2015年12月の映画  戻る


マイ・ファニー・レディ SHE'S FUNNY THAT WAY
2014年 93分 米国
監督 ピーター・ボグダノヴィッチ
脚本 ルイーズ・ストラットン/ピーター・ボグダノヴィッチ
撮影 ヤーロン・オーバック
編集 ニック・ムーア
音楽 エドワード・シェアマー
キャスト オーウェン・ウィルソン(舞台演出家アーノルド・アルバートソン)/イモージェン・プーツ(女優(元娼婦)イザベラ(イジー)・パターソン)/キャスリン・ハーン(女優・演出家の妻デルタ・シモンズ)/ウィル・フォーテ(脚本家ジョシュア(ジョシュ)・フリート)/リス・エヴァンス(男優セス・ギルバート)/ジェニファー・アニストン(口の悪いセラピスト・ジェーン・クレアモンド)/オースティン・ペンドルトン(判事ペンダーガスト)/シビル・シェパード(イジーの母親)/リチャード・ルイス(イジーの父親)/ジョージ・モーフォゲン(探偵、ジョシュの父)/イリアナ・ダグラス(女優イザベラのインタビュアー・ジュディ)/ デビ・メイザー(娼館のおかみヴィッキー)/ルーシー・パンチ(娼婦カンディ)/テイタム・オニール(ウェイトレス)/クエンティン・タランティーノ
メモ 2015.12.31(木) シネ・リーブス梅田
あらすじ
女優のイザベラはインタビューを受けている。自分が殿方のミューズから世界のミューズになった顛末を話す。
それはイジー(イザベラ)は天使か悪魔かという騒動であった。
ことの起こりは、イジーがホテルに呼ばれ気に入られた殿方から仕事を辞めることを条件に3万ドルプレゼントされた事。翌日女優志望のイジーがオーティションに行けば、プレゼントをくれた男が演出家だった。しかも主演女優デルタは演出家の妻。主演男優セスはデルタに横恋慕している。脚本家ジョシュはイジーが気になるし、結果ややこしいことになる。
感想
「ペーパー・ムーン」のピーター・ボグダノヴィッチ監督75歳によるエルンスト・ルビッチ監督の「小間使」へのオマージュ作品。「人々は公園でリスにナッツをあげて楽しんでいるが、ナッツにリスをあげて楽しんでもええんちゃうの」というコペルニクス的転回のセリフが核になっている。シネ・リーブス梅田ではリスのグッズを持っていくと千円で映画が見れる。
 
スクリューボールコメディを目指して滑ってはるが、それなりに楽しい♪。 老いらくの恋でイジーのストーカーに成り果てた判事が水のグラスを落とすシーンは絶品。探偵が腰を抜かすところもおかしい。じさまふたりがいいな。それと外国人のコールガール(ルーシー・パンチ)のかみ合わなさがおかしい。
 
イジー役のイモージェン・プーツっていう英国の女優さんはスカーレット・ヨハンソンにちょっと似ている。セス役のリス・エヴァンスって英国の役者さんは「エレメンタリーホームズ&ワトソン in NY」でマイクロフト・ホームズしていた人やったわ。
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ひつじ村の兄弟 HRUTAR RAMS
第68回カンヌ国際映画祭「ある視点部門グランプリ」
 
