書店日録

★★★★★★★★★【新参古本屋日記】――――3.★★★★★★★★
 
 ●ますだあーと書店開店二ヶ月目の現状報告など。
 
 開店から2ヶ月がたった。母屋である富士見堂商店のサイトはともかく、
古本屋ますだあーと書店の方は相変わらずだ。一冊も本の注文がない。
 これを残念ながらと呼ぶべきか、情けない、恥ずかしいことに、と形容
すべきか迷うところだが、事実なので隠しても見栄を張ってもしょうがない。
 知人から予約のような形で“注文”もないことはないが、自分としては
このサイトを見た、見ず知らずの人がお客として買ってくれたのを初売り上
げの日、及びお客様第一号と考えているので。まあ、どちらにせよ、一冊も
一円も売れていないのに変わりはない。本当の店なら3ヶ月目でそろそろ
店じまいの準備に入る頃だろうが、ネット商店はその点、気軽なものである。
 まあ詩人でも画家にしろ役者にしろ、その本業でメシが食える人などほんの
一握りだというのが多くの“現実”だと考えた場合、1冊も本が売れなくて
古本屋を名乗ったって、職業詐称ではないだろうし、そのことでやましさは
ない。何しろ古書店業の許可だって都からきちんと受けているのだから。
 8月は、出かけることが多く、落ち着いて本の入力があまり進まなかったが、
秋になったら地道に冊数を増やして、コツコツこの商売を続けていけばいつか
そのうち気まぐれな人がふらっと店に入ってきて買ってくれることもあるだろう
と夢見つつ焦らずあきらめずやっていこうと今改めて思っている。何しろ店に
出せる本だって現在の目録の5倍以上は軽くあるのだから(それが売れるか
どうかはともかくも)。

 正直に言うと、以前も書いたことだが、多少の期待もしてなくはなかった
ので、失望というか、焦りも感じたこともあったけれど、今はまあ、こうした
ものだと考えてようやく泰然自若な気持ちでいられるようになった。
 そもそも現代において本は売れないものであり、その状況は昨今の「誰が
本を殺すのか」という出版不況に如実に現れているわけで、古本屋業界だけ
が免れるはずもなく、まして新刊書店に比べ客の選択肢が狭い分、よりワリの
悪い位置にあるのは間違いない。まあ、その分、工夫の余地もあり、店として
の個性やセンスが大きく左右されるわけでやりがいがなくはない。
 北尾堂さんやそのお知り合いの“有名”ネット古書店はどうだか知らないが
他の最近新規参入した店のサイトを覗いて、店主の日記とかコラムを読んで
みると、どこも本が売れていないぼやきが書き連ねてある。始めたはずなのに
中には一ヶ月以上も更新が止まったままの店もある。どこもほとんど客が来なく、
売れるとしたら、ネットオークションとか、EasySeekを通してのみといった
有様のようでお客がそのサイトを訪れてくれて肝心要の目録から本が売れる
ということはほとんどないらしい。
 まあ、だから仕方ない、これでいいのだと思ったらオシマイで何とか対策を考え
なければならない。それには何よりもこの書店、いや、この富士見堂のサイトに
訪問客がもっとアクセスしてもらうことだ。だがいくつかの問題がある。
 
何人かのメルマガ読者の方から、

 ★冨士見堂を検索サイト(google、yahooなど)で検索すると
  ジオシティ店の方はひっかかるのですが本店がひっかかりません。
  *
  検索サイトにかかる何かコツがあるのだと思いますが...
  けっこう色々なキーワードをかけて検索したのに
  まったくひっかからなかったので
  検索基準がどういうことになっているのか...■
                 
      ――――というような内容の問い合わせのメールを頂いた。

 実は、開店当初から上記の大手の検索サイトに申請登録はしたはずなのだ。
だが、何が原因か、未だいっこうに自ら検索しても富士見堂もますだあーとも
全然検索で出てこない。何年も前にサイトを立ち上げた人の話だと一週間か
そこらですぐ検索したら出てきたと言う人もいる反面、最近サイトを開設した
人によると、3ヶ月以上経って、すっかりあきらめ忘れた頃、ふと検索して
みたら出てきたと言う。一体どうなっているのかわからない。まあ、時間をみて
再度申請作業は随時続けていくこととして、まずできることは何だろう。
その答えは、上記のメールをくれた読者からの別な手紙にあった。その一部を
勝手ながら転載させてもらう。多大感謝!

 ★富士見堂は本屋ではなく増田さんやまわりのお友達の方々の
  いろいろな思いが集まっているサイトだと思います。

  本屋としてというよりはサイト全体で考えて
  関連のありそうな他のサイトを捜して「声」をかけてみるのはどう
  でしょうか?

  ネットの最大の魅力は「リンク」だと私は思っています。
  あるサイトを見てそこから繋がるリンクでまったく興味のない世界につながって
  それが意外に面白く、そこから更にリンクをたどったりしませんか?

  まず、富士見堂にリンクコーナーを作り、あとは執筆者の方々に
  関連リンクを訊ねてもらい「富士見堂」の紹介とリンクを承諾してもらう。
  大抵のサイトは無許可でリンク出来ると思いますが
  そこのサイトのBBSに一言声をかけてから相互リンクしてもらえば
  たとえばアボリジニに興味のある人が富士見堂にきて
  ついでに本屋も覗く..ということになっていくような気がします。

  本当に強いのは検索サイトより、いろいろな趣味の人たちの
  口コミによるリンクなのかもしれません。■

 ―――これを読んでまったくその通りだと痛感した。付け加えることは何もない。
自分でも意識してはいなかったが内心ほぼまったく同じ事を漠然と考えて
いたと思う。ただ、こうして文章としてまとめてくれて目からウロコがぽろりと
いう感じで、そうだ、ソウダと唸った。大手が提供する検索サイトに頼ること
なく、もっと自ら自分たちでできることがあった。まずはこうした地道な努力、
リンクという友達の輪を繋いでいけば、しだいに人から人、サイトからサイトへ
と富士見堂も知られていくだろうし、来てくれる人も増えてくる。古本屋の
商売はその先にあって、そうなればやがて「ますだあーと書店」でも本を
求めるお客さんが来るだろうし、すべてが動き出すのではないだろうか。
 このメールのおかげで希望の灯が見えてきた。今も心から感謝している。
今までいろんなメディアを利用してきたけれど、ネットというのは初心者で
実はまだよく分かっていなかった。その最大の利点はリンクという特性だった
のだ。これを活用しない手はない。
 
僕はバカで移り気でおまけに意気地なしなもんだから実はすぐ弱気になったり
困難やトラブルに遭うとオロオロ慌てふためいてパニックを起こす。そして
その後は鬱々とした状態が続くのだが、このサイトを開設して早くも二ヶ月、
いや、まだ二ヶ月なのに実はいつしかその鬱の域に入りかけていた。どうせ、
本は売れないし、お客は誰も来やしないと。でも今はまた、このサイトを
作ろうと考えた最初の時のように、希望と夢と気力がギンギン漲っている。
 どんなことでもそんなすぐに答えも結果も出てこない。好きで始めたことだ。
自分を信じて諦めずに続けていけば登山もそうだが、いつの日か目指していた
場所に辿りつけるはずだ。そう信じて、すぐに結果を求めず世間が見ればバカ
と思われようとも愚直に何事もコツコツ続けていくことをこの場で宣言しよう。

 また、状況は随時この場などでお知らせします。富士見堂商店リンク宣伝計画
(仮称)にご協力下さる方、サイトの管理者の方、ぜひご連絡お願いします。
           【03年8月末日記】


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