△ 「A1-PANICS!」第11回


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アッコ、走っていき、変なポーズで小田嶋にさわる。

小田嶋 「やめたくなんか、ねえー!!」
敦子 「小田嶋さん…ホント?今のきもち、ホントなの?!」
小田嶋 「当り前だ」
敦子 「だったら、そう言って!」
小田嶋 「ダメだよ。今、何をいってもアイツは…」
敦子 「そんなことない!私が証言する、小田嶋さんと一緒に叫んであげる!」
小田嶋 「アッコ…」
柳井 「オイ、何をゴチャゴチャ言ってんだよ」舞台写真
敦子 「みんなきいて!小田嶋さんのホントの気持ち…さあ!」
敦子・小田嶋 「俺は、ウチの芝居が、好きだ!!」
岸野 「…」
柳井 「ちょ、ちょっと何を言い出すんだ、お前…」
敦子・小田嶋 「確かにヘタクソだ、演出もなってない、役者は不器用だし、スタッフはボロボロだ。でもここが俺の劇団だ、ここが俺のあるべき場所だ。どんなに疲れても、どんなに辛くても、幕が降りたあと、拍手の響く間、俺は幸せだ、本当に幸せだ。だから俺はここにいる、皆と一緒にここにいる、俺の大切な場所に、俺の大切な人と!!」
岸野 「…小田嶋…」
小田嶋 「…最後まで、やらせてくれよ、岸野…」
岸野 「…」
小田嶋 「…でないと、俺は、一生後悔する…」

うずくまる小田嶋。その肩に手をおく岸野。

柳井 「何言ってるんだ!いきなり叫び出して、気でも狂ったのか!?大体、お前…」

アッコ、柳井にふれる。

柳井 「マズイな、マズイな、このままじゃあ。そうだ、オダが美咲を寝取ったとでも言って…」
敦子 「そんなウソ、通用しないわよ」
柳井 「なに!?」
敦子 「アンタが何を言おうと、もう誰も信用しない…え?今度は泣きおどしで?それがムリなら力ずくでもって…」
柳井 「離せっー!!」

柳井、アッコをふり払う。
アッコ、倒れる。

美咲 「アッコ!」
有川 「アッコ大丈夫?」
柳井 「と、とにかく俺は帰るけどな、この件に関してはあとで必ず…」
越智 「謝まれよ」
柳井 「そっちがつかむから、俺は…」
越智 「アッコさんに、謝まれ!!ウ!ウォ…ウォォ…アアアアアアアアア…」
「サルッ!」
越智 「明太マヨネ、ネギミソ、それに…紀州梅」
柳井 「な、何が?」
越智 「その袋の中の…オニギリ」

調べる。

柳井 「当ってる!確かに…。じゃあな」
越智 「逃げるな卑怯者ォ」
鴨志田 「…私に、任せて…。…行け」
柳井 「ン?な、なんだか、かゆい…かゆいぞ、こりゃたまらん!」

体中かきむしる柳井。

小川 「何をしたんだ?!」
鴨志田 「…ダニ子さんの一族が…今、総出でくいついてくださっています…フレーフレー ダ・ニ・子。…さあ、みんなもご一緒に…」
「フレーフレー ダ・ニ・子」
鴨志田 「ガンバレガンバレ ダニ一族」
「ガンバレガンバレ ダニ一族」
柳井 「バカか、お前ら!?こんな不衛生なコト、えばってどうする!俺はこの足で保健所にかけこむぞ!そしたらこんなコヤあっという間に営業停止だ!」
大須 「またしても卑怯者ォ!」
小川 「いや、今度ばかりは柳井さんが正しい」
安永 「こうなったら…いくわよ、みんな!」
「おお!!」

