今、テレビでは在京の民放各局共同のBSデジタル放送のコ マーシャルが流れていますね。でもまだ、BSデジタル放送を見たことある人は少ないようです。
現在のテレビ放送つまり、アナログの地上波テレビ放送を全廃し2011年までに全面的に地上波デジタルテレビ放送への移行する電波法改正案が先の通常国会で可決されました。これによ
って地上波デジタル放送は東京、大阪、名古屋の三大都市圏で は2003年から始まる予定であり、その後8年程度で地上波デジタル放送に完全移行することになります。その間は視聴者がデジ
タル放送対応テレビへの買い替えや専用チューナーの購入を終 える経過期間とし、地上波のテレビ局はアナログ、デジタルの両方式で放送する予定です。
ディジタル地上波テレビ放送への参入事業者は,現行のアナログ地上波テレビ放送局を「基本」とする――。2001年7月25日に施行されたディジタル地上波テレビ放送の制度整備策で総務省は,このような方針を明示した。「ディジタル地上波テレビ放送
はアナログ放送からの移行サービス」と位置付けたためで,「アナログ放送の番組の大部分を放送する」としたのもこの方針に沿ったものといえそうだ。
「推進体制固まったディジタル地上波放送【後編】」 http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NNM/NEWS/20010810/3/
デジタル放送になるとチャンネル数が増え高画質番組やインターネットと連動したサービスなどが利用できる。といいことずくめですが、地上波デジタル放送対応のテレビが今のテレビより
割高になるので普及が進むかどうかが問題です。今回の法改正ではデジタル化に向けた作業によってテレビが見られない事態が生じないように国民に対しては何も助成はないが、放送局
が負担する経費の一部を国費で助成することになっており、その助成の条件として各放送局は10年以内に番組をデジタル放送で流すように求めています。
既にBS(放送衛星)、CS(通信衛星)放送がありますが受信料や専用機器が必要であり当初の予定より視聴者は増えていないです。また、BSデジタル放送も始ってますが現状は視聴者が少なすぎてどうにもならない現状です。また、ケーブルテレビはケーブルデレビのネットワークを使用してインターネット接続事業を始めたこともあり利用率を延ばしつつあります。
アメリカの場合もほぼ同時期に地上波デジタル放送に完全移行することになっています。テレビ特番「2006年、地上波テレビがなくなる」(テレビ東京
2001/06/10 「日高義樹のワシントンレ ポート」)ではアメリカで地上波デジタル放送への完全移行につ いて関係者に取材した結果、地上波デジタル放送以外の可能性について二つの相反する見通しを出しています。
(この特番の内容について前々から皆さんからご質問が多かったのですが今回まとめてお話しします。)
一つは、現在のアナログ地上波テレビ放送がケーブルテレビに移行していくというものです。これは世界でもまれなアメリカの 特殊な事情があります。アメリカはケーブルテレビの普及率が高
く(約80%)今でもアナログの地上波テレビ放送は日本ほどの視聴率ではありません。その中で地上波デジタルテレビを購入する人がどれだけいるかということで、それに伴いスポンサーや広告代理店がアナログ地上波テレビ放送をサポートするかどうか微妙なところだとのことです。
もう一つはブロードバンドにより高速インターネットでテレビ放送のようなもの(テレビ・ストリーミングコンテンツ)を流すようになり次第にテレビにとって替わるというものです。アメリカの場合はDSL
(ADSL)やケーブルデレビ系のインターネットが普及しブロードバンドが一般化しているためストリーミング放送が盛んです。
このような現状で考えられるシナリオは二つあります。
ひとつは、地上波デジタル放送の優位性が減少し、BS(放送衛星)放送、CS(通信衛星)放送、BSデジタル放送、ケーブルテレ ビとの競争が激化します。
もう一つはテレビとネットの関係では、これからはテレビでインタ ーネットなどの情報も見ることができるようになる「テレビのネット化」 と「ストリーミング」(7/5号)で書きましたようにインターネットがテレビ・ストリーミングコンテンツを流すようになる「ネットのテレビ化」がさらに進み、前出のテレビとネットの競争が激化します。
さて、これらのことを前提に日本のテレビを考えると地上波デジタル放送が現行の地上波アナログテレビ放送に替わることになります。
日本の場合はアメリカの様にケーブルテレビの普及率は高 くなくなによりも受信料で運営されているNHKがあるため地上波 デジタル放送がある程度のシェアを占めることになります。
ただし、BS(放送衛星)放送、CS(通信衛星)放送、BSデジタ ル放送、ケーブルテレビについてはそれほどの伸びを示さず、今のインターネットのストリーミング放送の進化した「インタラクティブ
(双方向)デジタルテレビ」(IDTV)放送が伸びてくるでしょう。
米Jupiter Media Metrixが米国時間3月26日に,米国のインタラクティブTV(ITV)市場を調査した結果を発表した。市場は2005年
末まで年平均83%で普及が進み,約4600万世帯で導入されるようになるという。
ちなみに,オンラインを利用する家庭の同期間における増加率 は年平均9%。しかし最初からすべての市場でインフラや技術が利用可能になるわけではないため,インタラクティブTVの普及は地域によって差が生じる,とJupiter社は指摘する。
「番組作成者や広告主は地理や技術による地域ごとの条件の違いを把握し,地域の視聴者に適した番組やサービスの提供に取り組むべきである」(Jupiter社アナリストのLydia
Loizides氏)。
主な調査結果は以下の通り。
