△ 「ブリジニツィー」シーン21b


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島袋、上原、木村、登場。

島袋 「ケンちゃんだよ。それがホンモノのケンちゃんなんだ。」舞台写真
新垣 「盗み聞きとは人が悪いですね。」
木村 「スパイに言われたかないわよ。」
新垣 「みなさん御存じでしたか。」
島袋 「5年前の一件以来、君の事はずっとマークしてたのよ。しかし、警察内部には君の息がかかった者が多くってね、なかなか細かいとこまで調べがつかなかったけどな。」
新垣 「島袋さん、やっぱりアンタはこっち側の人間だ。」
島袋 「ん?」
新垣 「お気付きですか?あなたは犯人像を絞り込んでいく時、一番イイ顔をしてるんです。事件が大きい程イキイキとしたね。あなたは心の中では、いつもワクワクするような事件を期待してるんですよ。」
島袋 「確かに、事件が起これば気持ちはたかぶるさ、人間だもの。でもね、僕は正義の味方の警察官だって所で踏ん張ってんのよ。」
新垣 「国同士の正義のぶつかり合の時、正義の味方の島袋さん、あなたどうします?」
島袋 「そうだねぇ。とりあえず平和的対話から始めたいので、銃を置いてもらおうかな。(新垣に銃を向ける)」
今井 「待って下さい警部!(新垣の前に出るが、人質にされてしまう)」
上原 「今井さん!」
新垣 「銃を置くのはお前らの方だ。」
島袋 「あらら、開き直っちゃったよ。」
上原 「警部!こういう時なんとかする超能力は?」
島袋 「う〜ん…スプーンまげならすぐにでも…」
上原 「それ全然駄目っす。」
木村 「ヤミー君こそなんか使える病気ないの?」
上原 「使える病気って?」
木村 「目からビームが出ちゃう病とか。」
上原 「どんな病気ですかそりゃ!」
新垣 「早くしろ!」

