『S−Report』 8/2号 IMT-2000と携帯電話・PHS                        コンピューターウイルス警報

 
携帯もすっかり定着し中学生でも持っているようです。今回は携帯に関係する最先端のお話なので少し難しい用語も出てき ますが細かいところは別にしてお読み頂ければ。

 現在の携帯電話・ネットワークサービスは「第二世代」にあたります。通信方式としてはTDMA(時分割多元接続 Time Division Multiple Access)つまり、1つの周波数を短時間ずつ交代で複数の 発信者で共有する方式を採用してます。

 次世代の携帯電話・ネットワークサービスは「第三世代」であり、通信方式としてはCDMA(符号分割多重接続 Code Division Multiple Access )つまり、複数の発信者の音声信号にそれぞれ異なる符号を乗算し、すべての音声信号を合成して1つの周波数を使って送 り、受け手は自分と会話している相手の符号を合成信号に乗算す ることにより、相手の音声信号のみを取り出すことができる方式を 採用しています。これがITU(国際電気通信連合)が標準化を進めるIMT-2000であり、米国のcdma2000(Wideband cdmaOne)と日欧 のW-CDMA(wideband CDMA)などの複数方式が採用される見込であり、旧郵政省(総務省)は98年7月に広帯域CDMAによる次世代携帯電話について、同一事業区域の参入事業者数は最大3社 とし、2001年中の事業開始を求める方針を示しています。また、地域ブロックごとの事業参入を求めてきた従来のPHSなどと異なり、全国サービスや複数ブロックへの参入を認める方針です。
 これに基づきNTTドコモではFOMA、J-フォンもW-CDMA(Wideband CDMA)のサービスを今年中に開始予定をしており、またKDDIでは AU-cdmaOneでcdma2000のサービスを一部提供始めています。これらは同じIMT-2000の規格であり世界的にみれば現状ではどちらかに統合されることはない模様です。両規格はカラーテレビの規格のPAL(欧)とNTSC(日米亜)の様に共存してくことになると考えら れます。

 次の「第四世代」の携帯電話・ネットワークサービスについては政府の基本計画では2010年となっていましたが今のペースでは2006 年頃に前倒しになります。「第四世代」では通信速度は毎秒30Mbps程度で、現在のASDLの約30倍で携帯の3000倍になり、精細な画質のテレビ電話や動画の閲覧が楽しめ、「IPv6(インターネット プロトコル・バージョン・シックス)」 に充分対応できるようになります。(6/28号「ネットワークインフラと速度」)


 ところが「第三世代」どころか「第二世代」携帯電話・ネットワーク サービスでさえトラプルが絶えません。
 まず、i-modeやEZ−webなどのサービスが停止することがあり 設備のキャパシティや運用に問題があります。
 次に、技術的に未成熟な部分があり携帯電話の不良品回収などの問題が起こっています。これは単に技術的未成熟ばかりでなく、技術者の不足及び開発時間がなく問題点を根本的に修正している余裕がないのが原因です。
 そして、迷惑メールやメールウィルスなどの問題も大きいです。それに関連してJava(携帯用のプログラム)技術の問題点も多いです。

 この先の「第三世代」携帯電話・ネットワークサービスもNTTドコモの FOMA、J-フォンの相次ぐサービス開始延長が発表されたようにこの 「第二世代」以上に問題が多いです。
 この分野で先行しているアメリカでは「第三世代」携帯電話に対して根本的な問題を指摘されています。

 待望の次世代携帯電話サービス。だが,現実はそんなに甘くないよ うだ。いわゆる第3世代(3G)携帯電話サービスに対するビジネスユーザーの期待が予想外に低いことが,ハイテク関連の調査会社,Gartner (NYSE: IT)が先頃行った調査でわかったからだ。
 「本当は誰も期待していない次世代携帯電話?」  http://www.zdnet.co.jp/zdii/0106/14/hn_020.html

 詳細は上記のサイトを見て頂きたいのですが簡単にいうとユーザーがコストが上がるなら「第三世代」携帯電話・ネットワークサービスの「新しい機能」を求めていないということです。

 さて、携帯と並ぶものとしてのPHSではNTTパーソナルはNTTドコモへ吸収され、アステルは地域系電話会社への統合が進行しており、現 状では音声通話サービスよりデータ通信に特化して生き残りを賭けています。
 その例として東京電話アステルが「ドット・i」という高速を生かしたインターネット向けデータ通信サービスを開始しています。他のアステル系では「ねっとホーダイ」を展開しています。「ねっとホーダイ」はインターネット通 信料を定額で24時間使い放題になるサービスでアステル北陸とアス テル四国で実施中です。
  また、最大手のDDIポケットもパケット通信を活用し定額で24時間使 い放題になるデータ通信サービス「AirH"」(エアーエッジ)を実施中です。
  しかし、「第三世代」の携帯電話・ネットワークサービス・IMT-2000の 開始によってPHSがデータ通信での優位性を失った場合、音声通話サービスとしても契約者数は減少するでしょう。「第三世代」携帯電話に対抗する次世代PHSの姿は不鮮明ですが、7月14日に総務省が「IMT-20 00時代における次世代PHSに関する答申」を公開しました。

