『スノーマン』『風が吹くとき』を描かれた英国の絵本作家レイモンド・ブリッグズさんが両親のなれそめから亡くなるまでの43年間を
絵本化した『エセルとアーネスト ほんとうの物語』のアニメ化。103頁の本を94分のアニメにしてあるのでアニメの方がより詳しい。
(と、昨日から感想を書き始めたら、レイモンド・ブリッグズさんは8月9日88歳で亡くなられていた。合掌)
レイモンドは両親に孫を見せれなかったこともあってこの本を残されたのかもしれない。
エセルの声は
『秘密と嘘』のブレンダ・ブレシン。
お母さんのエセル(1895-1971)とお父さんのアーネスト(1900-1971)はふたりともロンドンの下町育ちだが、エセルは中流階級のメイドをしていたこともありロイヤルファミリーを敬い保守党支持者、一方アーネストは労働党の支持者。
性格もエセルは真面目で固い、アーネストはご陽気と正反対。
このお父さんがすごいねん。ミルクの配達で家族を養い、中古の家を買いローンを払い、中古を探してきてレンジも替え大工仕事で家を整えていく。
常に新聞を読みラジオを聞き情報収集にも余念がない。目端の利くタイプ。
お母さんは実直でカーテンを縫い、家具のカバーを作り毎日家を磨きあげている。ふたりが41年暮らした家も主役のひとり。
英国人は家をとっても大切にするらしい。
アーネストは両大戦間に青春期を過ごし従軍せずに済んだが、エセルは弟、アーネストは兄を第一次世界大戦で失っている。
ロンドン大空襲をしのぎ、ひとり息子を大きくし力を合わせて生き抜く。
英国版『この世界の片隅に』。
アーネストが防空壕やシェルターを手作りするのを見ていると『風が吹くとき』は庶民の両親がモデルと感じる。
笑ったのは、アポロ11号月着陸のニュースをアーネストが話すと、エセルがたずねる。
「月で何をするの?」 「散歩したり石をひろたり」 「海辺で遊ぶのと同じね」