2015年 93分 アイスランド/デンマーク 長友紀裕(日本語字幕)
監督・脚本 グリームル・ハゥコーナルソン
撮影 ストゥルラ・ブラント・グロヴレン
キャスト シグルヅル・シグルヨンソン(弟グミー)/テオドール7・ユーリウソン(兄キディー)
メモ 2015.12.28(火) テアトル梅田
あらすじ
氷河と火山の国アイスランド。人口25万人に対してひつじは100万頭。面積は「北海道プラス四国」の大きさ。
隣同士に住みながら40年間口をきいていないグミーとキディーの兄弟。ふたりは毎日「アイスランディック」という純血家畜用ひつじの世話をしている。兄弟はひつじの出来を争うライバル。
ひつじのガチンコ品評会で兄キディーに負けたグミーは、兄のひつじのどこが優れてるんだとこっそり体をまさぐっていて、こいつ病気じゃないのと気づく。あわてふためいて自分の大事な雄ひつじを家に連れ帰り、バスタブでごしごし洗うグミー。あれはスクレイピー(狂牛病みたいな疫病)では?
兄には言えない。負けた腹いせと思われる。グミーは羊飼い仲間に疑惑を話し、獣医師たちが検査を始める。
検査の結果疫病にかかっているのは兄キディーのひつじだけではなかった。村の全頭のひつじの殺処分が決まる。ヤバイ状況。
兄弟は先祖代々守ってきた大切なアイスランドの純血ひつじを失う。兄は酒におぼれ乱心し「お前のせいだ」と弟をののしる。
「今年の冬は楽しみだな。お前と俺と犬だけだ」
感想
アイデンティティの話だと思う。自分が自分であるためのもの。命を顧みないほど大切なもの。
物理的には一番近いお隣さんやのに、心は銀河系のあっちとこっちほど離れている兄弟。でもほんまのところ一番分かり合える。価値観が同じ。根っこは一緒って言うのかな。
酔っぱらって外で眠ってしまった兄を、ショベルカーですくってそのまま町の救急病院まで運ぶのがおかしい。そこはかとないユーモアがある。
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恋人たち 
2014年 140分 日本
監督・脚本 橋口亮輔
撮影 上野彰吾
音楽 明星
出演 篠原篤(橋梁(キョウリョウ)の点検員・篠塚アツシ)/成嶋瞳子(パートの主婦・高橋瞳子)/池田良(弁護士・四ノ宮)/安藤玉恵(スナックの晴美)/黒田大輔(黒田大輔)/山中崇(公務員)/内田慈(離婚相談の女子アナ)/山中聡(弁護士の友人・サトシ)/リリー・フランキー(アツシの先輩)/木野花(瞳子の姑)/光石研(トリ屋の藤田)
メモ 2015.12.12(土) テアトル梅田
あらすじ
現代に生きる3人の男女を描く。「渚のシンドバット」 「ハッシュ!」の橋口亮輔監督作品。
橋げたのコンクリートの劣化を診断しているアツシは苦しんでいた。3年前に大切な妻を通りがかりに殺した犯人は心神耗弱とやらで刑務所に入らず死刑にもならず措置入院となる。税金で「病気」を直してもらうのだ。一方アツシは働けなくなり国民保険も滞納し医者にもかかれない。犯罪者は(気の毒な人だから)立ち直るのに手当されるのに、被害者側は「自分で立ち直れ」という理不尽な制度の国。
主婦瞳子はとりたてて不幸でもなく幸せでもない日々を送っている。会話のない無口な夫、神経質で愛想のない姑との3人暮らし。パート勤めの弁当屋で軽口をたたく同僚はいるが、家事をしてパートをしての味気ない日々の繰り返し。唯一の楽しみは雅子さまを見ること。ファンタジーに魅せられている。
弁護士の四ノ宮は人当たりはよいが、人を人とも思わない。四ノ宮は学生時代からの友人サトシが好きだ。サトシは家庭を持ち男の子もいる。彼の家庭とも気の置けない友人づきあいをしているはずだった。ある日四ノ宮は階段からつき落とされる。
感想
アツシにかける言葉がない・・・。彼が長い苦悩とお金をかけて弁護士から知らされたのは「この世はアンフェア」という事。 また不思議なのは犯人の父親が謝罪した事で賠償請求の裁判ができるかもって弁護士が言ったとかいう。謝らない方が加害者に得ってことなの? どいうこと?
 
所得は高中低と異なる階層に生きている3人。高所得者の四ノ宮にも悩みはあり、アイデンティティに係わるごく私的な問題で誰にも話することはできない。自分は弁護士でいろいろな人から話を聞かされるにもかかわらず。親友と思っていた男にはさらに言えない。ドン引きされる。といって彼は人間の幅を広げることもない。何か恨みも買っている。自分は苦しみを知っているにもかかわらず弁護士なのに人を救おうとしない。
 
