△ 「天国の猥談」メイキング特別編 〜桜〜


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 公演前のメイキングでもしばしば紹介されたが、今回の芝居の舞台は、11月にもかかわらず「花見」であった。花見に必要なのは、なんと言っても桜である。しかし11月の寒空に、桜の花は咲くべくもない。(まあ実際咲いていたとしても、どっかから折ってくるわけにもいかないだろうが。)
写真 というわけで、桜についても、自分たちで用意するしかないわけである。
 お金をかければ桜の造花も手に入るかも知れないが、不等辺は敢えて自分たちで作るという道を選んだ。それがどんなに険しい道のりになるかを、後に思い知ることになることを知らずに…。
 まず、どのように作れば、本物の桜らしい造花が作れるか、アイデアを出してもらうことにした。その結果、松本の案による、ティッシュを加工した方法が、コストもかからず、比較的容易に作れることが分かった。

  1. トイレットペーパーを、その幅の半分を1辺とする正方形に切る。
  2. 「やっこさん」を作る要領で4つに折り、中心をひねる
  3. ひねった部分をテープで止めると、桜の花のできあがり

写真 ということで「各自最低1ロール分は作ってくること」ということで、各自にピンクのロールが渡された。単純に計算すると、1ロール(ダブル30m)から約1200輪の桜が出来ることになる。熟練してきても1輪作るのに1分はかかるので、1ロール分でのべ20時間。途方もない作業である。稽古のない平日の夜、一輪また一輪と作り、週末の稽古に箱に入れて出荷する。作っても作っても終わりの見えない作業。嗚呼野麦峠。
 ちなみに当初は、桜色に近いドンキホーテのドンペン君印のピンクのロールを使って作っていたのであるが、照明の方と相談した結果、むしろ白いロールで作った方がいいということが分かり、急遽白い花も作ることになった。
 こうしてたたき(大道具作り)が一区切りついた最終日に、作った花を枝に付ける作業を行った。だが、これまでみんなが作ってきた分量では、枝1本分にしかならないことが判明。花見らしく見せるためには、最低あと枝4本分は作らなくてはならない。公演まで3週間を切り、猛ペースで花を作ることになった。
写真 それからと言うもの、稽古のない日はもちろん、稽古中も役者以外はひたすら花を作る作業に明け暮れた。花を作る者、作った花に針金の柄を付ける者、それを枝に付ける者。スタッフ総動員体勢で、どうにか小屋入りまでに枝5本分の桜が出来上がった。こうして作った「人工の桜」は、慎重にビニールにくるまれ、劇場へ運ばれ、舞台設営終了後、ワイヤーで吊された。
 こうした全員の努力の甲斐あり、推定2万輪の桜が11月の劇場に花開いた。照明を当てると、桜の季節はもちろん、ラストシーンで場面と明かりが変わると、新緑のシーンも見事に演出した。恐らく遠目には、造花であることは分かっても、それがティッシュと針金で作られたものであるとは気がつかなかったことであろう。
 そして劇中降り注ぐ美しい桜吹雪は、当日即席で作られた4つの花籠から降らせた物。舞台後方2階のブース前で、演出の大村と越後が操作していたものである。

(写真右上:桜の花の作り方を指導)
(写真左:出来上がった桜を枝につけて具合を見る)
(写真右下:完成した桜の花を満足そうに見るえいきち

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