不況もあって拾った新刊の雑誌やマンガ雑誌を路上で売る露天商が繁盛してます。
こういった露天商はギリギリのところで商売しているのでその意見はとても参考になります。
今、書店が年に1000店も潰れてるんでしょう?当然こっちの売り上げも落ちるよ。特にテロ後は2割減った。雑誌とナマモノでさ、発売日と翌日くらいしか売れないもの。そりゃ例外もあるよ。(中略)
拾えたらラッキーなんだけど、「ブルータス」と「東京人」ね。私らの間では”バックナンバーになる雑誌” なんてふうに呼んでるけど
「100円雑誌のおっちゃんが直言!売れ筋コミック誌ベスト10」 「ガチンコ☆トレンディ大調査」
週刊 SPA! 12/5号
この発言の年に1000店潰れてるかはともかく、このレポートでも取り上げてきましたように紙の本・雑誌の流通形態の急 激な変化により普通の本屋さんは危機状態です。本屋さんは再販制度により昔は絶対つぶれない商売といわれてました。
しかし、書籍取次会社がコンビニに雑誌を入れた結果、以前なら普通の書店で収益を確保できた雑誌の売上が期待できなくな りました。
また、ネームバリューのある作家の単行本が一番商売になるのですが、書籍取次会社が中小書店には配本数を少なく するかまったく配本しないことも影響しています。
そればかりでなく、新古書店の影響(「マンガはただ!?」 10/25号) ネット販売の影響(「出版流通の革新 」 2/15号 )も出始めてます。
もちろん、本屋さんは独自の戦略で生き延びているある分野に特化したり、CD・ビデオなどといっしょにするメディア複合展開や 他のものも販売する(カフェとの複合する)店舗複合などで独自のカラーを出しています。しかし、このような店舗展開は大都市部以外ではなかなか難しいです。
出版社の側も雑誌や本が売れないどころかマンガも売れない出版不況に対していろいろな試みをしています。 たとえば、大手出版社では本を普通の商品と同じように(「1・2・3」
を考えて)販売をし始めました。小学館ではペーパーバックの廉価 マンガ『My First BIG』シリーズ(各286円)を出し好調です。 これを見て各社も同じものを販売始めています。これらの本は書店ではまず見つからず、コンビニエンスストアの雑誌コーナーに並んでいます。これらは再販方式で印税払いという今までの販売方式
と異なり、店側の買い切りで著者には実売分のみの印税支払い (小学館 三宅氏)で販売してます。今のところ収益性はともかく、古いマンガを再度表舞台に出すことにはなっています。
これから全般的には紙メディアは減る見込みですが、無くなると いうことはなく「残るべきものが残る」ということです。
紙メディアで「残るもの」はメジャーなものとマイナーなものでしょう。メジャーなものでいうと、メジャー作家のもの、女性週刊誌、老人向けのもので、マイナーなものでいうと、ある分野に特化しているもの、グラフィックのもの、絵本などでしょう。
電子メディアになるものは上記の「中間の分野」と、速報性が必要なもの、別に重要でないものでしょう。
日本のポップス「J―POP」の専門誌が3誌、姿を消した。(中略) 休刊が相次いだ最大の理由は、不景気で広告収入が大幅に減っていること。だが、問題はそれだけではなさそうだ。ここ数年、中高生が携帯電話にお金を使い、その分、CDや雑誌を買わなくなった
といわれる(中略)また、アーティストのテレビタレント化も進み、「雑誌など活字メディアの記事やインタビューを必要とするアーティストが減った」と音楽評論家の今井智子さんは分析する。「音楽を雑誌
で語るより、テレビを通して表現する方が簡単だし、映像を見たが るファンも多い。雑誌の存在意義が薄れているのではないでしょうか」
「J―POP誌 休刊続く不況に加え、携帯電話に押され…」
http://www.asahi.com/culture/topics/K2001120401247.html
「学校読書調査」(毎日新聞)の結果でも「読書はしないが、音楽 を聞いたり雑誌を読んだりはする」という中、高生の生活がうかがえる。」となっており
(「マンガはただ!?」 10/25号)、この傾向がもっとすすみ紙メディア離れが進行しています。このように、雑誌な ど一部は確実に紙メディアからテレビも含めた電子メディアに移行
してきいます。
また、11/29号で紹介したように携帯電話に連載小説を配信するような試みはこれから出てきます。また、若者ばかりでなく「大人向 けの電子出版サイト」も活発化しています。
インターネットの利用は20代、30代が中心と言われるなか、40
代以上の熟年を対象にした電子出版サイト(http://ebunkasya.com) がこのほど本格稼働を始めた。
「大人向けの電子出版サイト」 朝日新聞 10/19
また、小泉内閣メールマガジンも携帯電話で読めるようになり、 「創刊半年記念特別企画」第25号 (2001/12/06)ではストリーミン
グ再生で首相の談話の映像が見れるようになりました。
このように「印刷出版と電子メディア」の融合が進み電子のメディアはこれから増大してきます。そして、ネット上のストリーミングメディアから通信・放送融合へ向かいます。
もう一つはテレビとネットの関係では、これからはテレビでインター ネットなどの情報も見ることができるようになる「テレビのネット化」 と「ストリーミング」(7/5号)で書きましたようにインターネットがテレ
ビ・ストリーミングコンテンツを流すようになる「ネットのテレビ化」が さらに進み、前出のテレビとネットの競争が激化します。(「テレビの運命−通信・放送融合」8/16号
)もう既にその最初の波が来ています。
BROBA(ブローバ)は、NTTブロードバンドイニシアティブ株式会社が 提供する、ブロードバンド時代のポータルサイトです。 見るだけじゃない。参加できる。自分が主役になれる。ブロードバン
ド時代のまったく新しいポータルサイトBROBA(ブローバ)。 高速回線ならではのリッチコンテンツが、かつてない楽しさをお届け します。
