△ 「ブリジニツィー」シーン3a


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PM12:30
犯人アジト

明転するとグレイは中央で立っている。ピンクはノートパソコンを打っている。レッドは酒ビンをかかえている。ヴァイオレットはトランプをいじっている。

グレイ 「俺達は、それぞれが犯罪のプロフェッショナルだ。腕は半端じゃねぇ、仕事はぬかりねぇ。」
ピンク 「ただし、お互い過去も、プライベートも本名も知らなーい」舞台写真
ヴァイオレット 「教えもしないし、詮索もしない。」
グレイ 「それが俺達のルールのはずだ。しかし…」
レッド 「一体誰なんだ裏切り者は!」
ヴァイオレット 「落ち着きなさいよ。」
レッド 「うるせえよ!(と、銃を抜くが、先に3人に銃を向けられる)…わぁ〜った、わぁ〜ったよ。(渋々銃をしまう)」
ピンク 「でも、あそこでシャッターが閉まってたのにはビックリ〜って感じよねぇ。」
グレイ 「入る時に開けておいたんだ。警備の連中なら、シャッター閉めるより通報するのが先のはずだ。」
レッド 「裏切り者だよ!」
ヴァイオレット 「落ち着きなさいよ。」
レッド 「うるせえよ!(また3人に銃を向けられる)…わぁ〜った、わぁ〜ったよ(渋々銃をしまう)でもなグレイ、裏切り者がこん中にいんのは確かだ。早いとこ始末しちまわねえと、みんなブルーの馬鹿やろうみてえに捕まっちまうぞ。」
ピンク 「でもお金は欲しいんでしょ?」
レッド 「捕まったら元も子もねえんだよ!」
ヴァイオレット 「捕まるのがそんなに怖いんだ。」
レッド 「んだとコラ…(銃を抜きかけるが、ヴァイオレットの方が早い)」
ピンク 「レッドが、早抜きでヴァイオレットにかなうわけないじゃ〜ん。」
レッド 「わぁ〜った、わぁ〜ったって。…あぁ、腹へったなぁ!」
グレイ 「オレンジが返って来るまで待ってろ。」
レッド 「大体あいつが一番くせえんだよ!なのに、何であいつを買い出しになんか行かせた!」
グレイ 「お前にパシリ頼んで、素直に行ったか?」
レッド 「けっ!」
ピンク 「大丈夫、あいつが裏切り者でもな〜んにもできないわよ。」
グレイ 「ピンク。お前も顔に似合わずエグイ事するよな。オレンジにセンサー付爆弾を飲ませるたぁよ。」
ピンク 「ハンディ・ナビ・システムで、彼のいる所はいっちもっくりょ〜ぜ〜ん。マイクも付けてるから警察に連絡もできないしぃ、もし怪しい動きをしたら、このスイッチで、ボ〜ン!!」
レッド 「今すぐ押しちまえ!」
ピンク 「押しちゃう、押しちゃう!でも御飯抜きになっちゃうよぉ。」
レッド 「やっぱ押さないで。」
グレイ 「しかしオレンジの奴おせえな。今どこだ。」
ピンク 「もうすぐそこまで来てま〜す。3メートル…2メートル…1メートル…」

