2008年3月のミステリ 戻る

私の男
2007年 桜庭一樹著 文芸春秋 381頁
あらすじ
花は9歳の時から養父の腐野淳悟(くさりのじゅんご)とふたりで暮らしている。養父は優雅で退廃的な香りのする男だった。24歳になった花は、明日嫁に行く。お相手は「親がよう許したな」と思う、身分違いのええしのおぼっちゃん。
感想
言葉もない・・・・
ジェーン・カンピオン監督作品「ルイーズとケリー」のように、過去に遡っていくお話。「ルイーズとケリー」では親友ふたりが抱き合って喜ぶシーンで終わるが、「私の男」も”新しい朝”が来たきらきらしたシーンで終わる。東野圭吾の「秘密」(父と娘と妻)と「白夜行」(ふたりの道行き)が合わさったような話。「秘密」「白夜行」とは違い、一人称で語られるため、よりドロドロしている。「白夜行」のように、世間に刃向かうという事もない。花と淳悟は、あれだな、「連理の枝」だな。からまっている。新婚旅行先のフィジーの海を見て花が「バカみたいな海」というところで、いつかこの人は夫も子供も捨てて身をくらますのではないかという未来を暗示している。
 
さぼてんは、花と結婚する美郎が一番わからん。自分に何も要求せず重くならないから、花がいいのか? 腐野家はあれだけ怪しいのに? なんで? 軽くて要領が良く明るいこの人にも、闇の部分があるんかな。非の打ち所のないお嬢さんと結婚しないのは、父親に対する反抗なんかな。わからん。
お薦め度★★★★戻る