ADSLでは高画質で安定した映像を、光アクセスでは高画質/大画面で安定した映像をお楽しみいただけます。
http://bb.goo.ne.jp/special/broba/whatsbb.html http://www.broba.cc/
具体的にいうとコンサートも映画もスポーツ中継もテレビとネットが競合するようになります。今まではサッカーファンがオランダでのフェ イエノールトの小野の活躍が見たいというは場合にはBSかCSに契
約してフェイエノールト戦を見れるオプション料金を払わなくてはなりません。
これからは、オランダのネット局と直接契約し遙かに安い料金でフェイエノールト戦をネット上で見ることができる可能性も出てき ます。ここでは一部とはいえ国内の視聴率争いを越えた世界が展開することになります。
そして、これらのブロードバンドコンテンツはパソコンだけではなくゲ ーム機でも見れます。
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は2002年4月から、家庭用ゲーム機「プレイステーション2」向けにオンラインゲームや動画
・音楽などのブロードバンドのコンテンツ配信サービスを始める。コンテンツ配信を手がけるNTTブロードバンドイニシアティブ(NTT-BB)と、プロバイダー「So-net」を運営するソニーコミュニケーションネットワー
ク(SCN)と提携し、通信インフラにはADSL(非対称デジタル加入者線)や光ファイバー網を使う。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NNB/NEWS/20011211/1/
また、CD-ROMコンテンツを買うことなく、いつでもネット上で利用できるサービスも始まりました。NTTコムはCATVインターネットやADSL
などの接続環境を前提としたサービスSORETTEを月額1600円の定額、使い放題で始めました。
NTTコミュニケーションズ(NTTコム)は、ブロードバンド接続を利用し てCD-ROMをオンライン配信するサービス『SORETTE』(ソレッテ)を
12日開始する。米メディアステーションが開発した技術を利用して、 回転数と使用可能な帯域をマッチングしながら転送するもので、4− 6月の間に実施した実証実験の完了を受けて事業化した。国内では
初のサービスという。
http://cnet.sphere.ne.jp/Broadband/News/2001/Item/011210-6j.html
こればかりでなく、既存の映画や(「「千と千尋」もデジタル 」9/20号) 紙のメディアも(「印刷とデジタルワークフロー」8/16号) もデジタル化によってその姿を変えつつあります。このような中でも”バックナンバーになる雑誌”(上記の露天商の発
言)や本を作ればまだ、紙のメディアの可能性もあります。
事実、中小出版社では幻冬舎が小人数で旧カドカワ路線(メディアミックス含む)を継承してヒットを飛ばしていますし、また新しい形態の出版社も出てきています。
新しくできた極小出版社の本が元気だ。スタッフは1人、あるいはせいぜい2、3人。都心の立派なオフィスも看板もないが、「出したい本を出す」ため、流通や制作面でも独自の路線を試みる。厳しい状況だからこその、新しい動きが起きている。
「新しい小出版社 元気です《変わる出版》書店と直取引 投資組合作り経営も」 http://www.asahi.com/culture/topics/K2001110501378.html
一方では中堅ゼネコンの青木建設が潰れた翌日に中堅書籍取次会社の鈴木書店が倒産しました。
同社は人文・社会科学系の専門書を主に扱い、出版社と書店の間 をつないできた貴重な存在。専門書などの流通ルートが細り、読者が 望む本が手に入りにくくなる事態も予想される。
「硬派本の取り次ぎの鈴木書店が自己破産へ」 朝日新聞 12/7
このように、コンテンツ分野といえども今までの本やCD等の再販制度などの既存の制度に寄りかかっているような保護された状況はありえません。
100円ショップに何が売られてもいても驚かなくなりましたがその10 0円アイテムにダイソーミステリシリーズがあります。これは100円ショ
ップのダイソーがミステリーを文庫形式でもちろん100円で販売しているものです。ラインナップを見ていただければ分かりますがいずれも現役の中堅作家の作品です。一昔前にならともかく、今では新刊の文庫
本はこんな価格で買えるものはありません。
100円ショップの店舗ネットワーク使うこの方法では本屋だけでなく 出版社や書籍取次会社にもその影響は波及していきます。
本ばかりでなくビデオでも
レンタルビデオが1円究極値下げ合戦の発端は6月、ウェアハウスから数十メートルしか離れていない食品スーパーの別棟にTSUTAYA が進出したこと。シチエがTSUTAYA対策としてレンタル料金を引き下げたところCCCT(SUTAYA)も応戦、値下げ競争となった。
旧作ビデオは減価償却が済んでいる場合が多いため集客の目玉にするレンタル店は多いが、ウェアハウスでは準新作ビデオと旧作DVD (デジタル多用途ディスク)ソフトも一週間1円でレンタルしている。
食品スーパー関係者の間では「足立区は都内でも有数の価格競争が激しい地域」との声が多く、こうした流れがレンタルビデオにも波及 したようだ。
[日経MJ] ビデオレンタルで“1円戦争” TSUTAYA vs ウェアハウス
http://b2o.nikkei.co.jp/contents/b2o10/e10/20011011eimi023111.cfm
これが 「1・2・3」が進む中、今起きていることです。これはほんの一例にすぎません。まだまだ既存の出版・コンテンツの流通の形態は変化せざるを得ないでしょう。
つまり、これからは紙のメディアも電子のメディアもコンテンツはすべてガチンコ(本気の真剣勝負)になってきたことは確かです。
|