△ 「A1-PANICS!」第12回


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桑田 「…出せ」
大須 「え?な、何を?」
桑田 「お前の、最終兵器(リーサルウェポン)を、出せ」
大須 「で、でも…」
敦子 「ダメよ!出したら、桑田さんも一緒に…」
桑田 「俺は、構わない。例えこの身が、どうなろうと…」
岸野 「桑田」
桑田 「だから頼む、出してくれ!!」
小川 「桑田!」
「桑田さん!」
大須 「…わかりました。その、桑田さんの気持ちを、決して無駄にはしません」

地鳴り。

大須 「優作ちゃんの美咲さんのアッコさんの小川さんの有川さんの愛さんのカモシダさんのサルさんのお母さんの桑田さんの小田嶋さんの…そして、そしてボクの想いよ力となれ!カム・ヒヤー!O・Kダンサーズ!!」舞台写真

OK!
一緒に踊る桑田。
柳井を抱えあげる。

「イヤッ!行かないで、光正さん!」
桑田 「安心して、よし江さん!俺は、俺は必ず戻ってくるから!」
「あああ…」
桑田 「小田嶋!俺は、必ず明日の10時までには戻るから、それまでに下手のパネルの固定と、仕掛けのチェック、やっといてくれ、いいな!」
小田嶋 「わ、わかった」
桑田 「それから3mmベニヤ1枚と木ネジと…」

O・Kダンサーズ、ハケはじめる。

「イヤッー アナタッー!」
桑田 「ユンケル1本、買っといてくれっー!!!」
「O・K!!」

去る。
間。
倒れる大須。

岸野 「円蔵!しっかり!」
有川 「パワーを使い切ったのね」
大須 「大丈夫です、少し休めば…」
小田嶋 「行っちゃったな、あいつ…平気かな」
敦子 「どこまで捨てに、行くんでしょうね」
小田嶋 「わからん。都内か近くの山か…」
美咲 「あの勢いだと、下北半島ぐらいまでは行きそうよね」
岸野 「何にせよ、良かったな、残れて」
小田嶋 「ああ…すまない、迷惑かけた」
岸野 「よせよ…似合わねぇよ」
美咲 「ぜんっぜん、似あわねぇよ」

全員、たからかに笑う。

安永 「ああっ!!」
小川 「何だよ」
安永 「大変!もう10時です!」舞台写真
小田嶋 「マズイ!全員ハケる用意!用意の終わったヤツから外に出ろ!」
「ハイ!」
大須 「あ、その前に…」
小田嶋 「そうか。みんなサボテン外してここにおいてけや」
有川 「あたしの分はおいといていいでしょ」
大須 「ええ。お約束ですから」
安永 「お別れかァ」
敦子 「淋しいね、ちょっとだけ」
小川 「そりゃお前らは能力が現れたからいいけどさ」
美咲 「結局、邪魔なだけだったよね、あたし達にとっては」
大須 「やはり、個人差があるんですね。これからの重要な研究課題です」
有川 「それはそうと大須さん、約束、守ってくれるでしょうね」
安永 「そうだ、一千万!」

愛・アッコ、犬の格好で大須の現金におねだり

岸野 「おあずけ!」
大須 「いいですよ、このままお渡ししても」
小川 「いや危険だよ、現金は」
大須 「わかりました、明日必ず、小切手を安永さんあてに送ります」
美咲 「間違っても、岸野君に届けないでよ」
小川 「小切手と切手の区別が付かない男だからな」
岸野 「うるせぇ」
小田嶋 「無駄口は、コヤ出てからにしてくれ!…全員、いるな」

一同、うなずく。

小田嶋 「小川、小道具しまえ。生モノは冷蔵庫に」
小川 「おう」

サボテンを外して去る。以下同。

小田嶋 「サル!私物こんなとこにおいとくな!ウラにおいとけ!」
越智 「あいよ」

去る。

小田嶋 「カモシダ電源切れ。CD、MD、テープもな」
鴨志田 「はい…」

去る。

小田嶋 「アッコ、衣装、シワにならないようにな。ハンガー足りるか」
敦子 「たぶん!」

去る。

小田嶋 「お母さん、あの、そろそろ遺影を、何とか…」
「ええ。…桑田さん、無事でいて…」

去る。

小田嶋 「愛、外片付けたか?何も出てないか?」
安永 「え?あっー!!すみませんすみません全部出しっぱなしっー!」

去る。

小田嶋 「有川、フェーダーおとして…主幹は…いいや俺がさいごに切る」
有川 「頼むわね」

去る。

小田嶋 「美咲――は、なんだ出れるのか、もう」
美咲 「うん。先に行ってます」

去る。

岸野 「俺も外さなきゃな」
大須 「ありがとう。おかげで、ずいぶんデータが集まったよ」
岸野 「でも結局、俺には何の能力も現われなかったぜ。つまんねーの」
大須 「言ったでしょ。個人差があるんだよ、やっぱり」
岸野 「不思議、だな。こうやって見てるとなんの変哲もないサボテンなのに…」