・米国におけるインタラクティブTVの普及率は2005年に欧州全体を上まわる。しかし,英国,ドイツ,スウェーデンは米国と同様の普及状況をみせ,普及率はそれぞれ37%,38%,40%となる。
・今後2年間は特定の技術プラットフォームが市場を支配することはなく,MicrosoftTV,Liberate,OpenTV,PowerTVなどがシェアを
分け合うかたちとなる。
・ケーブルや衛星を利用したインタラクティブTVサービスが2005年 末まで市場を牽引する。2005年における導入家庭はケーブル利 用が約2600万世帯,衛星利用が約1500万世帯に達する。
・インタラクティブTVの番組制作者は今後1年〜1年半にわたって,スポーツやゲーム・ショー,ニュースなどインタラクティブ機能が効 果を発揮する番組に積極的な投資を続けるべきである。
「米国ITV市場は年平均83%で拡大,2005年に約4600万世帯が導入」と米調査
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/USNEWS/20010327/9/
この「インタラクティブ(双方向)デジタルテレビ」(以下「IDTV」)放 送では番組はパソコンでも見られますが、パソコンとテレビの融合
したIDTVで見ることになります。IDTVはパソコンのOSに相当する IDTVミドルウエアを持ち「テレビのネット化」を進める地上波デジタル放送等と「ネットのテレビ化」を進めるIDTV放送の双方に対応することになります。
現在IDTVとして有力な上記のIDTV以外でもIDTVが商品化される予定です。
フィンランドのNokiaは、多数のコンテンツプロバイダーと提携し、テ レビ画面でゲーム・インターネット・デジタルTV放送を楽しめる 「Mediaterminal」上で提供するサービスの充実を図っている。(中略) Mediaterminalは、OSにLinuxを採用。セットトップボックスとして、テ
レビにつないでデジタルTV放送の受信を可能にすることに加え、イ ンターネットや電子メール、3D映像のゲームなども1台で楽しめる。 内蔵HDDにはTV番組をビデオ録画できるだけでなく、ストリーミング
コンテンツやMP3フォーマットの音楽データなどをダウンロードして保 存・再生することができる。(中略) こうして概要が明らかになってくると、Mediaterminalは非常に便利
な多機能製品で、リビングルームに置かれたテレビにつないでおけば、家族みんながインターネット上の好みのサービスやデジタルTV 放送を自由に楽しめる環境が実現する。販売価格次第では、一般
家庭に向けた大ヒット製品となっていくかもしれない。
「Mediaterminal」なら、インターネット・デジタルTV・ゲームを1台で充実!
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2001/08/28/21.html
また、従来のハイビジョン映像は電波放送で提供するという方向 ら、ネットでも放送可能にする計画の実験も進んでいます。
インターネット総合研究所(IRI)と有線ブロードネットワークス(有線ブロード)は、大阪のアメリカ村を拠点とし、インターネットでハイビジョン放送を行う実証実験を開始すると発表した。これは有線ブロードが敷設した最大100Mbpsの光ファイバ回線を利用し、インターネット経由で
ハイビジョンテレビ(HDTV)の映像を家庭まで流すようにするものだ。 これは有線ブロードとIRIが、郵政省の外郭団体である通信・放送機構から「次世代ハイエンド通信・放送融合システムの研究開発」の実証実験を受託した事によるもの。従来のようなナローバンド回線では
なく、有線ブロードの100Mbpsブロードバンド回線を利用することで、 HDTV並の画質を得られるか確認する事が目的。
ハイビジョン映像をインターネットで配信する実証実験を大阪で開始
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2001/08/28/29.html
このようにブロードバンド時代に対応した「新たな統合型ビジネスモデル」の構想するソニー・グループを始めとして(「ネット配信 」7/5号)
いくつかの企業はこれらの状況を先取りして計画・実施しています。しかし、重要なことはIDTV放送がインタラクティブ(双方向)性をもつことです。今のBSデジタル放送で使われている程度の初歩的なインタラクティブ(双方向)コンテンツではなくもっとゲームに近いものや、「ビデオ
・オンデマンド(VOD)」などを実現します。「ビデオ・オンデマンド(VOD) 」とは自分の好きなビデオをIDTVを通じて好きな時間に楽しむことが
できるシステムです。
米TechTrendsが行った「CATVや衛星放送サービス加入者のインタラクティブTV(ITV)サービスに対する意識調査」 でも「ビデオ・オンデマンド(VOD)」への希望が高かったです。つまり、
BS(放送衛星)、CS(通信衛星)、BSデジタル放送、ケーブルテレビはIDTV放送の媒体になる可能性が大きいです。
いずれにせよ、現在のテレビの時代は終わり新しいテレビの時代がやってきます。それが地上波デジタル放送、IDTV放送、BS(放送衛星)放送、CS(通信衛星)放送、BSデジタル放送、ケーブルテレビのいずれであれ、ポイントは視聴者・利用者の数とスポンサーのサポートそしてなによりも重要なのは番組・コンテンツです。
つまり、現在の視聴者・利用者が無料・低価格で見られるコンテンツをいかに提供できる かということにかかっています。それが可能になれば受像器や受像装置も購入者が増え、スポンサーがついて更に充実したコンテンツが制作できることになります。
(そのコンテンツのお話はいずれまた。)