治療計画

治療計画のポイント

治療計画はひとつではない

 いきなり、こんな書き出しでは、学生さんは混乱するかもしれません。しかしながら、学校の試験では答えが1つしかなくても、社会に出ればいくつも答えがある、という見本だと考えてください。その理由を以下に挙げます。

  1. 患者さんの治療に対する要求
     
    歯 周病の治療に限ったことではありませんが、「理想的な治療」と「患者さんが望みうる治療」は必ずしもイコールではないということです。世の中、歯医者さん が好きという人ばかりではありません。できれば、痛いところだけ直してもらって、余分なことはしないでほしいと考えている人もいるでしょう。仕事の関係 で、定期的に通院できない人もいるかもしれません。
     もちろん、理想的な治療について、なぜ、それを行う必要があるのかをきちんと説明することは大切です。治療の途中で患者さんの意識が変わり、きちんとし た治療を受けたいと思うかもしれません。しかし、それでも理想的な治療が無理な場合には、患者さんに同意してもらえる第二、第三の選択肢を用意する必要が あります。

  2. 患者さんの経済状態
     お金の話をすると生臭いと言われるかもしれませんが大切なことです。治療に対する要求と重複しますが、あえて別に書き出します。これは、最終的にかめる 状態をどうするかにかかってきます。特に歯周病が重症の患者さんの場合、歯肉は健康になったけれども、その歯をかみ合わせに参加させるためには、自費のブ リッジで何十万も必要であるとします。保険だと入れ歯しかできず、場合によってはせっかく残した歯に負担がかかり過ぎる入れ歯になってしまうこともありま す。そのようなケースで自費が不可能であれば、無理に残さずに抜歯した方がいい歯もあるでしょうし、入れ歯のデザインも変わると思います。もしかしたら、 残った歯を固定するタイプの自費の入れ歯が数万であれば、受け入れてもらえるかもしれません。
     最初に治療計画を立てるとき、最終補綴物(=さいしゅうほてつぶつ; 最終的なブリッジや義歯)がどういったものになるのか考慮し、事前に患者さんに情報を提示した上で、計画を進めたり変更したりすることが必要になってきます。

  3. 歯科医師の技量
     すべての歯科医師が歯周治療の専門医ではありません。専門医にとっては、なんとか残せるような歯でも、そうでない先生にとってはトラブルを起こした末に抜歯に至る歯であるかもしれません。
     誤解のないように書いておきますが、歯周病の専門医でない先生が、悪い先生だというのではありません。歯科の中にもいろいろな分野があり、人によって得 意分野が違うということです。歯周病の専門医でなくても歯周治療は行いますし、良心的ないい先生はいっぱいいます。逆に、そういった先生方に「スペシャル な歯周治療を行わなければ駄目だ!!」と要求する方が間違いだと思います。
     前置きが長くなりましたが、そういった専門のレベルからみていった場合、自分が持ちうるレベル以上の診療計画を立て、どうしようもなくなってしまうより は、確実に直せる方法を選択すべきです。それを着実にこなせるようになったならば、さらなるステップアップを目指した診療計画を立てるべきだと思います。

 こういったことは、あまりテキストに書かれない部分ですが、大切なことだと思います。どのような計画であれ、患者さんに十分説明をして、患者さんの希望も考慮した上で、同意を得て治療を行うことが大切です。これを、インフォームド・コンセントといいます。

 

治療計画の考え方

 学派により、多少異なりますが、ここでは前項の1歯ごとの診断を加味した治療計画の立案について述べたいと思います。

初期治療

歯周外科治療(最初の段階で立てますが、初期治療後の再評価で計画を修正します)

口腔機能回復治療

 狭い意味での歯周病の処置というよりは、口の中全体の処置として、治療計画を立案します。

 

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最終更新2013.1.7