『櫻守』(水上勉)
「日本に古い桜は多いけんども、海津の桜ほど立派なもんはないわ。あすこの桜は、天然記念物でもないし、役人
さんも、学者さんも、知らん桜や。村の共同墓地に、ひっそりかくれてる。けど、村の人らが枝一本折らずに、大
事に守ってきてはる。墓場やさかい、人の魂が守ってンのやな。わかるか。今の世は、舞子の桜みたいに、ドライ
ブイン作るのに邪魔になるちゅうて、どんどん伐られるのがまあ風潮や。けど、同じ近江でも、海津の桜はちごう
てる。あすこは、村の人らの眠ってるとこや。みんな、桜の下で眠ってはる。」
大鳥神社(甲賀町鳥居野)平安初期に建立されたとされ、祭神は須佐男命。七月に行なわれる疫病除けの神事、大原祇園で知られる。日が暮れるのを待って参道の桜にカメラを向けた。
照光寺(日野町内池)の蓮如桜 本堂前にある八重桜は、鎌倉時代、時の執権北条時頼がその壮麗さに感動し、歌を詠った。蓮如伝説の桜である。
満開の「清水の桜」
高島郡マキノ町海津には高さ十六メートル、胸高周囲六.四メートル、推定樹齢三百年を越える
桜の巨木。 「清水の桜」と呼ばれ、樹種はエドヒガン(アズマヒガン)で、滋賀県の自然記念物 に指定されている。加賀・前田藩の歴代藩主が参勤交代の際、余りの美しさゆえに何度もこの桜
を振り返ったところから「見返りの桜」とも呼ばれている。 |