2004年8月の映画  戻る


ビスマルク号を撃沈せよ! sink the Bismarck!

1960年 英国 97分 モノクロ
監督 ルイス・ギルバート(「善人は若死にする」「アルフィー」「007は二度死ぬ」「フレンズ ポールとミシェル」「暁の七人」)
脚本 エドマンド・H・ノース
原作 C・S・フォレスター ノンフィクション・ノヴェル『ビスマルク号最後の7日間』
出演 ケネス・モア(シェパード大佐)/ダナ・ウィンター(ディビス士官)/カール・モーナー(リンデマン艦長)/ローレンス・ネイスミス/ジェルリー・キーン/ケレル・ステパネック(リュッチェンス提督)
メモ 2004.8.29 レンタルDVD
あらすじ
第二次世界大戦初期1941年5月18日ライン演習(通商破壊作戦)のため母港ゴーテンハーフェンから戦艦「ビスマルク」と重巡洋艦「プリンツ・オイゲン」が出撃する。イギリス海軍省の作戦部はノルウェーとスェーデンの諜報からこの情報をキャッチした。不沈戦艦「「ビスマルク」は5万トンの排水量、38センチ連装砲4門(独逸の技術力により40センチ砲の威力があったらしい)、でかいのに29ノット(54キロ/1時間)というスピードもある怪物。戦艦大和級までは世界最大の巨艦であった。当時のイギリス海軍は地中海、ヨーロッパ沿岸でドイツ海軍に制海権を握られ海上輸送路を封鎖されていた。このままこの「ザ・ドイッチュランド」と呼ばれる怪物を大西洋に解き放てば島国イギリスは国家存亡の危機
 
地下60mにある海軍省作戦本部に就任したシェパード大佐(ケネス・モア)は「いい人いい人感じのいい人ではなく全身これ頭脳という人物」で選ばれた。作戦本部はシャツ姿の兵やら食べながら執務の士官というゆるんだ風紀。しかも前任者はディビス士官を紹介するにあたって「彼女に辞められたら戦争に負ける」などというのだ。「国家の命運がひとりの女にかかっているのか・・・」と言葉がでない海の男シェパード大佐。さっそくビシバシキリキリ働く男は22隻撃沈している「ビスマルク」の予想4コース(アイスランドの北からデンマーク沖まで)に本国艦隊のみならず、中東への護送艦船空母「ビクトリアス」、戦艦「レパレス」も投入する。ロンメル軍団がおお暴れしている砂漠への2万人の兵員輸送船団は丸腰で行く事になる。早朝5時10分アイスランド沖にあらわれたビスマルクに本国艦隊(北大西洋艦隊)の戦艦「フッド(Hood)」「プリンス・オブ・ウェールズ」に迎撃を命じる。「プリンス・オブ・ウェールズ」は砲塔作業中の民間人技術者を載せたままの緊急出動だった。しかし射程では勝負にならずイギリス最大の巡洋戦艦「フッド」は数分で撃沈されランスロット・ホランド中将戦死、1500名が海の底に・・・。生存者は3名。「プリンス・オブ・ウェールズ」も中破し「やばっ」と煙幕をはり尻に帆かけて逃げる。
 
チャーチル首相から「いかなる危険、代償もいとわない。手段はとわない。ビスマルクを撃沈せよ」との命がくだる。神の声である。「キング・ジョージ5世、巡洋艦アレスーザ、マンチェスター、バーミンガム、サフォーク、ノーフォーク、ロドニー、レナウン、シェーフィールド、空母アーク・ロイヤル」投入と西地中海を丸裸にして全艦隊をかきあつめる。一方ドイツ艦隊(たった2隻)の「プリンツ・オイゲン」は小破したためブレストに向かい戦列を離脱する。「ビスマルク」は裸の王様となった・・・・・。
 
「ビスマルク」は複葉機から左舷に魚雷を受けるが追撃するイギリス総艦隊から身をくらます。荒天のためなかなか飛行機が飛ばせない中執拗に追う「キング・ジョージ5世」が燃料補給のためフランスのブレヒトへ急ぐ「ビスマルク」を発見。魚雷をうけてで燃料漏れをおこしていたのだ。あと少しでドイツの制空域に入ってしまう。5月26日空母「アーク・ロイヤル」から第一次攻撃隊が発艦、空爆するもそれは友軍「シェーフィールド」であったというちょっとしたお笑い。その攻撃により新しい磁気雷管がものの役にたたなかったという事が判明し(海にぽっちゃんした瞬間に爆発)、まあ災い転じて福となったわけだ(しかし「シェーフィールド」は「このあほが」と言っていたよな)。空母「アーク・ロイヤル」から第二次攻撃隊が発艦する。ソードフィッシュ雷撃機の魚雷により「ビスマルク」は左舷中央部と右舷後部に被弾。舵とシャフトがやられ舵がきかなくなり操舵室も浸水し始める。「ビスマルク」のリンデマン艦長はダイバーをしずめ必死で復旧作業にあたるが速度は10ノットにおち、北上をはじめる。定針できないのだ。そこはイギリス艦隊のど真ん中だ。時代は戦艦から空母へと移っていく。
 
