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 ヒガンバナ、別名の曼珠沙華(まんじゅしゃげ)は梵語で赤い花を意味する。鮮やかな赤色の六弁花を放射状に開き、花弁は外側へ著しく反り返る。長い六本のおしべと一本のめしべがあるが結実しない。地下の鱗形が伸びることによって増え、鱗形から40cm位の花茎の先端に赤色の花を数個輪状につける。葉は細長く、平たい線形で開花期には枯れて無く、花の後に葉が出て冬を越すことから「ハミズハナミズ(葉見ず、花見ず)」とも呼ぶ。
 秋の彼岸頃に咲き始めるためにこの名がある。鱗茎にはリコリン(注)
という有毒物質が含まれるが水でさらせば流失し、 良質のデンプンが得られ、飢饉の際に飢えを凌ぐ救荒植物として植えられた歴史をもつ。また、このデンプンで作った糊は虫に食われないため、屏風や襖の下張りに使われていた。
 田圃の畦道などに群生している姿を見ると、本当に秋が来たという気分になる。お墓のそばにも生えるので、不吉な印象を持つ人々もいるが、モグラやネズミの被害から稲を守るためともいわれる。また、墓地に多いのは土葬の墓を野獣から守るためといわれている。
 ヒガンバナは別名が多く、先のマンジュシャゲのほかに、
ユウレイバナ、シビトバナ、ジゴクバナ、ドクバナなど不気味な呼び名が多い。幼い頃、真っ赤なヒガンバナを家に持って帰ったら、「カジバナを家に入れてはいけない」といって怒られた覚えがある。大きな赤い冠を何故このような細い茎で支えられるのだろうと驚愕し、この姿をフィルムに残したく何日か撮影に通ったこともある。

 山口百恵さんの「曼珠沙華」は狂おしく恋する女を曼珠沙華の赤に譬えているが、ヒガンバナの赤は現世から離れたところに身をおきそうな危険性を持っているのだろうか。ところで、この歌の中では「マンジュ−シャカ」となっているが、作詞家の阿木燿子さんの処ではヒガンバナをこのように呼ぶのでしょうか。「ゲ」と濁るより「カ」としたほうが言葉の響きはいいですが。

彼岸花

滋賀県内でのヒガンバナ群生地
 −大津市伊香立地区の田圃の畦道
 −大津市田上地区の田圃の畦道
   宮崎康彦氏の「誰も行かない日本一の風景」(サライ、1992年12月発行、小学館)にも紹介されている。田上地区は畦道のいたる
   ところで彼岸花が見られ生育密度が高いようだ。
彼岸花の赤と稲穂の黄金色とが対比する景色の出会いに驚く。  
 −甲賀路のヒガンバナ 
   JR草津線貴生川駅から油日駅にいたる甲賀路。JR車窓からでもヒガンバナの群落を見る。
 
−愛知川町八幡神社の境内
 −山東町三島池周りの公園
   ここは木々が多く、木の陰をうまく利用すると印象ある写真が撮れる。
 −浅井町素戔嗚命(すさのお)神社の参道沿い
 −船岡山周辺(八日市市)万葉集相聞歌の舞台「蒲生野」に群生する。

(注)リコリンはヒガンバナ科アルカロイドの一つ。
 アルカロイド 主に高等植物体中に存在する、窒素を含む複雑な塩基性有機化合物の総称。ニコチン・モルヒネ・コカイン・キ ニー
 ネ・カフェイン・エフェドリン・クラーレなど多数のものが知られている。植物体中では多く酸と結合して塩を形成。少量 で、毒作
 用や感覚異常など特殊な薬理作用を呈し、毒性を持つ。類塩基。植物塩基。 (『広辞苑第五版』)

山東町三島池
安土町沙々木神社境内
山東町三島池
愛知川町八幡神社境内
浅井町素戔嗚神社参道沿い