3人、並んだサボテンを見つめる。

大須 「さて。持って帰るとするか」
岸野 「そうだな、出ようぜ」
小田嶋 「…」
岸野 「小田嶋?」
小田嶋 「あ?ああ…悪いけど、今日のシメはお前、やっといてくれ」
岸野 「なんで?外、行かないの?」
小田嶋 「最後、チェックしなきゃならないし…オーナーにあいさつも行かないといけないからな」
岸野 「わかった。行こうぜ、円蔵」
大須 「ハ、ハイ。」

二人、去りかけ。大須、思い直して戻る。

大須 「…小田嶋さん」
小田嶋 「ン?何だよ」
大須 「ありがとう」

小田嶋、大須の手をギュッ握る。
大須、嬉しそうに去る。
小田嶋、一人。
道具を寄せたり、片付けものをしてたりしている。
目が、有川のサボテンに行く。
横に座りこむ小田嶋。
迷いながらも手をのばし、頭につけようとしたその時。

岸野 「似合うぜ、きっと」
小田嶋 「…もう、解散したのか」
岸野 「ああ。今日はいろいろあって疲れてるだろうからな。とっとと解散にした」
小田嶋 「賢明だ」
岸野 「つけてみろよ」
小田嶋 「何を、お前…」
岸野 「ムリすんなよ。もう誰もいない」
小田嶋 「…」

つける。笑う岸野。

小田嶋 「笑うな!」
岸野 「悪ィ。見慣れてきても、やっぱおかしいわ」
小田嶋 「…別に、何も変らんな」
岸野 「そうさ。そんなもんさ。――ごめんな」
小田嶋 「…何のことだ」
岸野 「なーんもかも。今日一日の騒動、全部ひっくるめて」
小田嶋 「別に、お前だけのせいじゃない」
岸野 「ああ。でも貧乏クジ引くのは、いっつもお前だ。…そのサボテンだってお前、ずっとのっけてみたかったんだろ」
小田嶋 「バカ、俺は…」
岸野 「だからムリすんなって。誰もいないから」
小田嶋 「――俺までハシャいでたら、本当に幕があかなくなっちまうからな」

間。

岸野 「――飲むか」

缶ビール出す。

小田嶋 「飲む」

二人、フタをあける。

岸野 「乾杯」
小田嶋 「公演の、成功を祈って?」
岸野 「ああ…」
二人 「乾杯」

飲み干す。

小田嶋 「ハァー。しかし、ものの見事に進まなかったなー今日の仕込み」
岸野 「悪かったよ、本当に」
小田嶋 「明日、これで初日を迎えるかと思うと…気が狂いそうだぜ俺は」
岸野 「アハハハハ!本当にな、とても明日初日とは思えねー光景だよ、アハハハハハ!」
小田嶋 「…てめえのせいだろがっ!」
岸野 「わかった、わかったよ!まァ、明日何とかとり戻すさ」
小田嶋 「そうしてくれ…俺はもう泣いてしまいたい」
岸野 「ところで、お前のサボテンも、ちっとも反応しねーなァ」
小田嶋 「ああ。本当に効果あるのかよコレ…」
岸野 「ま、俺だって凡人で終わったしな、個人差が激しいんだろ」
小田嶋 「そんなもんかね」
岸野 「あとは、気の持ちよう…言ってたろ円蔵が。サボテンは願いに反応するって…」
小田嶋 「願い…ねェ」
岸野 「なんかないのかよ、大金を稼ぐ、とか、いい女を抱く、とか、有名になる、とか…」
小田嶋 「ンー…あっ!あった!あったぞ、1つだけ!」
岸野 「よーし、言ってみろ!」舞台写真
小田嶋 「芝居も初日も劇団も、この世から全〜部なくなっちまえ!!」
岸野 「ハァ?」
小田嶋 「いい願いだろ。なくなっちまえば、これ以上、苦しまなくてすむ」
岸野 「なーるほど。そりゃ名案だ名案!なくなっちまえー!!ハハハ…」
小田嶋 「全て、この世から、いや、この世さえもなくなっちまえ〜!!アハハハハ…」

あかり、F.O.

小田嶋 「ありゃ?誰だ〜主幹切ったのは!?おーい岸野、岸野…」

きこえない、何も。
見えない、何も。

小田嶋 「変だな…岸野!岸野!?有川!小川!アッコ!桑田!サル!美咲!愛!カモシダ!…まさか…」

小田嶋の顔にかすかにあかり。

小田嶋 「―――――まさか、な」

C.O.
同時に強烈な音、C.I.
その音が、耳に痛い程残っているうちに

幕は、降りる。

(作:中澤日菜子/写真:広安正敬)

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