5月27日「ビスマルク」「ソレント」を撃沈するも戦艦「キング・ジョージ5世」、戦艦「ロドネイ」、重巡洋艦「ノーフォーク」「ドーセットシャー」との砲撃戦でよってたかっての集中砲火をあび兵を犠牲にして弾倉庫に水を入れ炎上を防ぐが、1時間で全砲塔がやられてしまう。最期は「ドーセットシャー」から放たれた4発の魚雷を受け、艦隊司令官ギュンター=リュッチェンス中将、艦長エルンスト=リンデマン大佐は艦とともに大西洋に沈む。陸軍とは違い海軍は多くの士官が艦と運命を共にする。2200名の乗員のうち生存者は115名であった。
感想
「眼下の敵」 「Uボート」 「戦艦シュペー号の最後」といいドイツ軍人が実にかっこいいのだ。哀愁おびた優しげなリンデマン大佐にほれそう。何故だろう何故かしら。負け戦とわかっていて戦いぬく悲壮な姿からかもしれない。
 
娘が中東への護送艦に看護婦として乗船するのを見送りに行きたいから当番を代わって欲しいという士官に「士官は私情をはさんではならない」とシェパード大佐は許可しない。水兵に「士官は時間も忘れて働いている」と言わす所に「伍長上がりごときに負けない」というイギリスの誇りがかいまみえる。
おすすめ度★★★★1/2
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雨の午後の降霊祭 Seance on a wet afternoon

1964年 英国 115分
監督・脚本 ブライアン・フォーブス
音楽 ジョン・バリー(「真夜中のカーボーイ」)
出演 キム・スタンリー(マイラ「女優フランシス」)/リチャード・アッテンボロー(ビリー)/ナネット・ニューマン(ミセス・クライトン/フォーブス監督夫人)
メモ 2004.8.13 DVD
あらすじ&感想<地雷あり
「雨の午後の降霊術」の映画化。気弱で優柔不断の夫役リチャード・アッテンボローは製作も兼ねている。
霊媒師のマイラ・サヴェージは今はパッとしないが自分の霊力を世に認めさせるため大胆な計画をたてる。富豪の娘アマンダ・クレイトンを誘拐し、身も世も無いほど取り乱している 両親に娘の居場所を暗示して脚光を浴びるというものだ。いわゆるマッチポンプってヤツですな。正気とは思えないこのプランを夫ビリーのお尻をたたいて実行さ せる。妻を不憫に思い引きずられているビリーはマイラが早く神に召される事を願っている。古いモノクロミステリって大大好きなんだけれど、この映画はビリーの乗るサイドカーがすごくいいの。一見の価値あり。あんなボックスになっているサイドカーって初めて見た。お金はあまりないけれどものを大事にしているビリーの性質(たち)がよくわかる。ここから原作とはびみょーに変ってくる。そしてここから平気でねたばれの領域に入る。
 
 
 
 
原作では最期にそのぱっとしなかった霊力が降霊会で突如強く働きアマンダが降霊して皮肉にもみずから告白した形になり、お縄になるっていう展開だったの。このどんでん返しはすばらしいよ。カルトっぽくてこわいんだ。
映画はマイラとビリーの夫婦はアーサーという男の子を幼くして亡くしていてね。マイラにはその息子が寂しくないようにかわいい彼女をプレゼントしたいという夫ビリーも知らない真の動機があったの。これまた恐いんだ。子供を亡くした夫婦のせつせつとした心情がかなしい。ほんのちょっと泣く。それなのに同じ思いを誘拐したアマンダ の両親クレイトン夫妻にさせている事に一顧だにしないマイラの鬼子母神のような母性の狂気。マイラは息子アーサーは子供の頃に亡くしたと思っているけれど、それは妄想であり死産で一度も見たことがない。でも彼女はアーサーの霊と交感している様でもある・・・・・・降霊の最中マイラは「(アーサーは)彼女(アマンダ)を木の下で待っている。」と言うん。顔を見られたビリーは森の中の木の下にアマンダを横たえてきている。ローソクの火が揺れる。「呪怨」よりも数万倍好み。
おすすめ度★★★★★
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ふくろう