ノックの音。4人、入口に銃を向ける。

グレイ 「入れ。」
オレンジ 「ねぇ、これつまんないから合い言葉かなんか決めま…(銃を向けられているのに気付き、両手をあげて)ただいま。」
ピンク 「お腹にセンサーがあるんだから、合い言葉なんていらないの。」
レッド 「それより飯だよめし!」
オレンジ 「はいはい、ちゃんと買って来ましたよ。(ウィダ・イン・ゼリー)」舞台写真
レッド 「おいてめえ。誰が宇宙食買ってこいって言った。」
オレンジ 「違いますよ。これは、ウィダー・イン・ゼリーって言うんです。」
レッド 「知ってるよそんなこたぁ!」
オレンジ 「駅前のマツキヨですげえ安売りしてて、ほら、こんなに買っちゃいましたよ!やるなぁ、マツモトキヨシ!」
レッド 「てめえなぁ!こちとら、とてつもなく腹すかして待ってんだぞ!もっとこう、歯ごたえのあるモン買って来いよ!」
オレンジ 「でも、キムタクが宣伝してるんですよ!」
レッド 「関係ねぇだろ!」
オレンジ 「10秒チャージですから!」
レッド 「それが味気ねぇ言ってんだろが!」
グレイ 「食っとけよレッド!腹がへっては何とやらだ。」
レッド 「ちっ!ったくしょうがねえなぁ。」
オレンジ 「どれにします?ビタミン・イン、エネルギー・イン、ファイバー・イン、プロテイン・インがありますが。」
レッド 「どれだっていいよ。」
オレンジ 「じゃ、エネルギー・インね。あ、ヴァイオレットさんにはファイバー・インどうです?お通じ良くなりますよ。」
ヴァイオレット 「…ありがとう。」
グレイ 「さて、全員揃ったところで、ブルーの奴を取り返す作戦を練るとするか。」
レッド 「ドジ踏みやがって、あの馬鹿が!」
オレンジ 「でも、こっちも人質取ったからあいこでしょ。」
レッド 「プロフェッショナルが聞いてあきれるぜ。」
ピンク 「どうにかならないんですかぁ?ディスクは手に入れたんだしぃ、わざわざ助けに行かなくたって…」
グレイ 「確かにディスクは手に入れた。が、ここにあるだけじゃなんの価値もねえ。」
ピンク 「ディスク欲しがってる人なんか、捜せばい〜っぱいいるんじゃないの?」
グレイ 「残念だが信頼おけるブローカーを知ってんのは、ブルーだけだ。いいか?時価6千万のディスクが、奴のマーケットを使えば6億の価値が付く。わかるか?10倍だぞ!」
レッド 「わかってるさ。このまま計画をパーにする気なんざねえ。だが、一体どうやってブルーを取り戻す気だ?」
グレイ 「こっちにゃ人質とディスクがある。」
オレンジ 「サツと交渉ですか?」
レッド 「危ねぇよ!危な過ぎんだよそれじゃあ!」
グレイ 「じゃあ降りろ!とっとと消えろ!そのかわり上手く行ってもお前には一銭もねえ。」
オレンジ 「あ、そうすりゃ分け前増えますよね!いいなそれ。レッドさん、是非とっとと消えてください。」
レッド 「んだとてめえ!」
グレイ 「おれたちゃプロフェッショナルだ!!…そうだったよな、レッド。」
レッド 「ちくしょう(懐に手を入れる。全員レッドに銃を向ける。レッド、ゆっくりとポケットから煙草を取り出す)…煙草だよ、煙草。」
グレイ 「悪いな、ここは禁煙だ。」
レッド 「ちっ。(煙草を投げ捨てるが、こっそり拾いに行く。)」
グレイ 「ピンク。」
ピンク 「は〜い。」
グレイ 「サツのコンピューターにハックをかけろ。」
ピンク 「もうやってま〜す。」
グレイ 「よし、上手くいったら交渉の方法を練るぞ。」
ピンク 「ほ〜い。」

