△ 「A1-PANICS!」第9回


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一瞬のち
F.I.
舞台、愛一人。目をさます愛。

安永 「あれ…みんな、どこいっちゃんたんだろ…岸野さん、小田嶋さん、アッコさーん…」

間。

安永 「おかしいな、誰もいない…それに、ここ何処?なんで私こんなとこに、一人で…あ!」

愛、袖に手を振る。

安永 「なんだーそんなとこにいたの、雅史さーん!私、てっきり…アレ?」

出てきた小川、原始人ルック。
無言で座込み石器を作っている。

安永 「ちょっと、雅史さん…何で、そんなの着てるの?ねえ、ねえったら…変だな、見えてないの?ねえ…」舞台写真

そこへ美咲かけてくる。原始人ルックで泣きながら。

安永 「美咲さん!美咲さんまで、どうしてそんなカッコ…」

小川、美咲に驚く。

小川 「#*☆○ ◆■◆ ■◎!?」
美咲 「!! ◇■! ◎☆●@▼¢@」
小川 「★@!! ○£◎☆▽● ※&●▼◇▼*!」
安永 「は?な何ていってるの二人とも?全然きき取れない…」

そこへ岸野。もちろんヒョウ柄系。

岸野 「◇! #●! *□○■&!? §¢★#△!」
小川 「※▲※★○ %#*%!」
美咲 「○¢●!! ♂%! ◇★% #□○!」
岸野 「◎♀▲&¢! *◇#○%!」
安永 「岸野さん!美咲さん、雅史さん!ど、どうなってるのよ、もう…」
岸野 「◆@!」
小川 「◎@!」
美咲 「◇#!!」

小川と岸野、とくっみ合いに。

安永 「また!止めて、止めてよ、二人とも!」

小川、優勢に。全くさっきと同じ形に。

小川 「@£◎○!!」
安永 「イヤー!!」

安永、サボテンで小川を強打。
倒れる小川。びっくりしている岸野と美咲。

安永 「もしかして…私が今、いるのは…」

立ちすくむ愛。そのヨコを猿人化した越智が走る。

安永 「そんな…そんな…!!」

BGM『時をかける少女』
F.O.
F.I.

小田嶋 「愛!しっかりしろ、愛!」
安永 「あ…小田嶋さん…(ハッと気づいて)ここは!?」
小田嶋 「大丈夫か!小屋ん中だよ、安心しろ」
安永 「…良かった…戻れたんだ、良かったよぅ…」
敦子 「愛、大丈夫?」
越智 「びっくりしたぜぇー殴った奴がブッ倒れんだもん」
安永 「サルッ!?あんた、サルよね?人間のサルよねっ!?」
越智 「ウン、俺だよ。何で?」
岸野 「おー気がついたか、愛」

3人、現れる。

安永 「岸野さん!…良かった、ヒョウ柄じゃない…」
岸野 「平気かお前。アタマ、打ったか?」
小川 「お前な、ヒトのこと殴るのも止めてほしいけど、殴ったあと気絶すんのも止めてくれよ」
安永 「私…気絶してたんじゃありません!あの、あのあの…タイムトリップしてたみたいなんです」
桑田 「タイム・トリップ?」
大須 「ほ本当ですか愛さん!」
安永 「多分…そこには、あの、毛皮を着た岸野さんと雅史さん、それに美咲さんそっくりの人がいて…そうだ、越智にそっくりの猿人も走ってました!」
敦子 「サルそっくりのサル…」
有川 「妙な説得力があるわね」
岸野 「どういうことだよ、それ…」舞台写真
大須 「つまりはこういうことです。愛さん、あなたが出会ったのは優作ちゃん達の遠い祖先…ご先祖様だったんですよ!」
有川 「エッー!」
美咲 「ご先祖様!?」
安永 「…確かにそう言われてみると…」
大須 「すごい!すごい能力ですよ愛さん!」
敦子 「やるじゃん!ダテに特大ちゃん、つけてないね!」
越智 「待てよ!オイ愛、俺にそっくりな猿人見たって言ったよな」
安永 「ウン、見たよ。生き写しだった」
越智 「じゃー何かい。他の人がホモ・サピエンスになってたころ、ウチの先祖はまだサルだったと」
大須 「結論から言えば、そうなりますね」
「猿ですか!?やっぱり越智の家は、猿ですか!?」
桑田 「おちつくんだ、よし江さん!奴は先祖帰りだ、きっと!」
美咲 「ねーせっかくタイムトリップできるんだから、別の時代も行ってみてよ!」
安永 「い、行けと言われても…どうしたら行けるのか…」
大須 「やっぱり、同じ条件を整えて、それで…」
岸野 「役者はやめてくれ、芝居が開かなくなる」
有川 「スタッフだって同じよ、それは!」
桑田 「この際、役者だスタッフだというよりは、あの強打に耐えられる人材を選ぶべきだろう」
小田嶋 「そりゃあやっぱり」
「サルだろう」
越智 「ヤー照れるなー」
「実っー!行っちゃいけない、実っー!!」
桑田 「大丈夫、よし江さん。もっと良い子を、作りましょう」
安永 「じゃあ、行くわよ、サル」
越智 「おう、思いっきりやってくれ」
敦子 「今度はどのへんに行くの?」
安永 「そうですね…うんとさかのぼって、白亜紀へ!」

