1999年5月のミステリ

殺意のシーズン TOURIST SEASON
カール・ハイアセン著 1986年作 山本光伸訳
あらすじ
真っ赤なサムソナイトがプカプカ浮いているのを、海遊びをしていた少年たちが見つける。お宝が入っているのかとこじ開けると、今朝から行方がわからず大騒ぎになっていた大マイアミ商工会議所会頭B・D・”スパーキー”ハーパーが中に収まっていた。同じ頃、電気クラゲに刺された観光客もまた、不審な救助隊員に連れ去られたまま帰ってこない事件が発生していた。
感想
これってもしかしたら”中年の危機”の話かもしれない。って違うか(^^)
まあこれといって落ち度もないごくフツーの観光客やら、老後を平和にフロリダで過ごしている老婦人やらを、「大儀のために」「公正な試合」で血祭りにあげるというエキセントリックな内容を、悪びれないあっけらかんとしたタッチで描き皮肉なユーモアをてんこ盛りつっこんだ話。爆発も3回あるし、ハデで面白い。毒気も多い。アル・ガルシア巡査部長の出番が
「大魚の一撃」より多く、ここんとこ◎。
老婦人とワニのパブロフとのブリッジ対決も読みたかったな(笑)。
おすすめ度★★★★1/2
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鹿の死んだ夜 Blood Innocents
トマス・H・クック著 1980年作 染田屋茂
あらすじ
ジョン・リアダン54才、ニューヨーク市警の刑事。2週間前に妻を癌でなくした。仕事に戻った彼を待っていたのは、子供動物園で惨殺された鹿二頭の捜査。大物が寄贈した鹿という事で最優先事件となったのだ。優秀な捜査官のカンがリアダンに囁く「鹿だけでは終わらない」。
感想
ちょっと失敗しました。早く読みとばし過ぎました。じっくり読むべきだった。
「犯人像」といい、「上司との確執」といい、刑事物ではよくあるパターンなのですが、好きなタイプの小説です。
習作なのかな、もうちょっと書き込まれていてもいいのでは?と思うモノ足らない部分もありますが、
  大都会が夜のジャングルのように感じられる”孤独”が、いい。
おすすめ度★★★1/2
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ミス・ブランディッシの蘭 No Orchids for Miss Blandish
ジェームズ・ハドリー・チェイス著 1938年作 井上一夫訳<名訳と思います。 
あらすじ
牛肉王ブランディッシの娘が誘拐される。
感想
「本格推理王国のイギリスにハードボイルド派の誕生を告げた」本書は、60年前の作品とは思えない。残酷で後味の悪い物語ですが、やはり傑作でした。。
短いセンテンスをバッバ、バッバと叩きつけるテンポの良さ、殺し屋スリムは気味が悪く、そして哀しい。その悪役に比べ探偵はクラシックというか類型的。
この小説全体を包んでいる雰囲気は、「昼間のシーンも夜の闇のように感じとれる」と表現すればいいか・・・。
映画化作品は、ロバート・アルドリッチ監督「傷だらけの挽歌」(1971)。これもまた出来がいいらしいです。見てません。見たいです。
おすすめ度★★★★
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ボクの町(ミス外)
乃南アサ著 1999年 
あらすじ
「俺ってさあ、女の子大好きだしぃ、苦労したくないしぃ、毎日な〜んとなく楽しく暮らしていけりゃそれでいいの。」ってなお気楽さで大学4年を迎え就職活動ひとつするわけでもない高木聖大は、「ついて行けない」と彼女に愛想をつかされ、ついにポイされてしまった。「俺だってやる気になりゃあ」と彼女を見返すつもりのはずみで警察官募集に応募してしまう。警察学校で半年過ごした後、今日から4ヶ月の実地研修がはじまる。
感想
耳にはピアスの穴、警察手帳には彼女とのツーショットのプリクラシールがはってあるのが見つかり上司からは大目玉を喰うというイマドキの軽〜い男の子が、4ヶ月の研修中自分自身もそれなりに苦労し、回りはその百倍も苦労するという成長物語。なかなか面白い(^^)。

警察官の採用って大変だそうです。なにしろ拳銃もたせるんやから。警察幹部は頭が痛いそうです。この本を読んでいて感じた事は、「警察官って見習い時代に、手取り足取りビシビシ鍛えるんやなあ」って事。みんなが同じ考え方、行動、住民サービスをする必要があるからなんですね。恐らく対極にあるのが教師ではないかと思う。教育論をぶちかますつもりは毛頭ありませんが、先生にも見習い時代は必要なんではなかろか。若い先生に問題があると言っているわけではありません。急速に高齢化が進む中、若い先生はこき使われてはります。ただ、学校出たての先生がクラスをまとめきれず、あげくに学級崩壊し、教頭先生や主任の先生のサポートでなんとか一年越せたものの、自分に自信を無くし教職を去るっていうのを目にしているから。気の毒でした。
おすすめ度★★★1/2
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図書館の親子
ジェフ・アボット 著 1996年 ミステリアス・プレス 佐藤耕士訳
あらすじ
ハリケーンが町を襲った時、12才のジョーダンと友達5人は親に黙って肝試しに森の中にいた。竜巻に追われて逃げまどったあげく、少女の死体を発見する。飛来したなにかで頭を打ったらしい。
20年後、生まれ故郷に戻って図書館の館長をしているジョーダンの元に、6年前に失踪した姉の夫トロイが現れる。ロデオで大怪我をして車椅子に乗っている。リハビリのために帰ってきたのだ。
感想
「図書館の死体」、「図書館の美女」に続くシリーズ第三弾。
「ペイトンプレイス物語」のようになってきた。
主人公ジョーダン・ポティートの姉アーリーンの失踪した夫って、ジョーダンの幼なじみで親友だったって話、1作目からあったっけ? これって話が膨らんできたっていうのかしらん(笑)。
テキサスのちいちゃな田舎町の大きな秘密のお話。第2作は出生の秘密ってヤツだったし。今回は「スリーピングマーダー」ぷらす「姉の夫が失踪したわけ」が明らかにされます。しかし、今回の秘密はこのネタで来たか・・。
毎年5月に読んでる。めっちゃ面白いって訳でもないけれど読んでしまうのがシリーズ物の魅力ですね。
おすすめ度★★★
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