困っている人に手を差し伸べるのが難しい。支えるのが何時まで続くかわからないし、不幸な人には近寄りたくない。損をしたくない。自分だけを守りたい心が蔓延。
 
3人の無名の俳優さんが成功している。自分の内と話をしていて、こちらにぐいぐい押してこない。主婦の瞳子さんはバタバタしていて無防備でちょっとコミカル。反面脇を固める人たちが濃い。
3人は少し関わっていて、アツシの同僚の人(黒田)が持ってくるお弁当が瞳子さんの弁当屋さんのお弁当やった。
「渚のシンドバット」と「ハッシュ!」しか見ていないけど、監督さんはより深く掘り下げてはるように思う。
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コードネーム U.N.C.L.E.
2014年 116分 英国
監督 ガイ・リッチー
撮影 ジョン・マシソン
編集 ジェームズ・ハーバート
音楽 ダニエル・ペンバートン
キャスト ヘンリー・カヴィル(ナポレオン・ソロ「マン・オブ・スティール」)/アーミー・ハマー(イリヤ・クリヤキン「ローン・レンジャー」)/アリシア・ヴィカンダー(テラー博士の娘ギャビー・テラー)/エリザベス・デビッキ(やり手の妻ヴィクトリア)/ルカ・カルバーニ(アレクサンダー)/ジャレッド・ハリス(サンダース)/ヒュー・グラント(ウェーバリー)/デヴィッド・ベッカム
メモ 2015.12.5(土) 大阪ステーションシティシネマ
あらすじ
1960年冷戦時代。天才科学者テラーが行方不明となり核分散の恐怖が現実になる。本来敵同士のKGBとCIAのスパイが、敵の敵は味方とばかり核を持つ共通の敵を探し当て奪還し、世界を救うミッションを命じられる。
今までいがみ合ってたのに、仲よく仕事せえって言うの? 宮仕えはつらい。
感想
TVドラマ「0011ナポレオン・ソロ」を英国の監督ガイ・リッチーが映画化。「0011ナポレオン・ソロ」は主人公ふたり軽口のユーモアがおもしろかった。「宇宙大作戦」と共に楽しみやったわ。
イリヤ・クリヤキン役やったデビット・マッカラムってあんなにごつかったかしらんと思いながらも、ああそういやスポック副艦長みたいに敵の首根っこを押さえて失神させてたわと思い出す。アーミー・ハマーって役者さんちょっと太目やね。バリバリ暴れてはりました。
「マン・オブ・スティール」でスーパーマン役やったヘンリー・カヴィルはちょっと古い レトロな正統派二枚目。見目麗しい。
食えない男のウェーバリー役ヒュー・グラントも次回に期待。
気取った少々イケズな英国人と武骨で頑丈なロシア人のバディムービー(相棒もの)。わくわくして気軽に楽しめる。
英国人がサンドイッチとワインをたしなんでいる後ろで、ロシア人が敵の銃弾からボートで必死に逃げ回っているシーンが最高。ああ、落ちた。
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ラスト・ナイツ LAST KNIGHTS
2014年 115分 米国
監督 紀里谷和明(きりやかずあき)
脚本 マイケル・コニーヴェス/ドーヴ・サッスマン
撮影 アントニオ・リエストラ
キャスト クライヴ・オーウェン(騎士ライデン)/アクセル・ヘニー(敵役の大臣モット)/モーガン・フリーマン(バルトーク卿)/クリフ・カーティス(ライデンの部下コルテス)/ペイマン・モアディ(皇帝)/伊原剛志(イト)/アン・ソンギ(重臣オーガスト)
メモ 2015.12.3(木) なんばパークスシネマ
あらすじ
騎士の時代。悪徳大臣モットは私腹を肥やし権力を握っていた。
賄賂を毅然と撥ねつけたバルトーク卿は、モットの奸計にはまり身を滅ぼす。
城は召し上げられ離散した騎士たちは雌伏し時を待つ。
感想
なんですか、伊原剛志は清水一角(一学)ですか、小林平八郎ですか。
国際的キャストで「CASSHERN」の紀里谷和明(きりやかずあき)監督が「赤穂浪士の討ち入り」を描く。加えて姫を助ける騎士でもある。
そこはダイバーシティ(多様性)の世界。 アン・ソンギさんもいてはる。
 
敵役の悪徳大臣モット(吉良上野介)がいい。家庭内DV男、愛猫をも殺すサディストの変態。
そして映像がきれい。暗闇の中、城壁の上をひた走る姿がかっこいい。
 
お薦め度が難しい。空気は冷たく美しい。好み。また監督さんが海外に打って出た姿にも敬意を表したい。一寸の虫にも五分の魂、妻を苦界に沈めてまでして志を遂げた「忠臣蔵」を海外に示すとともに、騎士もまたサムライで同じ魂を持っていること描いている。そして数々の俳優さんをまとめて作品を作り上げたマネジメント力も高い。一方すごく感動したというわけではなく、なんかこそばい感じもする。割とちんまりまとまっていて、ちんまりまとまった映画は好きやねんけどひたすら真面目でユーモアがないの。
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