「ブリジニツィー」シーン2e 「ブリジニツィー」シーン2eトップページ > ページシアター > ブリジニツィー > シーン2e 【公演データ】
福田巡査が人形を持って登場。島袋、木村、今井、福田の人形劇で説明が始まる。
新垣 「本日AM2:47、八王子京王プラザホテル地階通用口より、6人組の強盗が侵入。明後日より展示予定であったエイベキスタン製ハイテク・アート・ディスク『ブリジニツィー』一枚、6千万円相当を奪う。」
上原 「いつもこんなことしてるんですか？」
鈴木 「分かりやすいだろ？」
新垣 「同:52、侵入した犯人の一人が、警備員に接触し本署へ通報。同:59、8係現場に到着。地下駐車場にて犯人一味と交戦になり、警官4名が負傷。交戦中の3:10、8係華原巡査長が人質に取られる。同:15、一味は人質を連れて車で南西方面へ逃走。本署は、一斉検問を展開するも、その後の足取りはつかめず。同:30、ホテル内ボイラー室にて、拘束された男性、自称『ブルー』26才住所不定無職を発見、保護するが、職質中に一味のメンバーである事が判明。同:44、これを逮捕。」
浜崎 「今回の一件での正確な被害状況は現在未確定。現時点まで、残る犯人5人からのコンタクトはない。」
新垣 「あのディスクは、大変価値のある芸術品です。下手をすれば国交問題にもなりかねません。したがって、極秘に、迅速にとの命令です。」
島袋 「報道規制は？」
浜崎 「24時間限定だ。」
今井 「明日の朝までになんとかしろってか？」
木村 「時間なさすぎ〜」
上原 「あの、質問いいですか？」
浜崎 「何だ？」
上原 「さっき、通報したのが犯人の一人だって言ってましたけど…」
新垣 「それなんですが、実はその一人と言うのが、うちの公安部の人間なんです。」
島袋 「2ヶ月前から犯人側に潜り込んでいたそうだ。」
上原 「犯人の中に刑事がいたのに、ディスク盗まれて、人質まで取られちゃったんですか？」
鈴木 「スパイが、スッパイしたんだな。」
上原 「うぁ…」
新垣 「その刑事とは潜入後まもなく連絡が取れなくなりました。唯一入った情報では、犯人グループは彼をのぞいて、男性4人、女性１人、リーダーはグレイという男らしい事がわかりました。」
島袋 「で、これから何を？」
浜崎 「犯人達からの連絡を待つ。」
今井 「待つって？」
新垣 「必ず来ます。」
木村 「どうして？」
新垣 「逮捕した容疑者のブルーが、奴らにとって大変重要な人間だからです。」
島袋 「というと？」
浜崎 「ブルーがいないと、奴らは盗んだディスクを金に替えられない。」
木村 「ブローカーと繋がっているのが、ブルーだけだとか？」
新垣 「その通り。本人がゲロしました。奴らはブルーを取り戻す為に、必ず連絡をよこします。」
鈴木 「なるほど・ザ・ワールド。」
上原 「ひど過ぎます。」
鈴木 「はい、消えた。」
今井 「しかしよく、容疑者がそんな事ゲロしましたね。」
新垣 「苦労したよ。火責め・水責め・石責め…」
上原 「ちょっと待って下さい。なんですか、その火責めとかって？」
島袋 「知らんのか？拷問だよ。」
上原 「ごっ拷問？」
鈴木 「水戸拷問。」
上原 「そのギャグが拷問です。」
鈴木 「うまい。」
新垣 「後は、電気責め・かずのこ責め、最後にムチムチプリンマヨチュチュ責めで、ようやくゲロしましたよ。」
上原 「ムチムチプリン？マヨチュチュ？何をどうするんだろう一体？」
島袋 「あぁ、あれでゲロしない奴は人間じゃないって。」
上原 「いいかげんな事言わないで下さい！」
今井 「いいかげん？」
上原 「拷問なんて、するわけないでしょ！」
島袋 「上原君、罪人にゲロさせる時は、江戸の昔から拷問と決まっているんだよ。」
上原 「嘘ですよそんなの！それがホントなら、目でピーナッツ噛んだっていいっすよ！」
今井 「あ、『ドラえもん』第二巻だ。」
上原 「大体そっちの方が犯罪でしょ！人権蹂躙です！刑事ドラマだってそこまではしませんよ！」
木村 「刑事ドラマだからそこまで出来ないのよ。」
上原 「は？」
島袋 「ドラマは作りモンだ。」
上原 「わかってますよ。現実の刑事とドラマの刑事が違うって事くらい。」
島袋 「だったら見つめなさいよ、現実を。」
上原 「しかし…」
島袋 「しかし？」
上原 「ドキュメンタリーとも違うじゃないですか。」
島袋 「ドキュメンタリー？」
上原 「ほっ、ほら、『警視庁潜入24時』みたいな。そこに出てくる現実の刑事とも…」
島袋 「今井君。」
今井 「はい。」
島袋 「あのビデオ見せてあげなさい。」
今井 「あ、はい、あのビデオですね。（と言って木村と奥へ。）」
上原 「何ですか？」
島袋 「イイモン見せてあげるよ。」
暗くなり、奥が明るくなる。映像という設定だが実際はその場で役者が演じる。
島袋 「VTR回転。」
上原 「あ、これ、こないだ放送してたやつ。」
島袋 「良く見てな。」
上原 「あっ！今井さんだ！木村さんも！」
チンピラ 「うるせえなコラ！（今井をどつく）」
今井 「はい、今の見た？見た？12月7日午前1:25、八日町五丁目路上、男性一名、公務執行妨害で逮捕。」
チンピラ 「やめろ！何すんだコラァ！」
木村 「おとなしくしなさい！」
ストップモーション。
上原 「二人とも出てたんですか。凄いな。え？でもこれが何か？」
島袋 「今のはOKカット。」
上原 「OKカット？」
島袋 「ここからは、放送されなかったとこだ。」
上原 「え？」
先ほどの場面の頭に戻る。
チンピラ 「うるせえなコラ！（今井をどつく）」
今井 「はい、今の見た？見た？12月７日午前1:25、八日町五ちゅうめちゅ※△？％○×☆＄…・」
監督 「カット！」
今井 「（照れ笑いをしながら）すみません。噛んでしまいました。（台本を見直す）」
木村 「今井〜。（と言いながらカメラ目線でピースする）」
ストップモーション。
島袋 「今のがNGカット。」
上原 「NGって…」
島袋 「ありゃヤラセなの。」
上原 「ヤラセって、そんな、だって…」
今井 「いや、恥ずかしいシーン見せちゃいましたね。」
木村 「今井はカミカミ大王だもんねぇ。」
島袋 「テレビやマスコミに毒されるのも無理はないんだろうがね、あれはニセモノだ。今君はどこにいる？君が目の前にしているこれがホンモノの刑事で、ホンモノの事件で、ホンモノの捜査なんだ。」
上原 「ホンモノ…」
島袋 「ホンモノを見分ける力。それが刑事に一番必要なものだ。わかったかな？」
木村 「頑張りましょう。ヤミー君。」
上原 「僕は…・上原です！」
暗転。
（作：松本仁也／写真：広安正敬）