△ 「天国の猥談」メイキング特別編 〜スワンボート〜


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写真 芝居を見ていた人も仰天したことと思うが、メンバーがこの脚本を読んだ時も思わずのけぞったのが「スワンボート」である。ボート遊びが出来る池で浮かんでいる、あの二人乗り用の足漕ぎボートである。ラストに男二人がこれに乗って戻ってくるというシーンがあるのだが、これがあるために、当初この「天国の猥談」は、舞台化不可能ではないかと言われていた。
写真 しかし不可能を可能にするのが不等辺の舞台。作者・中澤のこだわり通り、ここはいっちょ、スワンボートを登場させてやろうではないか。しかしどうやって?
 実際、8月中旬に環境見学に行って分かったのだが、実物のスワンボートは車一台分ほどの大きさがある。大人二人が並んで座れるのだから、当然と言えば当然である。そんな大きな物をどうやって手に入れるのか。また手に入れたところでどうやって登場させるのか。スワンボートを登場させるために、舞台美術は何度も修正を繰り返した。
 結果、劇場MOMOの特殊な形を利用して、上手の奥まったスペースにスワンボートを紗幕で隠しておき、ラストで照明を当てて登場させるという方法が取られた。
 しかしそれでも本物のスワンボートを劇場に入れるのは難しい。そこで不等辺は、なんとこのスワンボートも自ら作ってしまうことにしたのである。
写真 作成が行われたのは、不等辺の強力助っ人・島田氏の所属する工房。まずスワンボートの前身部分の型を発泡スチロールで作る。そしてその型に合わせてFRP(本物の船にも使われるガラス繊維混入強化プラスチック)で船体を作る。有志が平日に何度も工房へ足を運び、膨大な時間と労力(多分費用も)かけられて、スワンボートが完成した。首の部分は別ユニットとして作られ、松本仁也が顔をデザインした。
 しかし半分サイズのスワンボートでも劇場へ搬入する際には困難を極めた。男5人で10分ほど、向きを変えたりひねったりしながら悪戦苦闘し、最後にはボートにつけた手すりを一部壊して、どうにか劇場に入れることができた。

 見た目以上に大きな労力をかけて作られた数々の道具たち。無茶を現実とさせてしまうパワーこそが、不等辺の芝居作りの醍醐味でもある。そんな我侭におつきあいいただいている多くの皆様のご努力に、この場を借りて厚く御礼申し上げたい。

(写真右上:井の頭公園に泳ぐ実際のスワンボート)
(写真左:スワンボート作成のため、発泡スチロールで型作り)
(写真右下:出来上がったスワンボートに乗るえいきち松本

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