今年も半年が過ぎましたが、この頃は政治も経済もめまぐるしい変化ですね。特にIT分野は日々激しく変動しています。
政府のIT戦略本部(本部長・小泉純一郎首相)は26日、2002 年度の年次計画「e―Japan2002プログラム」を決定した。 情報技術(IT)に接する機会を提供するため特定の地区をモデルケースとして選び、最先端技術を実験的に投入する「e!プロ
ジェクト」を進めることを新たに盛り込んだ。
「IT戦略本部、「e−Japanプログラム」決定」6月19日 日本経済新聞(NIKKEI NET) http://www.nikkei.co.jp/
1/1号で「今年は政府のIT政策が実現すればインターネット網 が全国の家庭に普及し「ネット広帯域常時接続」の時代に入りま す。」と予測しました。
1/18号「パンク?インパクト?」で指摘したように政府の対応には問題が多く今回の「e―Japan2002プログラム」も具対性に欠 けているとの批判もあります、また民間では生き残りのためにITを積極的に推進しています。この結果IT化とそれにともなう価格破壊がビジネストレンドになりました。(4/26号)
このようにITが 国家事業や大企業の事業として行われほど、個人の商いや小さな商いがやりににくくなっているようです。(3/22号) (関連記事として2/15号
.3/15号.4/12号.4/19号.5/3号.6/7号 を参照してください。)
さて、政府の対応はともかくこのITを支えるネットワークインフラ の業界も「価格破壊」が進み競争も激化しています。
今回はネットワークインフラとして個人に直接関連するブロード バンド(広帯域)サービスの現状を有線ブロードバントサービスと 無線ブロードバント(IEEE
802.11準拠)サービスの二つに分けて 概説します。
(1)有線ブロードバントサービス[( )は帯域] ・ADSL(1〜2M)
・フレッツ・ADSLは東西NTが全国で提供中で月額約4,100円からです。 ADSLは東京めたりっく通信等が首都圏、近畿圏などで提供中で約5,600円からです。
・FTTH(10M以上) 仮称FTTHサービスは東西NTが首都圏で7月から提供予定で月額約5,900円からです。 10メガサービスはIPREVOLUTIONが都内一部で提供中で月額 約6,100円からです。
(2)無線ブロードバント(IEEE 802.11準拠)サービス(1〜2M)
スピードネットは東電がさいたま市で試験提供中で月額約4,350円からです。
仮称個建無線接続は関電が近畿圏で7月から提供予定です。
WIS-netはNTTMEが首都圏一部で提供中で月額約3,980からです。
このように10M以上のFTTHサービの開始にともない2M程度のブロードバントサービスはもはや大幅値下げをしないと競争力を失いつつあり本来の「ネット広帯域常時接続」が到来するようです。
このような中でソフトバンクグループのYahoo! JAPANが6月19日に全国で8Mで2,830円からというサービスを発表しました。
Yahoo! JAPANが新サービス、Yahoo! BBを開始します。安くて速 い、そんな夢のブロードバンド環境を実現。2001年8月1日より正式サービスとしてご提供する予定です。
Yahoo! BB 2001年6月19日 Yahoo Japan Corporation http://bb.yahoo.co.jp/
このため、東西NTTも大幅値下げをせざるをえず、2M程度の有線ブロードバントサービス提供している企業は大幅な設備投資をしてYahoo! BBと同程度の8Mにする必要があります。その中には値下げや設備投資のための資金調達は更に難しくなり、営業停止に追い込まれる可能性もある会社も出てくるでしょう。
事実、経営の悪化を伝えられていた東京めたりっく通信は6月21日にこう発表しました。
東京めたりっく通信株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:東條巌)は、ソフトバンクグループの傘下で経営再建を果たすこ ととなりましたのでご報告申し上げます。
これに伴いソフトバンクグループの株式会社ディーティーエイチマーケティング(本社:東京都中央区、代表取締役社長:橋本太郎) は、東京めたりっく通信の発行済み株式数の大半を所有すべく、既存株主の方々と現在交渉にあたっております
。
今後、東京めたりっく通信は、ソフトバンクグループのもと、安定した経営とより快適なブロードバンド環境の提供に努めます。
「東京めたりっく通信、ソフトバンクグループ傘下での事業再構築へ」
2001年6月21日 東京めたりっく通信株式会社
このようにブロードバンドベンチャーの先駆けだった独立系の東京めたりっく通信もYahoo! BBに吸収されることになりそうです。 また、無線ブロードバント(IEEE
802.11準拠)サービスも同様に大幅値下げをせざるをえなくなります。更に、IEEE 802.11準拠の無線ブロ ードバントサービスも規格を変更し、膨大な設備投資をしない限り2M
以上のブロードバントサービスは提供できません。
こうなると資本とネットワークインフラを持ち、まだ試験運用中の電力会社系はともかく、独立系の無線ブロードバントサービスも事業が成り立たない可能性もあります。
政府が推進するe-Japan重点計画では2005年をメドに高速インターネットの全国4000万世帯への普及を目標としていますが、と りあえずネットワークインフラが整備が優先されるようになりそうです。
さらに、ネットワークインフラが整えば「IPv6(インターネットプロトコル・バージョン・シックス)」にどう対応するがこれからか課題になります。
これはインターネットに接続している機器に割り当てられるIPアドレスと呼ばれる固有の番号を事実上無限にする技術で、交換機を使わない常時接続が可能になります。つまり、これで携帯電話もインターネットも電話もすべて統合されたネットワークが実現する可能性があり、現在の携帯電話もインターネットも電話もその形を変えていくことになります。
このようにネッワークインフラの速度(ブロードバンドの電子的速度) も早くなっていますが、社会の変化の速度も早くなっています。こういうときはその速度に追いつくことばかりを考えるのではなく原点に戻りワンテンポを置いて眺めてみましょう。
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