2025年9月の映画  戻る
サッパルー!街を騒がす幽霊が元カノだった件 葬儀屋(第19回大阪アジアン映画祭)
2023年 タイ 125分
監督・脚本 ティティ・シーヌアン
キャスト チャーチャイ・チンナシリ(シアン)/ナルポン・ヤイイム(ジュート)
メモ 2025.9.28(日)テアトル梅田
あらすじ
学業を終え故郷に帰ってきたジュートは、弁護士への資格試験までの間父の手伝いをすることになった。家業は村で一軒だけの葬儀屋。
一方進学せず村に残ったシアンは彼女に振られ得度して僧になるが、その元カノが妊娠したまま自殺するという衝撃をへて還俗し彼女に会いたいと願っていた。
感想
タイのホラーコメディ。村に一軒しか葬儀屋がないもんで昨今は仏教だけやなくキリスト教、イスラム教も対応せなあかんねん。
この土着のアタフタした儀式がなんというか・・・不謹慎ながら面白い。
 
行きつけの美容院の店長兼オーナーは無宗教と公言し、通夜も葬式もいらない、焼き場でお坊さんも無用(ゼロ葬というらしい)、お骨も持って帰らんでええからお墓やお寺への納骨もどこかへの散骨も不要とひとり息子さんにゆーてあるらしい(8回くらい聞いた。アタシが密かに望んでいる海への散骨は『なんのロマンですか』とばっさり)。葬式仏教に大抵抗があるみたい(お金に苦労してはるからかなあ)。いちいち関係者に「父の意向ですから」と説明せなあかん息子さんも大変ちゃうやろか。と思ったり。
儀式やしこれも大切な文化なんちゃうかなあと思うねんけど。
 
この映画には様々なお葬式の儀式が現れ、残った人たちが「できるだけのことをしたい」とか区切りをつけるためのもんやねんな、と思う。
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リモノフ LIMONOV THE BALLAD
2025年 イタリア/フランス/スペイン 133分
監督 キリル・セレブレニコフ
原作 エマニュエル・キャレール『リモノフ』
キャスト ベン・ウィショー(「007 スカイフォール」のQ、「産婦人科医アダムの赤裸々日記」)
メモ 2025.9.18(木)大阪ステーションシティシネマ
感想
「インフル病みのペトロフ家」「チャイコフスキーの妻」のキリル・セレブレニコフ監督作品
1944年に生まれ2020年に亡くなったエドワルド・リモノフ(ペンネーム)という人の伝記、というより本人が言っているだけなので(たぶん)よくわからない前半生をセレブレニコフ監督がイマジネーションをたっぷり盛って映像化。ロシア人のリモノフを英国の俳優ベン・ウィショーが演じる。この俳優さんはドラマ「産婦人科医アダムの赤裸々日記」ではゲイのお医者さん役やったし、カミングアウトしてはったんちゃうかな。男同士の行為だと躊躇なく体と体をぶつけあえるのか。と思って映画を見る。
 
リモノフは1966年頃は(ウクライナ)ハルキウで工場労働者として働き、その後モスクワに移って詩人となり、1975年ベトナム戦争後のゴミが溢れる米国N.Y.に渡ってプータローしたり執事したり、そしてフランスに渡って作家となりソ連崩壊後祖国に帰りちょっと錦を飾り、エリツィン反対偉大なソビエトをもう一度の政治活動家となる(ソ連がイヤで米国に亡命したんちゃの)という時流に乗ってんだか乗ってないんだか、よくわからない人物。
「フルスタリョフ、車を!」で「ロシアって国は訳わからない」と思ったけど、訳わからないのは国だけやなかった。
 
映像は相変わらずあざやかで妄想と現実が入り交じり、ドアを開けると場面が変わり時代が移り、不思議の国のアリスみたいにどんどん変化していく。長回しが2回くらいあったかな。
「初春狸御殿」ではふすまを使って場面展開していたけど、西洋物なのでドア。このあざとい程の映像は分かれるやろうけど好み。
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寒いのが好き Some Like It Cold
第21回大阪アジアン映画祭 2025 (大阪・関西万博に合わせ3月やなく8月下旬から9月上旬に開催)
2025年 韓国 127分
監督 ホン・ソンウン
メモ 2025.9.4(木)中之島ABCホール
感想
映画を楽しみながらパワハラやセクハラや差別を「そういう時代やった」っていう人がいるけど、へえーそうなん、時代のせーなん。
戦争中で戦地にいかされたり殺したり殺されたり、色んなことを我慢したり見て見ぬふりしたんは「そういう時代やった」ってはわかるけど。
パンデミックはどっちなんかな とぼんやり思っていた。
映画上映後、韓国の監督さんとプロデューサーさんの舞台挨拶があり「国家人権委員会」の依頼で作成したって話をされた。なるほど。
といっても、コミカルなところもたくさんあって小難しくなく面白い。ユーモアは大事。
 
舞台挨拶後、質疑応答があり(おそらく業界の人であろう)男の人がふたり質問をされて、最初の人は
「主人公は失業するとか、結婚がうまくいかなくて『なるようになれー』になったけど、そういうのがなくてもこういう行動をとったと思われますか?」という質問に困りながらも監督さんとプロデューサーの人は「そう思います」と答えられていた。うーん、質問者の意図が掴めない。
パンデミックは第四次になっているし、狩る方もPTSDになっている人もいて世の中が倦んでいるというのが描かれた上で「ラクダの上に積まれる最後の藁の一本」は話を進めるのに必要と思うけど。
 
次の人の質問は「感染しても記憶を失ったり失わなかったり、理性が残ってたり残っていなかったりは何故?」で、監督さんは・・・ひとことで言うと「多様性」と答えられていた。
 
私が聞いてみたかったのは「吸血鬼映画やないのは何故ですか?」
これは自分で答えが出せる。吸血鬼やとコスチュームやらメイクやらにお金がかかる。空も飛ばなあかんし。次に500年以上も歴史がありひっそり身を隠していて、いまさら人類と派手な事を起こす必要がない。 そして発生地は武漢やらなんやらではなくトランシルヴァニアってわかってるんやし謎が少ない。しかも勝手に根絶する訳にはいかへんし。
 
何かをどこかに届けるってロードムービー韓国映画なんで「鯨とり(コレサニャン)」(1984)を思いだした。
最後はほぼ写さずに冷凍庫に住んでいるとわかる「必要かつ十分」な作りにセンスの良さを感じる。
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愛はステロイド LOVE LIES BLEEDING 愛は血を流す
2024年 英国/米国 104分 A24
監督 ローズ・グラス
キャスト クリステン・スチュワート(ルー「トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン 」)/ケイティ・オブライアン(ジャッキー)/エド・ハリス(ルーの父)/アンナ・バリシニコフ(デイジー)
メモ 2025.9.1(月)大阪ステーションシティシネマ
感想
土地は乾いて、空気は煮詰まったアメリカ、ニューメキシコ州の片田舎で息苦しく生きているルー。そこにベガスに向かう途中のジャッキーが現れる。時代は1989年 スマホはまだない。
邦題の『愛はステロイド』って・・・なんなん?と見る前は思っていた。見終わったら、この映画の愛はステロイドかもしれん と思う。暴力に勝つためには暴力しかない。