『S−Report』 8/16号  印刷とデジタルワークフロ  − 紙の本、電子の本(5)         コンピューターウイルス警報
 
 
8/9号でデジタルワークフローについて少し触れたところもう少し詳しくという要望が多かったので今回は印刷を例にとってデジタルワークフローについてす。

 中小印刷業界の発展をめざして活動している全日本印刷工業組合連合会(以下、全印工連)では「2005計画」を策定し21世紀 の印刷業界の指針と具体的な政策を提示しています。
  「2005計画」 http://www.aj-pia.or.jp/
  全印工連 中村守利会長インタビュー http://www.komori.co.jp/hp/onpress/138/138.htm  

 「2005計画」の中で全印工連は印刷マーケットの市場成熟にともない印刷産業は供給過剰になり、今まで拠り所としてきた基盤 が崩壊しつつあるとの認識のもとに下記のような「印刷事業のパラダイムシフト(転換)」をあげています。
 ・独自性の確立 ・コンピュータのメディア化 ・印刷技術のパラダイムシフト ・経営のパラダイムシフト ・国の中小企業政策のパラダイムシフトこの「印刷事業のパラダイムシフト(転換)」への対応として「新しい印刷産業のビジョン」である印刷産業が在来の形から新しい印刷情報産業に転換することを提唱しています。      

  そして、既にこの 「2005計画」に従い各地の印刷工業組合は実行計画を実施しています。

 特にこの中で印刷技術のパラダイムシフトとして、媒体転換−媒体を紙から紙はもちろん紙以外の磁気・光媒体に転換し、表現形 式を静止画から動画・音声までに広げることと、システム転換−閉鎖型専用システムから開放型統合システムへの転換をあげています。
 閉鎖型専用システムとは今までの印刷技術や印刷専用機を使ったシステムで他のシステムとの共通化・共用化が図られていないシステムのことです。開放型統合システムとは印刷固有の技術や汎用機を使ったシステムで他のシステムとの共通化・共用化が図られているシステムのことです。 つまり、これが広義のデジタルワークフローのことです。
 デジタルワークフローとは仕事の上流から下流までが全てデジタル化されることをいいます。具体的に印刷の分野では現在多くの場合デザイン・編集・印刷の従事者間・事業所間で印刷原版はフィルムでやり取りしていますが、デジタルワークフローではこのやり取りもデジタルに変わります。
 現状ではこの印刷原版をつくる写植の大半が第2世代・第3世代の写植機で行われてます。第3世代の電子式自動写植機(アナログ方式、デジタル式)はメカトロニクス、写真技術、コンピュータの組み合わてすべての組版を電子的に行なっています。また、第2世代の自動写 植機(回転ディスク型と回転ドラム型)では印字速度、書体数、文字サ イズ、組版機能などに制約があり手動写植機との併用と手作業が必要です。
もちろん、まだ、第2世代の自動写植機もたくさん使われていますし、第3世代の電子式自動写植機でさえまだ前出の「閉鎖型専用システムの専用機」であり開放型統合システムで仕事の流れは(広義 の)デジタルワークフローにはなっていません。

 ではなぜ広義のデジタルワークフローが必要になってきているのかというと印刷発注者である出版社、一般企業、官公庁、広告代理店がDTP(コンピュータ編集システム)を使い文字組版・画像のデジタルデー タを作成するようになったためです。つまり、仕事の上流がデジタル化されるに従って原版・データのやり取りもデジタルに変わらざるを得ない状況になります。
 現在の狭義のデジタルワークフローはカラーマッチングやデータのやりとり等の技術的問題に終始していますが、共通のデジタルデータの 入稿・運用規定の策定や校正方法などを決定して広義のデジタルワークフローが完成します。この点は「東京国際ブックフェア2001」(5/3号) を参照願います。 

 例えば、デジタルデータの入稿・校正にしても米国ではPDF-Xを業界標準のファイルフォーマットにする方向で進んでおり日本もこの流れに追従してゆくことになるかもしれません。実際、Adobe社のPDF作成ソフトAcrobatにはADCheckという校正ツールが付属しておりこれは非常にすぐれたものです。Adobe社はデザイン・DTP・e−BooK分野 で多くのシェアのあるアブリケーションを持ち、それらはコンビューター の印刷のスペックの標準となっています。そして、今後は自社の提唱 する「PDF印刷ワークフロー」を印刷のデジタルワークフローの標準に してしまう戦略を持っています。

 このように更に改良され、印刷のシステムが他の分野とのシステムの共有化を図ることで効率化やコスト低減を実現します。
  新 しい印刷産業のビジョン」はこのような効率化だけではなく印刷産業は「情報の交差点」としての位置を占めるようになり、製造業としての性格と、顧客が持っている要望や問題点を共有し、その問題に対して提案をぶつけて、顧客の要望を満たしながら、自らの糧を得るという、知識サービス業的な性格を持っている。
 したがって、印刷業は自らの持っている「強み」をもっと意識して活用すべきであり、成長産業であるためには、新しい印刷・情報産業として変革して行かなければならない。
 全印工連 「2005計画」 要約:竹原悟(全印工連特別顧問)

 このようにデジタルワークフローは単なる効率化やコスト低減の手段ではなく、既存の技術を生かした新しい仕事の仕組みです。前回、写真の分野でプロカメラマンがプロとしてのテクニック・ノウハウや写真のセンスを基礎にして新たにカラーマネジメントのようなデジタルテクニックを修得していったのと同様のプロセスがここにあります。そしてそのためには従来から保有している技術を生かしオープンなスタンスで新しい仕事・業態に対応していく姿勢が必要です。
 そして、あらゆる仕事の上流・下流を問わずデジタル化が進めば、このデジタルワークフローはあらゆる分野の仕事の流れの基本になります。

 本の紹介


  現在、印刷にかかわる人の実務上に必要な本を紹介します。(専門の方には常識の項目もありますが)

 「DTP/印刷データ管理の A to Z」

  著 者 : 多田 耕司(凸版印刷株式会社商印事業本部)
  定  価 : 2000円(税込み)   発行日: 2000年8月
  発 行 : 社団法人 日本印刷技術協会
  サイズ : B5版 176頁
 

 コンピューターウイルス警報


 以前、警告を致しました「Code Red」の亜種「Code RedU」が出現し猛威をふるっています。「Code RedU」はバソコンウイルスで はありませんのでIISサーバをご使用でない個人ユーザの方には 「W32/Sircam」ほど重大な危険はありませんが、インターネットの一部に機能停止に陥らせる可能性があります。これは個人では対策がとれませんので皆さんのお使いのプロバイダ等のIISの管理者・専門家が対策をしているはずです。ただ、無料プロバイダー・自営サーバーの場合は念のため担当者に確認してください。
メールの添付ファイルにより感染を拡げる危険度の高い新種ウイルス「W32/Sircam」も依然猛威をふるってます。

  ご使用の市販ワクチンソフトベンダーのサイトにアクセスし情報を入手し定義ファイルを更新してください。また下記の通り古いバージョンのワクチンソフトにも注意して下さい。
 http://www.ipa.go.jp/security/topics/sircam.html

 また、コンピューターウイルス対策の基本的なことは「ネットワークセキュリティ」(6/14号)、情報処理振興事業協会セキュリティセ ンターの情報をご参照ください。
  http://www.ipa.go.jp/security/

 迷惑メール警報


 8月に入りNTTドコモのEメール、imodeサービスを対象に多数の迷惑メール及び「悪質メール」が送られています。下記のサイ トをご覧の上対策をとられることをお勧めします。

   NTTドコモ  http://www.nttdocomo.co.jp/

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