病気の師に代わりクラブの舞台に立ったマジシャンのコーキー(アンソニー・ホプキンス)。客を引きつける事ができず無視され、舞台で怒鳴り
散らしてしまった。そんな彼に師は苦しい息の下から言う「何か工夫するんだ。自分で考えな。」。
コーキーの工夫は腹話術だった。人形のファッツのお喋りで客の視線を集め、見られていない方の手でマジックの種をちょこ。大うけに入った彼
にTVの仕事まで来る。彼の特集を組むというのだ。TV局は万一の事を慮りコーキーの健康診断を要求する。ところがなぜかコーキーは拒否する。
エージェントのベンが説得するが首を縦には振らない。しまいに失踪。故郷に帰り廃屋となった実家を眺め、初恋の人ペグ(アン・マーグレット)を
訪ねる。湖のそばのペグのボート小屋を借りて静かに暮らし始めた。彼は10代の頃には打ち明けられなかった恋心を、人形のファッツの力を借りて
告白する。人妻のペグは夫デュークとの結婚はうまくいっていないとこちらも打ち明けるという告白大会。10代に戻ったふたりはデュークの出張中
をいい事に純な恋人同士に。そんな所に突如エージェントのベンが現れた。
コーキーとファッツがお喋りどころか言い合いまでしているのをベンは見てしまった。そして言う。
「いつからなんだ?」
感想
腹話術師ってこういう風になりかねない所があるらしいね。二重人格というか人形が人格をもちだして本家が支配されてしまう。以前海外のサス
ペンスドラマでもこの題材を見たことがあるな(どうやら「ミセス・コロンボ」やったみたい)。独り言もあぶないっていうね。 心の声を人形が代弁し、人形がダークな仕事し、そして元の人格を
脅す。それでも最後まで、たったひとりの友達なんだ。コーキーはファッツを選んだんやね。
長らく見たかった作品。余は満足じゃ。たぶん我孫子武丸の人形シリーズ(「人形はこたつで推理する」)はこの映画の影響を受けてると思うか
ら。映画マニアの我孫子武丸だからな。つまりー、あのほのぼのしたー、コメディタッチの推理小説でさえ、「殺戮の病」とかに通じる物がある。
映画は人形のファッツが不気味でね。目、まゆげ、口、耳がうごく時よりも、動かない時の方が怖い。
死体を湖に捨てに行くコーキーを窓から見張っているシーンなんか、とってもお奨め。
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コーキーの影がファッツになっている所もぞくっとするほど、
好み。ため息もれそう。
主演は「羊たちの沈黙」ハンニバル・レクター博士役アンソニー・ホプキンス。30代後半だったらしいがもっと若く見える。よるべない身を好
演。エージェントのベンはパージェス・メレディス。「ロッキー」のトレーナー役の人。エルンスト・ルビッチ監督の
「淑女超特急」ではピアニスト。
そして監督は
「雨の午後の降霊祭」のリチャード・アッテンボロー。 もっと若かったら自分で
演じたかったんちゃうかな。