山の方じゃ。」写真
おね 「それでは…」
みね 「参るぞ!」
おね 「おう!」

みね、おね、去る。

桃太郎 「イカズチか?」
おきじ 「否。天には雲一つないぞ。」
桃太郎 「では今のは…」
おきじ 「おじい、おばあの家のほうじゃ!参るぞ!」
桃太郎 「おうよ!」

おきじ、桃太郎、去り暗転。

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

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