ゴールデンウィークいかがお過ごしですか。お休みを楽しんでいる方、お仕事の方もいらしゃるでしょう。 今回は「東京国際ブックフェア2001」のレポートです。 「東京国際ブックフェア2001」の内容は著者・出版・印刷・流通・ 読者など多岐に渡るイベントですが、ポイントは「1.電子出版」、 「2.オンデマンド出版」、「3.動向」です。 1.電子出版 ・MS e−BOOK(マイクロソフト) 紀伊國屋書店のブースではe−BOOKの日本語版の電子本をマイクロソフトと共同で販売の予定し出版社に作品提供を呼 びかけていました。 http://www.utj.co.jp/xml/pub/e_book/ebook_1.html#6 ・Acrobat(PDF)eBOOK(アドビシステム) コンピューターのテキスト形式としては圧倒的シェアをもつア ビシステムはAcrobat(PDF)形式のeBOOKを全面に出しア ピールしていました。 http://www.adobe.co.jp/epaper/features/newleaf/main.html このAcrobat(PDF)eBOOKは4/19号で紹介したイーブック イニシアティブ ジャパンが採用し専用のブックリーダーが対応予定です。(こられの展示はいつくかありました。) http://www.ebookjapan.co.jp/ ・T−Time(ボイジャー) 日本独自の電子本として実績のあるT−Timeのボイジャーは新潮社と共同でいつくかのブースでデモンストレーションをしていました。 http://www.voyager.co.jp/news/info_tibf2001/index.html ・Book Jacket2(凸版印刷) 凸版印刷が独自の電子本としてBook Jacket2を公開していて積極的にソフトとサンプルの電子本の入ったCD−ROMを配布 していました。 http://books.bitway.ne.jp/bookjacket/index.html このように電子出版は”ボーダーレス”の状況です。つまり、出版社、印刷会社、書店、ソフト会社が合従連衡して電子出版でのイニシアティブをとろうとしているようです。例えば凸版印刷の場合は電子出版になると印刷物は減少するため、こういう新しいメディ アの規格を作ってその分を補うばかりでなく、印刷事業形態をも変えていかないと生き残れないという判断があります。 2.オンデマンド出版 多くの印刷会社が少数部数で安価に本をつくれることをアピール しており、大日本印刷は出版社6社と共同で「リキエスタ」というシステムをつくり「すぐれたテキストを、簡素で美しい文字組と造本で」 作成・展示してました。 http://www.honco.net/richiesta/ また、大手出版社・印刷会社のオフセット書籍印刷を手がけている平河工業社では先に挙げた得意先以外にオンデマンド出版をタ ーゲットにして会場で営業していました。 http://www.hirakawa-kogyosha.co.jp/top.html 変わったところでは香港のウィンガイドグループが日本での印刷、書籍制作の受注を積極化していました。 http://www.netropa-asia.com/winguide/ 4月5日から7日まで開催された「ON DEMAND Printing Japan 2001」 は「印刷ビジネス・事業としてのオンデマンド出版」としてのイベントでしたが、今回は「出版としてのオンデマンド出版」(4/19号風に言 えば「文化としての出版」と 「事業としての出版」の両方の意味)がずいぶん具体的展開されてました。 「自費出版」とは違った「出版としてのオンデマンド出版」が本格化してきたようです。 3.動向 今回の注目は「ebook-print イージーオーダーブック」です。 パソコンや、PDAなど、インターネットに接続された端末から、 読者の皆さまは、ebook‐print.com(本サイト7月15日オープン予定) にアクセスいただき、全体の検索システムを使用するか、各著者・出版社のサイトにアクセスをし、好きな著者名、ジャンルなどから、検索し 、欲しい本が見つかれば、その場で、注文し、コンテンツデータのダウンロード販売をいたします。そしてお客さまがそのコンテンツを活字本としたい場合は、イージーオーダーブックの注文が、その場で、本サイ トで、あるいは後ほど注文することができます。 http://ebook-print.com つまり、電子出版とオンデマンド出版の両方に対応する柔軟なシステムです。このシステムを開発したのは印刷・出版系以外の異業種からの参入してきた会社です。 それは電子複写機のメーカーの「コニカビジネスマシン」と住友金属系のシステム会社の「住友金属システムソリュ ーションズ」です。 このシステムのもうひとつの重要な特徴は既存の流通経路と関係なく電子本もオンデマンド本も売ることができるということです。 もうひとつは、アドビシステムのDTPソフトの”Adobe InDesign”です。 日本語でのプロフェッショナルパブリッシングのために開発された次世代のページレイアウトソフトウェアです。日本語ページレイアウトのワ ークフローと、緻密なタイポグラフィーのコントロールをデスクトップ上で提供するこの革新的なアプリケーションにより、プロフェッショナルユースの高品質かつ柔軟性に優れたデザインツールを提供します。 http://www.adobe.co.jp/products/indesign/main.html 従来DTPソフトとして使われているQuarkXPressは日本語の処理にはいくらか難がありました。日本語用に作り直したといわれるQuark Killer” Adobe InDesign”には本格的な日本語組版が可能なるという期待が高 いです。(できるかは未知数ですが。) このように出版の世界も既存の業種や国境を越えて”ボーダーレス”化していきます。そして電子出版、オンデマンド出版やシステムも従来とはまったく異なった新しい技術も数多く出てきています。 しかし、このような新しい動向ばかりでなく現状をしっかり把握し具体的方法を展開していたのが未来社でした。 ブースは他の出版社とは違わないのですが、未来社の提唱する「実践技法」のミニCD-ROMを配布していました。この「実践技法」の詳細は本になっています。
この本は未来社の社長である著者が評論やルポではなく現場に密着 し「著者から印刷所のオペレーター」までのすべての人に向けた書かれたマニュアルです。この本はには「テキストエディタをはじめとする各種プログラムファイルを同梱したミニCD-ROM」をつけるという具体的方法を提示しているばかりでなく、著者の出版への想いやがあふれてます。 「出版のためのテキスト実践技法 [執筆編]」 著 者: 西谷能英 発 行 元: 未来社 発 行 日: 2001年4月10日 本体価格: 1,200円 判 型: 四六 ペ ー ジ: 128 I S B N: 4-624-00021-8 付 録: テキストエディタをはじめとする各種プログラムファイルを同梱したミニCD-ROM 「本書は、こうした予測のつきにくい一般状況にもかかわらず、出版と いう事業形態、書物というデータ保存形式がとりあえずは必要でありつづけ残りつづけるだろうという観点から、書籍出版のあたらしいありかた について技法論的考察をくわえ、具体的方法を提示しようとするもので ある。」 (同書 「はじめに」より) 朝日新聞(4/16 朝刊)に関連記事があります。 http://www.asahi.com/culture/topics/K2001041600725.html 未来社 http://www.miraisha.co.jp