2025年8月のミステリ 戻る

HERE 
リチャード・マグワイア著
感想
映画「HERE 時を越えて」の原作コミックを読む、というか眺める。
定点から時の移り変わりを描くってのが独自と思ってたら、それだけやなく
映画『HERE』の感想に「時代が前後したり別フレームで見せるのは飽きさせない工夫で面白い。」なーんてわかった様な事を書いちゃったけど原作コミックがそうやねん(ぶるぶる)
この作品をコミックというくくりで呼んでいいのか?と思う。 様々な年代が複層しているので眺めているだけやなく、特定の年代を追っかけるのも面白い。温暖化による未来も描かれている。
1989年に「白黒6ページ、36コマ」が発表され、その後カラーの2000年版、2014年版単行本と刊行されているそうです。
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こぼれ落ちる欠片のために 
2024年 本田孝好著 集英社 347頁
あらすじ
「イージー・ケース」34歳の介護士が殺害される
「ノー・リプライ」25歳の美容師が殺害され、容疑者が横にいた
「ホワイト・ポートレイト」小学五年坊主が行方不明になる
の連作3話 凸凹コンビ警察物で映像化されるんちゃう作品
感想
初めて読む作家さん。作家生活30周年記念作品だそうです。
主人公の和泉光輝刑事の相棒になる瀬良朝陽巡査が当初、米澤穂信著「小市民シリーズ」の「小佐内ゆき」みたいに思えて。結局は無駄に超絶美人の割に内向的過ぎるのかしゃべらず感情表現もないだけで「小佐内ゆき」みたいなサイコパスやなかったんですけど。(アニメ版の「小市民シリーズ」を見ていると“互恵関係”というより小佐内ゆきの暴走をおさえるために小鳩常悟朗いる みたいに思える)
 
真相のそのまた真相とキャラ読みの3作品は、2作目の「ノー・リプライ」の容疑者の個性が一番印象深いんやけど、人物も物語もあんまりうまく描けていない様にも思えてもどかしい。小中の頃を思い返せば、こういう子がいたかもしれないな。映像化された時どんな役者さんがどんな演技をするのか興味がある。広末涼子とか斉藤由貴とか楽しみ。演技力がないとスカみたいになるかも。
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ミッキー7 反物質ブルース ANTIMATTER BLUES
2023年 エドワード・アシュトン著 大谷真弓訳 早川書房 471頁
あらすじ
難を逃れた使い捨て人間エクスペンダブルミッキー7にまたしても難題が降りかかる。
感想
ミッキー7の続編。
「ミッキー7」はワンマンアーミー(あれをワンマンと言っていいのであれば)やったけど、本作はまあロードオブザリングみたいにブツを捜して仲間と旅する話
・・・いや違うな。北米の西部開拓物語が近い。故郷で食い詰めた開拓団が先住民のひとりに道案内させて、他族の先住民が守っている「金鉱」を狙う みたいな。西やなくて南に進むんやけど。
ひとりがやられるシーンは流砂に飲み込まれるよう。
「金鉱」やなくて「先住民に預けた娘っ子(開拓団を救う大事な巫女なんかも)」を奪い返す かもしれん。
そうやとオセロみたいに白黒が反転する。物は「金鉱」でも「娘っ子」でもないんやけどね。
SFやけど北米の歴史ものとも思えてきて、先住民族同士の争いとそれを利用する開拓団の切迫した事情と言い訳を読んでいるような気もする。面白かったけど。
加えてSF「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の様なバディで、ローンレンジャーなん。
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チャーリー・ヘラーの復讐 THE AMATEUR
ロバート・リテル著 北村太郎訳 381頁 1981年
感想
映画「アマチュア」の原作本
殺された恋人の復讐譚、であるにもかかわらずスティーヴン・ハンターの「ベイジルの戦争」と似た軽い調子で書かれていた。
意外やったのが四十数年も前に書かれた原作と映画がかなり似てたこと。似てなかったら原作と言えるのかってのはあるけど。
恋人を失ったCIAの頭脳派分析官がにわか仕込みのアマチュア暗殺者になるってとこだけが同じなんやろなと思っていたら
一人目と二人目への復讐の方法が、映画では時代を経て道具が進化してたけどシチュエーションが同じであった。へー
が、大きな違いがひとつあって本作はロマンティックな味付けがしてある。
 