ゴーン。
失神。
大須、愛の上にまたがって

小田嶋 「…何やってるの」
大須 「イヤ、僕は科学者ですから、愛さんの隅々まで知っておかないと…」
小田嶋 「鴨志田、好きにして…」
鴨志田 「はい…」
大須 「うあああああぁ…」

そうこうしているうち
愛、気がつく。

安永 「ウ、ウーン…」
有川 「あっ気がついた!」
敦子 「恐竜はいた?」
安永 「こ…これ…」舞台写真

愛、斑点のついた卵をとり出す。

小川 「何だこれ」
安永 「トリケラトプスの…卵です」
美咲 「えっー!?」
岸野 「ト、トリケラトプスの、卵!?」
安永 「エエ。親が巣を離れたスキに…盗み出しました…恐かった…」
大須 「すごい!すごいですよ愛さん!」
桑田 「大発見、いやそれ以上だよ!」
敦子 「温めてかえしたら…恐竜の赤ちゃんが?!」
小田嶋 「世界中が騒ぎ出すぜ!」

と、むっくりおきあがったサル。

越智 「気つけっー!」

ポン!とオデコで卵を割り、丸呑み。
間。

「バカ息子が!バカ息子が!!バカ息子が!!!」
岸野 「お母さん!遺影じゃなくて」
小川 「どうせ殴るならバールやナグリで一おもいに!!」
有川 「あああ…世紀の大発見がァ…」
小田嶋 「サルの…サルのこやしに…」
越智 「半熟だと、もっと良かったね」
大須 「悲しまないで、皆さん。なーにこっちには愛さんがいるんです!その気になりゃ恐竜の卵の10コや20コ…」
安永 「言っとくけどね!私、ティラノサウルスやブロンドザウルスの卵だけは盗ってこないからね!絶対!」
美咲 「ね、今度は未来に行ってみてよ!」
小田嶋 「なるほど!過去ばっかりじゃつまらないもんな」
岸野 「そうだよ!俺の未来をみてきてくれよ!芥川賞とってるか直木賞とってるか、ノーベル文学賞とってるか…」
美咲 「下請け専門の3流ライターになってるか」
岸野 「…てめー…」
安永 「あっあの、あんまり先は恐いから、とりあえず、楽日、行ってきます」
敦子 「楽日?」
有川 「この芝居の?」
安永 「エエ。そしたら観客動員数がわかるから、ムダなパンフ、刷らなくてすむし」
小田嶋 「そうだな。その方がずっと建設的だ」
小川 「はりきって行ってこい!」
鴨志田 「…しあさっての…私に、よろしく、と…」
安永 「行ってきまーす!」

ゴン!!
今度はすぐ目覚める。

小川 「あれ?早いな」
桑田 「近いからか?やっぱり」
安永 「…何も、見えない…」
大須 「見えない?何も?」
安永 「うん…まっ暗で…音も何もなくて…ただ、ただどこまでもずっーと暗やみで…」
敦子 「変なの。どうしてかな」
岸野 「愛の能力は、過去にだけ働くんじゃねーの」
大須 「いやそんなはずは…でも、これでずい分、能力が発現しましたね。有川さんの照明能力に、桑田さんのダンス能力、越智くんのオニギリ判別能力に、愛さんのタイム・トリップ…それに(チラッと敦子、見る)」
敦子 「私の、読心能力」
美咲 「えっ?アッコ、心がよめるの!?」
敦子 「何もしないで読めるわけじゃありません!こんな風とか、こんな風に変なカッコして、相手にさわったときだけ…」
小川 「それにしてもスゲーな」
敦子 「いりませんよ、こんな力」
桑田 「わかるぞ、アッコ!!」
鴨志田 「…実は、私も…」
大須 「エッ!?ペリカンさんにも、能力が!?」
鴨志田 「…カモピーって呼んで…」
大須 「カモピー…」
有川 「何何、どんな力!?」
岸野 「あれか?望み通り動物と話す…」
鴨志田 「近い。…けれどもちょっと違います」
小川 「ちょっと違う?じゃ…」
鴨志田 「…昆虫と、話せる、力…」
小田嶋 「昆虫とォ?」
桑田 「いないだろ、ここには」
鴨志田 「…いますよ、けっこう。…家ダニ…ゴキブリ…クモ…白アリ…見えないだけで…ホラ、そこにも、ここにも…あと変わった所では…水虫」
美咲 「水虫!?」
敦子 「誰よ飼っているのは!?」
鴨志田 「それは…劇団の平和のためにも言わない方が、いいかと…」舞台写真
岸野 「で、お前、奴らとどんな会話してるんだ?」
鴨志田 「…けっこう色々…。印象に残ったのは、家ダニ・ダニ子さんの"女の一生"でしょうか…」
小川 「…ダニ子さん…」
鴨志田 「エエ。今も岸野さんの頭上で生活を営んでおられます…」

岸野、頭を払う。鴨志田、指で受けて

鴨志田 「…え?…本当?…来てる?」
岸野 「ダニ子、言うなあ!!」
鴨志田 「…今、男がひとり、ここへ向っているそうです」
小川 「そんなことまでわかるのかよ?」
鴨志田 「…家ダニは、震動に敏感なんです…」
小田嶋 「こんな時間に、一体、誰が…」

(作:中澤日菜子/写真:広安正敬)

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