ゴィーン。安永TRIPして戻る。

安永 「有川さん、あかり!」
有川 「任せて!」

あかり柳井のみに。

柳井 「な、なんだ、どうして突然消えるんだ、ブースに人もいないのに…」舞台写真
安永 「…小学2年の秋」
柳井 「びっくりした!おどかすな!」
安永 「…あなたにとって初めての検便検査の朝。緊張したあなたは、結局何も出すことができず、空の容器を持ってトボトボと学校へ向った」
柳井 「そ、それがどうした!そんなの、誰だって経験あるだろう!」
安永 「そう。そしてあなたは途中で、"そうだ、犬のウンコを代わりに入れよう"と思いたった。これもよくあること…」
柳井 「お前、何がいいたい…」
安永 「でもここからが他人とは決定的に違うところ、――あなたは、どうせ入れるなら、なるべく珍しい動物のウンコを入れたい、と思った。可哀相に子供の頃から見えっぱりだったのね…。そこであなたは、こっそり近くの動物園に忍びこみ…まっすぐに向った…象のオリに…」
柳井 「やめろ…やめてくれ…」
安永 「手の届きそうな近くに、象のウンコは、あった。それでも、子供の手は今一歩でウンコに及ばない…じれったい…早く早くしないと学校が…焦ったあなたは、いつのまにか、象の…オリの中へ…」
柳井 「ウ…」
安永 「そして無我夢中でウンコを1すくい、すくいとり、ホッとしたその瞬間…上から音をたてて大量の…新しいウンコが…」
柳井 「アアア…」
安永 「…飼育員が異変に気づいたのは、約1時間後のこと。発見があと少し遅かったならば、あなたはウンコに埋れて死んでいたはず…この噂はまたたくまに全校に広がり、その日から、あなたはこう呼ばれるようになった…エ」
柳井 「呼ぶなァ!」

柳井、ガッと愛をつかまえる。

岸野 「柳井さん!」
美咲 「離して!愛を離して!」

スッと近づくアッコ。ふれる。

敦子・柳井 「俺を、エレウンコマンと呼ぶなァァ!!」

間。

敦子・柳井 「なぜ、お前はこの話をしっている?」

間。

敦子・柳井 「そしてなぜ、お前は俺と同じことをしゃべっている?」

間。

敦子・柳井 「…おかしいぞ、お前ら…」

間。

柳井 「何なんだ、お前らはァ!?」

柳井を囲むように、立ちはだかる人々。

岸野 「出て行ってくれないか、柳井さん」
柳井 「…」
岸野 「そうして、もう二度と、俺らの前に、現れないでくれ」
柳井 「……わかったぞ…」
小田嶋 「!逃げろ、アッコ!」
柳井 「これが手品の種だ!」

柳井、アッコの頭からサボテン奪いとる。

岸野 「しまった!」
柳井 「え?どうだい?これだろ、これが全ての原因なんだろう?」
大須 「ち、違う、それは…」
小田嶋 「ただの、ただの小道具だ!」
柳井 「ただの小道具にしちゃ、ずい分なあわてようじゃないか…どういう仕掛けか知らないが、このサボテンが、お前らの、その変な力の源だろう。でなきゃ説明がつかないぜ…」
小田嶋 「返してくれ、頼む」
柳井 「イヤなこった。…言っただろ、俺はTV局にコネがあるって。あいつらは、こういうネタ、喉から手が出る位、欲しがるんだ」
大須 「だ、ダメです!まだそんな段階じゃ…」
柳井 「楽しいゾォ〜TVに新聞、週刊誌…みんな殺到して、お前らみんな時の人だ。もっとも、芝居どころじゃなくなるがな」
大須 「返せ!」

大須とびつく。ひらりとよける柳井。

柳井 「まぁおちつけよ。俺も返さない、とは言ってない。――ただし条件がある」
岸野 「条件?」
柳井 「小田嶋を、渡せ」
岸野 「!」
美咲 「そんなこと!」
柳井 「できないんなら、俺はこいつをメディアにバラまく」
大須 「優作ちゃん…」
柳井 「さあどうする?2つに1つだ。小田嶋を渡すか、それとも、秘密をバラされるか」
岸野 「…」
安永 「岸野さん…」舞台写真
小田嶋 「バカか、お前。何を悩む必要がある」
桑田 「小田嶋!」
小川 「お前まさか…」
小田嶋 「俺なんかいなくても芝居はできる。そう言ったのは、お前だろうが」
美咲 「ダメだよ太郎ちゃん!行っちゃだめ!」
小田嶋 「別に死ぬわけじゃねーし。芝居なんて、どこでも出来らァ」
岸野 「…小田嶋」
柳井 「これでようやく交渉成立だ。手間かけさせやがって…」
小田嶋 「…じゃあな。いい芝居、作れよ」
岸野 「小田嶋!!」

二人、出ていきかける。

(作:中澤日菜子/写真:広安正敬)

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