オレンジ、ニコニコして立っている。

レッド 「何ニコニコしてんだよ、気持ちわりぃなぁ。」
オレンジ 「いやあ、こんな状況の時になんですけどね、かっこいいっすよね、俺達って!」
レッド 「あぁ?」
オレンジ 「昔から憧れてたんですよ、こういう悪役の格好。『レザボア・ドッグス』でしょこれ?俺、ジョン・ウーなんかも好きだし、あと、ブルース・ブラザーズとかメン・イン・ブラックとか…・あれ?二つとも悪役じゃないか?」
レッド 「勘違いすんじゃねえぞ。俺達は悪役じゃねえ、悪人だ!ホンモノの犯罪者だ!テレビや映画みたいでかっこいいだぁ?憧れてただぁ?そういう姿勢で取り組んでていい犯罪が出来ると思ってんのか!!」
オレンジ 「いい犯罪って…」
ピンク 「たまにはまともなこと言うんだレッドも。」
レッド 「たまにはって何だよ、たまにはって。」
グレイ 「いいかオレンジ。テレビや映画の真似をしても、何にもならねえ。現実の俺達がいて、初めて悪役が生まれるんだ。ホンモノは、悪役に真似させる位クリエイティブじゃなきゃなんねえんだよ。」
ピンク 「映画とかに出て来る犯罪者は、だいたいモデルがいるのよ。」
オレンジ 「え?例えば?」
ピンク 「有名なところでは、『明日に向かって撃て!』の、ブッチとサンダンスとか。」
ヴァイオレット 「『俺達に明日はない』の、ボニーとクライドとか。」
オレンジ 「いたんだぁ、あんな人達。」
グレイ 「『ゴッド・ファザー』の、ドン・コルレオーネとか。」
オレンジ 「ヘえ〜、知らなかったぁ。」
レッド 「『ジュラシック・パーク』の、ヴェロキ・ラプトルとか。」
オレンジ 「ヘえ〜…って、ありゃ恐竜でしょ!」
レッド 「ちゃんといたぞ。」
オレンジ 「そりゃいたでしょ!7千万年位前には!でも、犯罪者でくくるのはどうかな?」
グレイ 「ダース・ベーダーもだ。」
オレンジ 「ダース・ベーダー?!」
グレイ 「俺のおやじがモデルだ。」
オレンジ 「おやじがダース・ベーダーだったんですか?」
グレイ 「じいちゃんはバイキンマンだった。」
オレンジ 「バッ、バイキンマン?!」
グレイ 「詰めの甘いマッド・サイエンティストでな。ばーちゃんの尻にも敷かれてた。」
オレンジ 「もしかして、そのばーちゃんて…」
グレイ 「ドキンちゃんのモデルだ。」
オレンジ 「どうゆう一家なんだ…」
ヴァイオレット 「プライベートしゃべり過ぎなんじゃないの?グレイ。」
グレイ 「おっといけねえ。そうだったな。ハハハハハハ。」
オレンジ 「ひどいなぁ、みんなしてボクをからかって。」
ピンク 「何?からかうって?」
グレイ 「今言った事の、どこにも嘘はねぇぞ。」
オレンジ 「だってそんな、ダース・ベーダーとかバイキンマンとか…」
レッド 「俺達ホンモノの犯罪者が本当だって言ってんだから、お前はそれを信じてりゃいいんだよ。」
オレンジ 「嘘もうまいですからねぇ。ホンモノの犯罪者は。」
レッド 「だめだこいつ。脳みそコンクリートだぜ。」
オレンジ 「大体…だ…痛っ、痛たたたたっっ!」
ピンク 「あらどうしたの?」
オレンジ 「ピンクさん、なんとかして下さいよ、腹の中の爆弾!」
ピンク 「放っとけばそのうち出るわよ。」
オレンジ 「それが便秘ぎみなんですよ。」
ヴァイオレット 「ファイバー・インどお?お通じ良くなるわよ。」
オレンジ 「こりゃどうも…」
ピンク 「無理して薬で出そうとすると、爆発しちゃうかもぉ。」
オレンジ 「げっ…。」
ピンク 「ピンポンピンポ〜ン!グレイさん、やったわよ!」
グレイ 「潜り込めたか?」
ピンク 「ちょろいもんでした。」
グレイ 「流石だな。よし、作戦詰めるぞ。こいつのコピーとれるか?」
ピンク 「奥の機械でなら。」
グレイ 「すぐに頼む。」
ピンク 「オッケ〜。(去る)」
グレイ 「レッド。」
レッド 「あぁ?」
グレイ 「おめぇは人質の見張りだ。」
レッド 「けっ!つまんねえ役ばっかだぜ。(去る)」
オレンジ 「あの、ボクは?」
グレイ 「見張りだ。」
オレンジ 「え?ボクもですか?人質の見張りは、レッドさんが…」
グレイ 「人質じゃねえ。レッドの見張りだ。」
オレンジ 「え?レッドさんの?」
グレイ 「奴は昔、弟を刑事に殺されている。放っときゃ人質の刑事を殺しちまうかもしれねえ。」
オレンジ 「なるほど。分かりました。(去る)」
グレイ 「それに奴は、お前の見張りもしてくれる。(ニヤリ)」
ヴァイオレット 「グレイ。」
グレイ 「ん?」
ヴァイオレット 「(銃を抜く)話が違うんじゃないの?」
グレイ 「フッ。悪いな。ブルーが捕まったのは計算外だった。」
ヴァイオレット 「約束は今日までのはずよ。」
グレイ 「まだ仕事は終わってねえ。終わるまでは、お前の腕が必要なんだ。もう少し付き合え。」
ヴァイオレット 「本当に会えるんでしょうね?」舞台写真
グレイ 「ああ。」
ヴァイオレット 「何処にいるの?」
グレイ 「すぐ近くだ。」
ヴァイオレット 「いいかげんな事を!」

グレイ、ヴァイオレットに写真を渡す。

ヴァイオレット 「…!」
グレイ 「これでも信じられねえか?もう少しの辛抱だ。な、ヴァイオレット。(去る)」

(作:松本仁也/写真:広安正敬)

Next! オレンジグレイピンクレッドヴァイオレット

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