みんな渋々銃を置く。

今井 「ケンちゃん、やめよう、やめようよこんな事。」
新垣 「うるさい、お前も捨てろ!」

今井、ピストルとマシンガンを置く。新垣がマシンガンを拾う。

上原 「ひどいですよ新垣さん!僕あなたの事尊敬してたんですよ!」
新垣 「御期待に添えなくて悪かったな。あぁ、悪かったついでに教えてやるよ。ディスクの中身の国家機密と、お前の父親の事。」
上原 「父親?僕の父親は…」
新垣 「死んだって事になってるがな。」
上原 「なってるがなって?それじゃ…」
新垣 「お前の本当の父親は別にいる。」
上原 「え?」
新垣 「お前の父親はな…フフフフ…」
上原 「まさか……まさかっ!…・あんたなのかっ?!!」
島・今・木 「ちゃうちゃう。」舞台写真
新垣 「お前の父親はっ!!シュバルツハルスキー・トゥエル・ウル・オムロック。エイベキスタンの大統領さ。」
全員 「何だって?!」
今井 「上原!お前…お前…外人だったのかぁ!(木村に殴られる)」
上原 「嘘だ、そんな馬鹿な事!大体どうしてそんな事が国家機密なんだ!」
新垣 「実はオムロック大統領は1年と3ヶ月前に暗殺されているんだ。」
上原 「馬鹿言うな!おとといテレビで見たぞ!」
新垣 「そいつはニセモノさ。」
上原 「ニセモノ?」
島袋 「クローンって訳だ。」
新垣 「御名答。クローン技術自体は、ソビエト時代からすでに確立されていた。が、経験や記憶をクローンに移植する事は不可能と言われていた。ところが3年前エイブ・メディカルがそれに成公し、その生態実験で偶然出来た副産物が…」
今井 「ハイテク・アートとしての『ブリジニツィー』。」
新垣 「その通り。」
島袋 「八王子署の文化包丁に出世かな?」
今井 「いや、あんまうれしくないっす。」
新垣 「そんな折、過激派によってオムロックが暗殺されちまった。政府は政局の安定を計る為にオムロックのクローンを製作する事にした。」
上原 「何て事だ。」
新垣 「ところが、オムロックのクローンは何度造ってもすぐに死んでしまった。オムロックの遺伝子自体に先天的欠陥があったんだ。それを補うDNAパターンを持った人間が…」
上原 「まさか…」
新垣 「そう。オムロックが留学中に日本の女性、上原ヒトミに生ませていた隠し子、上原隆君、君の事だ。」
今井 「上原!お前…お前…ハーフだったのか!(島袋に殴られる)」
上原 「じゃあ、僕は実験に?」
新垣 「使わせてもらったよ、君のDNAの一部。」
上原 「いつの間にそんな事を!…あっ、まさか…」
新垣 「そう。1年と3ヶ月入院してもらったのはそう言う事だ。」
今井 「上原!お前…お前…健康だったのか!(島袋と木村に殴られる)」
新垣 「おかげで実験は大成公。予備のDNAの為に、上原君のクローンも造らせてもらったよ。」
上原 「僕のクローン?」
新垣 「そのディスクの片方を開発者の2人が盗んで消えちまった。」
木村 「それがグレイとブルー。」
新垣 「あぁ、展示会を開いてもう1枚のディスクをエサにしたが、まんまと盗まれちまった。ただしブルーを捕まえられたんで、もう1枚は手元に戻ったがね。」
木村 「じゃあ、まさかブルーの護送車を爆破したのは…」
新垣 「俺さ。ディスクが手に入りゃブルーはただの邪魔者だからな。」
今井 「ひどい…ひどすぎる…」
新垣 「2枚のディスクにはクローン実験のデータとエイベキスタンの秘密計画が入っている。」
島袋 「秘密計画?」
新垣 「クローン兵計画さ。」
島袋 「何だって?」
新垣 「素晴らしいだろ!命も惜しまぬ兵隊がいくらだって造れるんだぜ!死んでも死んでもまた造りゃいい!ハハハハハハ!」
島袋 「5年前に君の正体を掴んでいれば…」
新垣 「えぇ、危ないとこでしたが、鈴木さんがまぬけで助かりましたよ。」
島袋 「何故その後僕を殺さなかった?」
新垣 「使えるからさ。8係に集められた人間は、確かに警察組織では使えないゴミばかりだ。しかし、クローン兵にするにはなかなかいい素材でね、アンタの超能力も、のびちゃんの技術も、木村さんの腕も捨てるにはもったいない。ゴミはゴミでも大切な資源ゴミって訳だ。せっかく集めたのにここで捨てるのは惜しいが、そろそろ消えてもらうよ。」
上原 「どっちなんですか?」
新垣 「なに?」
上原 「僕はホンモノなのか、それともクローンなのか?」
新垣 「ハハハハ、知りたいだろうなそりゃ。」
上原 「頼みます!教えて下さい!」
新垣 「残念だがタイムリミットだ。あの世で父上にでも教えてもらうんだな。それじゃみなさん、ダスヴィダーニャ!さよなら!2階級特進おめでとう!ハハハハ!」

銃声。今井、バナナを持って震えている。マシンガンが天井に向けて数発発砲され、新垣ひざまづく。バナナ銃の弾が腹に当たっている。

新垣 「…のっ、のびちゃん…」
今井 「ケンちゃん、ごめん、ごめんよ…」

鈴木、現れる。

上原 「鈴木さん…」
新垣 「…そ…そんな…そんなバッ…(鈴木が新垣の頭に指を置き、力を込めて念を送る)バッ…バッ…バナナッ……」

新垣、絶命。

今井 「ケンちゃん!」
木村 「むごい。何もそんな言葉を人生最期の言葉にしなくても…」
鈴木 「これでスッキリしたかも。じゃ、また、会いましょう。(股を閉じて消える)」

鈴木を見つめる上原。

島袋 「上原君。」
上原 「はい。」
島袋 「鈴木だな?」
上原 「…はい。」
今井 「俺感謝してるんだよ。ケンちゃんに励まされて強く生きて来れたんだから。でもやっぱりケンちゃん間違ってたんだよ!(懐からディスクを出し)こんな物の為に…カッコわりぃよケンちゃん!」
島袋 「どうした?しんみりしている時間はないぞ!ここからは4手に分かれよう。」
木・今 「はい!」
島袋 「(自分の銃を見て)あれ?やばいな、弾切れだよ。」
今井 「(バナナ銃を差し出し)一つ貸しましょうか?」
島袋 「大丈夫、もう一つ持ってるから。」
木村 「行きましょう、ヤミー君、いや、健康君よね。」

上原を残して、みんな去る。

上原 「僕は…僕は…僕は誰なんだ…」

暗転。

(作:松本仁也/写真:広安正敬)

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