2003年 日本 119分
監督・脚本 新藤兼人
撮影 三宅義行/林雅彦
音楽 林光
出演 大竹しのぶ(ユミコ)/伊藤歩(エミコ)/木場勝巳(ダム工事1)/六平直政(電気屋1)/田口トモロヲ(水道屋)/柄本明(ダム工事2)/魁三太郎(電気屋2)/ 原田大二郎(ダム工事監督)/池内万作(巡査部長)/蟹江一平(公務員)
メモ 2004.8.12 OS劇場CAP
あらすじ
1980年ごろの日本。東北の山奥の開拓村にふたりの女ユミコ37才とエミコ17才がしぶとく生きていた。木の根っこやらねずみやらを食っている。水道も電気も止められ 文明とはかけ離れたところにいるふたり。ユミコは3才の時に両親と共に満州から引き揚げて来て一文なしでこの村に入植したのだ。しかしこの山奥の土地はクソであり、どんな にがんばっても不毛の土地であった。20家あった開拓民は夜逃げしたり一家心中したりで残ったのはユミコとエミコのふたりだけ。夫は出稼ぎに行ったまま蒸発してしまった。 2人はここから脱出するため一大計画を立てる。
感想
新藤兼人監督91歳の作品。乙羽信子さんが生前インタビューで友が亡くなった家を訪ねてみればだんなさんが意気消沈、落胆、生きる屍様で「さびしいです」と言われていた のに遭遇して「ワタシが先に逝くことはできないって思ったんです。」と力いっぱい言われてましたが、新藤兼人監督はお元気ですよー。
太平洋戦争末期関東軍がイノ一番に逃げ出し満州開拓民はおいてきぼり。棄民。満州からの引揚者の作家・澤地久枝さんが「国家を信じてはいけない。国あっての 民ではない」といわれてましたが、じゃどこに住めばいいの? と思うもんの、新藤監督の「生あるうちに残したい事」もわかる、かな。日本の食糧自給率の低さときたら。前半は国家の 小手先の男達の「死にざま」競演がおもしろい。「マダムと泥棒」の様。「俺の人生順風満帆」と笑う水道屋(田口トモロヲ)に「暗雲たちこめているかもね」というユミコ(大竹しのぶ)のブラック さにクスクス笑った。舞台劇みたい。ただ、後半計画がトチ狂っていくところで段々こちとらさめて来て。もたもたしている感じ。ラスト破れた茅葺(かやぶき)屋根の穴から夕立がザーと 降ってくるところのあまりにも明らさまなメタファー・暗喩(国語的におかしい)にちょっと笑った。監督、女の人が観音様に見えてきているんじゃなかろか。
おすすめ度★★★1/2
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ドット・ジ・アイ dot the i

2003年 イギリス=スペイン 92分
監督・脚本 マシュー・パークヒル
脚本 アルヴィン・サージェント
撮影 アンフォンソ・ベアト
音楽 ジャヴィア・ナヴァレテ
日本語字幕 森泉佳世子
出演 ガリア・ガルシア・ベルナル(キット)/ナタリア・ヴェルベケ(カルメン)/ジェームズ・ダーシー(バーナビー) /トム・ハーディ(トム)/チャーリィ・コックス(テオ)
メモ 2004.8.10 テアトル梅田
あらすじ
スペイン女のカルメンには熱い血が流れている。母国で男とトラブりイギリスに逃げてきた。その彼女を優しく ささえているのは英国紳士のバーナビー。金のでっかい匙(さじ)をくわえて生まれてきた男だ。知り合い同棲して6ヶ月、バーナビーがカルメンに結婚を申し込む。口うるさい血縁もいなさそうだし。 セックスはいまいちのような気もするが結婚するかとカルメンが「ヘン・ナイト(男のバチュラー・パーティの女性版らしい)」を開いて見れば キスがすんごくうまい男が現れたのよ。ぐわ〜ん。体は新しい男キットにひかれる。キットはブラジルのリオから 英国人の父親をたよってきたらしい。どっちの男をとればいいやら。そらもちろんバーナビーやねんけど。心と体がばらばらになりそ・・・・。
感想
なんというか、、、、、映画って結局監督の見せたい物を観客は見るわけなんやね。なんちゅうか、、、、、映画って「血を吸うカメラ」 でもあったように,結局覗き見なんか。。。。。というのを逆手にとったひっじょーに意欲的な作品だった。