 現状のPHSの帯域をそのまま活用し,干渉が懸念されるIMT-2000と の共存も考慮の上でPHSの通信速度を最大1Mbpsまで高速化すると うもの。通信コストなどは現時点では不明だが,実現すればPHSはさら なる強力なモバイル通信手段になる。 ただし今回公開されたのは基地局から端末,俗に言うラストワンマイ ルに関する部分のみ。電波状況に応じて変調方式を変更し,ワイドバン ド化(現状の約3倍),フレーム当たりのスロット数を倍にするといった手 法を取り入れ,1つの基地局と端末間で最大1Mbpsのデータ通信速度を 実現するというものだ。
 1Mbpsというデータ通信速度は現時点でのIMT-2000(NTTドコモの FOMA)の下り最大384Kbpsを軽々と上回っており,モバイラーにとっては 正に文句ない通信速度だ。 来春の実用化は期待できるのか  総務省では法整備が整うのが2002年初頭としており,実用化は早くて も来年春との見解だ。しかし“法整備が整えば実用化”という点には大き な疑問が残る。
「PHSで1Mbpsの真実──総務省の示した次世代PHSの姿」   http://www.zdnet.co.jp/mobile/news/0107/03/phs.html  

この答申の背景にはPHS自体が旧郵政省(現総務省)が作り出した国内のみの規格であり、携帯電話の普及及び低価格化によりPHSがマーケ ットを失い膨大なその設備が余剰化している現状があります。今回の答申はその救済策でもあり、ネットワークインフラ全体として有意義なことかは 疑問視される部分もあります。また、この答申の次世代PHSがうまくいったとしてどれだけPHSが優位性を保てるかはわかりません。

 第三世代の携帯電話・ネットワークサービス・IMT-2000も次世代PHSも上記のGartnerの調査のようにコストが上がるなら利用は見込まれません。
  これのために既に料金も値下げの傾向にあり、IMT-2000のcdma2000のサービスを既に提供しているKDDI系のauは今秋cdma2001x(144bps) のサービス開始し、来年度はcdma2001xEV(最大24Mbps)を常時接続で 月額5000円程度でサービス開始する予定です。
 また、同じKDDI系のDDIポケットも前出の「AirH"」(エアーエッジ)の料金 を8月29日から値下げして月額5800円にします。  (年間契約割引を適用すれば利用料金は月額4930円)
 さらにマイライン(「マイラインは OK??」2/22号)のを拡大した「固定電話、携帯電話・PHS、ブロードバントサービスを包括した割引サービス」を展開することになりそうです。この割引サービスのファーストステップにあたるものとしてKDDIグループは業界初の携帯電話の通話料金を割り引くサービスを始める予定です。

  「au→自宅割」は、au契約者が、「自宅の加入電話」について、「県内市外」 「県外」を含む3区分以上にKDDIをマイラインプラスで登録した場合、au携帯 電話からau契約者の「自宅の加入電話」への通話料金が半額になる割引 サービスです。 携帯電話と固定電話のセット割引としては、2000年10月より「KDDI割引セッ ト」を提供していますが、携帯電話の通話料金を割り引くサービスは業界初になります。 マイラインの獲得促進に向けて、他社に先駆けて携帯電話と固定電話とのセット割引を行うことで、KDDIグループとしてのシナジー効果を創出し、マイ ライン・auにおける他社との差別化、及び加入促進を図ります。
 「au→自宅割」の提供について −マイライン登録でau携帯電話から自宅への通話料金が半額に -
  http://www.kddi.com/release/2001/0719/index.html  

 このような「固定電話、携帯電話・PHS、ブロードバントサービスを包括した割引サービス」が実施されればコストの問題もある程度クリアされ、無線ブロ ードバントサービス、携帯電話、電話もすべて統合されたネットワークが安価 に早期に実現する可能性があります。


 さて、一方ではインターネットを使ったIP電話サービス(インターネット電話サービス)に大手が本格参入してきました。
 VoIP-TAやルータと組み合わせ,安価な音声通信を提供する。事業所向けは月額3万円程度とVoIP基本料金2000円程度で内線電話を利用でき,一般 電話へは10円/90秒の従量制で国内どこでもかけることができる。個人・SO HO向けは,基本料金が月額2000円から5000円程度,VoIP基本料金は500 円から1000円程度を予定。一般電話への通話料金は事業所向けと同程度を 予定している。 またそれぞれ,国際電話も世界240カ国を対象にサービスを予定している
  「WAKWAKコール・ゴーゴー」 http://www.ntt-me.co.jp/news/news2001/nws010730b.htm  

