△ 「ブリジニツィー」シーン21a


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今井、新垣、後ろ向きで下手と上手から入って来る。背中がぶつかり、お互い銃を突き付ける。

今井 「ケンちゃん?」舞台写真
新垣 「のびちゃんか。どうだ状況は?」
今井 「華原さんがやられてた。」
新垣 「華原って、人質にされていた刑事か?」
今井 「あぁ。」
新垣 「そうか、両方の人質が死んでたって訳か。最悪だな。」
今井 「でもさ、僕も1人倒したんだよ。酔拳で。」
新垣 「そうか、良くやったな。」
今井 「本庁の応援の方は?」
新垣 「あ、あぁ。さっき連絡が取れた。やっと着いたらしい。(ジャンプする)今、全ての出入り口に特殊部隊を待機させてある。」
今井 「そう。…なぁケンちゃん。」
新垣 「ん?」
今井 「あのさ…」
新垣 「何?」
今井 「(新垣に銃を向け)本当なの?ケンちゃんがエイベキスタンのスパイだって?」
新垣 「…知ってたのか。」
今井 「何故だよ?どうしてスパイなんて?昔はあんなに正義感あったじゃない。僕が『のびたのくせに生意気だ。』とかいじめられてると、必ず助けてくれたよね?なのにどうして…」
新垣 「正義なんて立場によって変わっちまうんだよ。中高生の頃、大人の理不尽さに刃向かうのが一種の正義だったろ?『お前達みたいな大人が社会を駄目にしているんだ!』って言ってな。そんな大人に銃を向けて進んでいるうちに、いつの間にか自分も背中に銃を突き付けられてる。そして言われるのさ。『お前らみたいな大人が社会を駄目にしているんだ!』って。気付けば自分も理不尽な大人になっちまってた。」
今井 「ケンちゃん…」
新垣 「国家の正義なんてもっと理不尽さ。正義の名のもとに多くの血が流されて来た。俺は気付いたのさ、正義か悪かなんて小さい事だと。見つけちまったのさもっとでっかい事を。エイベキスタンは今に世界の中心になる。俺はそこで確固たる地位を築きあげるのさ。」
今井 「僕らを利用して一体何を?」
新垣 「盗まれた『ブリジニツィー』には、エイベキスタンの国家機密が半分入っている。そいつを回収、又は始末するのが俺の仕事さ。もう半分の入ったディスクはすでに俺の手元にある。」
今井 「僕らは捨て駒なのか?」
新垣 「いや、そうでもない。」
今井 「じゃ、一体…」
新垣 「のびちゃん、俺の仲間になれ。」
今井 「え?」
新垣 「お前もスパイになるのさ。」
今井 「何言ってるんだよケンちゃん!」
新垣 「のびちゃんの発明技術は、日本の警察に置いておくのはもったいない。エイベキスタンならいくらでもバックアップしてくれるさ。そうすりゃ、どこでもドアだって、ガリバートンネルだって、もしもボックスだって、スモールライトだって、タイムふろしきだって、桃太郎印のきびだんごだって、航時機だって、お前の大好きなドラえもんの道具を、また好きなだけ作れるんだぞ!」
今井 「違う!違うよケンちゃん!」
新垣 「何が?!」
今井 「(目をうるうるさせながら)航時機はキテレツ大百科だよ!」
新垣 「あ、そうか…ってそんな事はどうでもいい!とにかく俺の紹介ならいきなり幹部クラスにだって…」
今井 「やめてくれよケンちゃん。」
新垣 「のびちゃん。」
今井 「そんなのケンちゃんじゃないよ。昔のケンちゃんじゃ…」

(作:松本仁也/写真:広安正敬)

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