△ 「天国の猥談」メイキング特別編 〜ドリアン〜


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 今回の芝居に登場する小道具の中でキーとなっていたものがドリアン。劇中では強烈な生の象徴として使われていた「果物の王様」ドリアンは、その味に病みつきになる人がいる一方で、独特の強烈な臭いでも有名な果物である。
 リアルな舞台にこだわる不等辺としては、このドリアンについても、当初本物のドリアンを出すことを検討した。だが実のところ、この芝居の稽古が始まった当初、メンバーの中でドリアンを実際に見たり嗅いだり食したりしたことのある者はわずかであった。そこで、本物を出すにせよレプリカを作るにせよ、まずは実際に本物のドリアンを手に入れてみよう、ということになったのであった。
写真 幸いメンバーのえいきちの知人に果物屋がいるということで、彼を通じて本物のドリアン(当時2500円)を入手した。稽古場に持ち込まれた実物を前にした我々は、その姿を見る前から言葉を失った。
「…臭い」
 購入したドリアンは紙とビニールに厳重にくるまれていたはずなのだが、その奥からも漂ってくる強烈な臭い。ウ○チというよりガス臭いと言った方がいい、押しの強い臭いである。消臭剤をありったけ買ってきて、稽古場の一番奥に置いても、その方向から漂ってくる強烈な臭い。現地のホテルで持ち込み禁止と言われる意味がよくわかった。
写真 結局その日は演出・大村が車で持ち帰り、試食の日まで預かることになった。試食の日までこのドリアンは、大村家の風呂場に隔離されていたという。
 翌週の稽古の日、買ってきたドリアンを試食してみることになった。梱包剤を剥がすと、中から無数の棘に覆われたドリアンが顔を出した。大きさは20cm程度で、ドリアンとしては中位の大きさのようであったが、結構重量感があり、素手で持つと棘がささって痛い。臭いをこらえながら、一人一人手でもって感覚を確認した。
 そしていよいよ試食。舞台での配役通り、野見山役の井手が包丁で切り分けると、一層強烈な臭いがあたりに漂った。中からは、いかつい外見に似合わないクリーム色の果肉が出てきた。果肉は柔らかく、スプーンですくって食べられる。味としては、熟れたバナナにカスタードクリームを混ぜたような味で、結構いけると思った人も多い反面、臭いで参ってしまった人も多く、美味いか美味くないかは賛否が分かれた。
 味はともかく、この臭いを劇場のような狭い空間で放出した場合、気分を害する人も出るであろうくらい強烈であることは身をもって分かった。ちなみに不等辺はかつて「Cyaan」という芝居で最後にバラの香りを劇場に充たしたことがあったが、今回のドリアンの場合はいささか不快な臭いであるし、ドリアンを割った後も芝居は続くので、漂った臭いが容易になくならないだろう。第一、劇場にこんな強烈な臭いを残したら、劇場から使用禁止を言い渡されるかも知れない。よって、本物のドリアンを使うことは断念した。
写真 というわけで、ドリアンに関してはレプリカが作成されることになった。本物のドリアンから型を取り、特殊な樹脂で表面を作成。中はドリアンの形にきちんとくり抜かれた容器を使い、中身を詰められるようにした。劇中で食したドリアンの中身は、ジャガイモを裏ごししたものにカスタードクリームを混ぜたものを使用した。半分づつのパーツをマジックテープで繋げており、包丁もちゃんと入れることができる。恐らく臭い以外は本物だと思った人も多かったのではないだろうか。

(写真右上:厳重に梱包されたドリアン(本物)を取り出す)
(写真左:ドリアン(本物)を試食する山羽と井手)
(写真右下:主演女優・田中とドリアン(レプリカ))

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