 このサービスでは家庭や中堅企業を対象にしてインターネットで外線通話することにより通話料を大幅に削減できます。このADSLを利用してできる「WAK WAKコール・ゴーゴー」は9月にもスタートする予定です。

 この影響は固定電話に留まりません。2006年頃に前倒しされた「第四世代」携帯電話ではそのデータ通信機能を使ってIP電話サービス(インターネット電話サービス)が可能になります。
  このようにこれからは固定電話、携帯電話・PHS、有線ブロードバントサービス・無線ブロードバントサービスとか、音声、データとかそういう古いパラダイム (枠組み)で捉えているとすぐその枠組みや事業領域がなくなってしまいます。
 

 追加情報


 有線・無線ブロードバントサービス 「ネットワークインフラと速度」(6/28号)で書きましたYahoo! BBのサービスはNT Tの対応が遅いため実現性を疑問視する声もありますが、その価格破壊の波は着実に有線・無線ブロードバントサービスの料金に及んでいます。

・Yahoo! BB,本サービス開始を9月に延期 NTT回線の諸手続の遅れが一因  
  ソフトバンク・グループは7月30日,グループ会社のヤフーおよびBBテクノロジーが共同で提供するADSLサービス「Yahoo! BB」の本サービス開始を9月1日に延期 すると発表した。これまでの予定では,8月1日に本サービス化する予定だった。 8月末までは現行の無料試験接続サービスを続ける。
日経コミュニケーション http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NCC/NEWS/20010730/4/

・株式会社ソニーネットワークコミュニケーションズ
 So-net ADSLは最大速度1.5Mbps月額料金2,980円および最大速度8Mbps月額 料金3,280円で8月(9月)より全国でサービスを開始する予定です。これはNTTよ り約1,000円安くYahoo! BBより少し高い。
  http://www.so-net.ne.jp/access/adsl/

・株式会社トーカイ・ブロードバンド・コミュニケーションズ   http://www.tokai.or.jp  
 8月から、神奈川県と埼玉県で始め、順次関東地方で展開すると発表した。毎月 の料金は、接続業者(サービスプロバイダー)と専用モデム料金を含めて、使い放 題の定額制で月3980円。DSL最大手で、月5000円前後のNTT東日本・西日本 の「フレッツ・ADSL」よりも安くした。  
  http://www.asahi.com/business/update/0719/011.html

 コンピューターウイルス警報


 メールの添付ファイルにより感染を拡げる危険度の高い新種ウイルス「W32/Sircam」が猛威をふるってます。 このウイルスは7月17日に最初に出現していますのでそれ以 降にワクチンソフトの定義ファイルを更新していないと発見でき ないことがあります。
 ご使用の市販ワクチンソフトベンダーのサイトにアクセスし情報を入手し定義ファイルを更新してください。
 また下記の通り古いバージョンのワクチンソフトにも注意して下 さい。

 シマンテックおよびトレンドマイクロのゲートウエイ用ウイルス対策製品において,「Sircam」ウイルスを検出できない場合が あるという問題が明らかとなった。最新のウイルス・チェック用 のデータ・ファイルを使用していても,検出できないことがある。
 問題があるのは,シマンテックの「Norton AntiVirus 1.5 for FireWalls」および「NortonAntiVirus 2.1/2.51 for Gateways」, トレンドマイクロの「InterScan VirusWall for Windows NT 3.x」*。
  トレンドマイクロは7月26日に同社Webサイトでパッチを公開した。 また,シマンテックは不具合を修正したバージョンを7月27日か らユーザーに配布する予定である。
  * 3.x以前のバージョンにも同様の問題があるが,現在はサポ ート対象外。
 両社とも,上記製品はSircamウイルスをまったく検出できないわけではなく,「検出できない場合がある」としている。現在猛威 を振るっている Sircam ウイルスは,メールに自分自身を添付して感染を広げるウイルスである。自分自身を送信する際,Sircam は送信元マシンからランダムにファイルを選択し,ウイルス・ファ イルに組み込む。そのため,ファイル名だけでなく,ファイルの内 容自体も送信元により異なる。そのファイルの内容によっては,上記製品ではSircamを正しく認識できないという(以下略)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/NEWS/20010727/1/

 また、8月に活動再開の恐れのある「Code Red」はインターネッ トの一部に機能停止に陥らせる可能性があります。これは個人では対策がとれませんので皆さんのお使いのプロバイダ等のIISの管理者・専門家が対策をしているはずです。ただ、無料プロバイダー・自営サーバーの場合は念のため担当者に確認してください。

 また、コンピューターウイルス対策の基本的なことは「ネットワークセキュリティ」(6/14号)、情報処理振興事業協会セキュリティ ンターの情報をご参照ください。
  http://www.ipa.go.jp/security/

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