1981年に一度映画化されていたみたい。題名は「ザ・アマチュア」
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うしろにご用心! Watch Your Back!
ドナルド・E・ウェイストレイク著 木村二郎訳 511頁 2005年
あらすじ
嫌われ者の故買屋アーニーが持ってきた仕事は、大金持ちの主が長期留守の間にちょこっとお宝をいただく楽な仕事 のハズやったのに・・・
感想
ひさしぶりの泥棒「ドートマンダー」物。
陰気な男ドートマンダー、相棒の鼻の尖った陽気な男ケルプ、大大男のタイニー、車を転がすスタンの運がいいんやら悪いんやらの4人組。
に加えて、ちょっとかかわる新参者若造のジャドスン。コイツは結構機転が利く。
 
狙うお宝の持ち主のふとっちょプレストンは、頭がいいとうぬぼれているが離婚訴訟から逃げてカリブ海のリゾート地に身を隠している。
4回結婚と離婚を繰り返し(学ばないのであろうか)、いちいち結婚するのが弱点なのか、若くて美しいトロフィー妻をとっかえひっかえ欲しいというコレクター気質なのか。
とうとう懲りた今は金をちらつかせリゾート地の短いランデヴーを堪能している。富豪特有の変人でなかなか個性的。海パン一丁で逃げ回っていても臆するところがない。
 
計画に備え、ドートマンダー達が仕事の打ち合わせにいつもの酒場<OJバー&グリル>へ行ったところ、様子がおかしい。このままでは無くなるかも。
で、ゲン担ぎなのか、<OJ>の自分たちの居場所奥の部屋を取り戻すため一肌脱ごうとする。
 
という泥棒計画、プレストンの逃避行、<OJ>(の奥の部屋)奪回の三つが絡んだ危機感があるんやらないんやらのドタバタが読んでいてホント楽しい♪ 軽口が楽しい♪。
あー本を読むのが好きでほんま、よかったなあー
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スクイズ・プレー SQUEEZE PLAY
ポール・ベンジャミン著 田口俊樹訳 新潮文庫 380頁 1982年
あらすじ
大谷翔平選手みたいな不世出の野球選手だった元ダイリーガー、ニューヨークアメリカンズのジョージ・チャップマンから私立探偵マックス・クラインに電話があり、事務所にやってきた彼は何者かに命を狙われていると言う。
感想
作者のポール・ベンジャミンは、映画「スモーク」の原作者かつ脚本も書いたポール・オースターの別名で1982年にかかれた探偵もの。ポール・オースターって方は詩も書いてはったみたい。
物語には傲慢な権力者や老獪なマフィアが登場し、野球がからみ、ロマンスあり愛憎あり、父と息子の絆あり、探偵はヤメ検でボコボコにされるが流儀を貫く の正調ハードボイルド
探偵の軽口が格調高すぎるせいか、訳者の奮闘にもかかわらずよくわからないところもあるけれど、9歳の息子との野球観戦をはじめ人物や背景はさすがの描写でサクサク読める。
ネットのない時代は、足と固定電話と人脈と口で情報収集していたんやなというノスタルジックさも心地いい。
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エイレングラフ弁護士の事件簿 
ローレンス・ブロック著 田村義進訳 文集文庫 346頁
あらすじ
ローレンス・ブロックが1976年から書き続けた『刑事弁護士エイレングラフ』の事件簿12編。
いつもシュっとした身なりで詩をこよなく愛するエイレングラフには信条がある。それを”エイレングラフの推定”と名付けている。
アングロサクソン法の基本原理「推定無罪」(何びとも有罪が立証されるまでは無罪である)とは少し違っている。依頼人は無罪なので無罪が必ず証明される のである
感想
題名を「エレイン」と読み違えていて、レトロな時代にエレイン・グラフという名の当時珍しい女性弁護士が数々の難事件を解決する話と思ってたもんで、一番目の「エイレングラフの弁護」に驚く。 弁護士は男性やった。