1999年1月のミステリ

脚本家はしんどい MOVIE

パーネル・ホール著 ハヤカワ文庫 1998年 田中一江訳
あらすじ
《運命の法廷》と題する法廷ミステリの脚本を敏腕若手プロデューサーのシドニー・ガーフェロウに認められ、契約を取り交わしたスタンリーは天にも昇る心持ち。
ガーフェロウが言う
 「ブルース・リーとかジャン・クロード・ヴァン・ダムのレンタルビデオを見ておいてくれ」
 「れれ??」
 「若くて巨乳の美女を4、5人出してくれ」
 「れれ??法廷物に?」
 「なにいっているんだ?客を呼ぼうと思ったらそんなんじゃダメさ」
というわけでスタンリーは《カラテ・マスター 復讐のマンハッタン》の脚本を書くハメとあいなった。
感想
”控えめ探偵”(というかぼやき探偵)スタンリー・ヘイスティングシリーズ10作目。
好きで、これで7作品読んでいます。当たりはずれが大きいシリーズ物ですが、この作品は当たりの方。
なにしろ、スタンリーが書いた初脚本(実は2作目)の映画撮影現場が事件現場というのが嬉しい。
今回思ったのですがスタンリーは西澤保彦「チョーモンイン・シリーズ」の主人公・保科匡緒(ほしなまさお)とキャラが似ています。
おすすめ度:「映画物」なのでおまけ★★★1/2
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ミステリー作家90人のマイ・ベストミステリー映画

テレパル編集部編 小学館文庫 1999年
感想
がんばっているつもりでも(別にがんばらなくてもいいんですけど)まだまだまだまだ知らない未見のミステリ映画が多いです。エレン・バーキンとガブリエル・バーンの「シエスタ」は見なくては。その他色々な映画があって、このスカスカ頭にたたき込んでTVで放映するのをみのがすなっ!ってそんなにがんばらなくてもいいんですけどね。でも見たい・・・・

黒川博行氏は「ファーゴ」「トゥルー・ロマンス」「羊たちの沈黙」の3本をあげてはりました。わーいわーい好みがいっしょだあ。
東野圭吾氏は「アマデウス」「薔薇の名前」「レッド・オクトーバーを追え!」わーこれも同じ、うれちい(^^)。
ポランスキー監督の「テナント」は、小池真理子さんと板東真砂子さんがあげてはりました。う〜んなるほどねぇ。
西澤保彦氏は、「恋はデジャ・ブ」「3人のゴースト」「ピュア・ラック」の3本。「ピュア・ラック」ねぇ。へぇ〜。さぼてんはお気に入りのマーティン・ショート(「サボテンブラザーズ」)が主演なので見たことある。この人ミーハーで初心者のふりしてごっつ個性的よねえ。

「悪を呼ぶ少年」をあげている人も数人。小学生の頃みて訓練すれば本当にあんな事ができるのかと半分本気で思った事があるの。
「緑は危険」のクリスチアナ・ブランド原作「青の恐怖」他見たいのに未見の3本をあげている山口雅也氏。やなヤツー(笑)。アンソニー・ポプキンスが腹話術師の「マジック」とか見たいなあ〜〜〜。 「冬の嵐」もありました(^^)。
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幻惑教室

西澤保彦著 講談社ノベルズ 1998年
あらすじ
ロリコンミステリ チョーモンイン<超能力者問題秘密対策委員会>シリーズ長編1作目。 「実況中死」は長編2作目。
新年会にワンマン社長宅におよばれした若手社員4名、何故か社長宅からでれなくなってしまう。その異常事態の最中、殺人事件が発生。犯人は誰?動機は何?・・・・・そして何故社長宅からでれなかったのか?ってのは超能力のせいです。
感想
超能力の仕掛けが複雑になってきてます。でも面白かった。

謎よりも「何故に男の幼児性について自虐的な感想が延々と述べられるのか」というのが気になって。作者が書く所の「男女問題に関する議論の自家中毒状態」はどうしてなんかな。
作者の分身のような主人公を「美人とめっちゃかわいい女の子の両方に想われてお前だけえーよなあ」と読者から妬まれるのを防ぐ防波堤か
それとも、「動機に説得力をもたせるため」なのか
単に「おもしろい」から書いているのか
本音のわからない人です。「なんか意味があるんとちゃうか」とむいてもむいても何もでてこないタマネギみたいなタマネギマン(^^)。

なかなか「人格転移の殺人」「七回死んだ男」を越えるのは難しいですね。
おすすめ度:★★★1/2
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ドラゴン・ティアーズ

ディーン・R・クーンツ著 新潮文庫 1998年
あらすじ
サンフランシスコの警察官、ハリーとコニーは得体のしれない化け物のような浮浪者に襲われる。「お前の命は明日の朝までだ」という言葉を残した怪物に「チクタクマン」という真面目なのか、不真面目なのかわからん名前をつけたふたりは化け物の正体を探る。
感想
面白くない事はないのですが、これは映像の方が受け入れやすいです。
上巻は話がもどかしくてなかなか読み進めませんでした。下巻はいっき読み。
何故にハリーが狙われる事になったのかっていう無差別にみえながらそうではない犯人側の動機は、よくできてました、◎。
おすすめ度:★★1/2
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バルーン・タウンの殺人

松尾由美著 ハヤカワ文庫 1994年作 351頁
あらすじ
近未来の日本では、受精後の胚はAU(人工子宮)で育てられ女性は妊娠、出産から解放されていた。しかし一部の女性達から「赤ちゃんをお腹で育てたい」という要求があり、東京都は第七特別区を妊娠・出産を希望する女性達の居住区とした。人呼んで「バルーン・タウン」
第七特別区の堀のすぐ外で殺人事件が発生。犯人は第七区に逃げ込み、目撃者の証言「まんまるな感じ」からも、つまりいわゆる妊婦らしい。
同性だからという理由だけで東京都警の江田茉莉菜刑事が捜査のためバルーン・タウンに派遣される。偶然大学の先輩・暮林美央がシングル・マザーになるべく滞在中であった。暮林美央の弟分・有明夏乃も数ヶ月遅れの妊娠中でバルーン・タウンに住んでいる。
感想
言うことはないです。圧倒されました。面白い。登場人物の半数以上が妊婦という異色SFユーモアミステリ作品集。産科の待合室のノリそのまま。

シャーロック・ホームズのパロディ物「亀腹同盟」が面白い。「踊る妊婦人形」は笑えます。

美央の相手の事が謎で、弟分の夏乃が言う「でも、そんな人が本当にいたのかって思いたくなりますよ。ああして動かぬ証拠がない限り。時々動きますけど」(笑)
おすすめ度:★★★★
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