『S−Report』  4/19号  紙の本・電子の本 − 紙の本、電子の本(3)   

 
 
このところ、「だれが「本」を殺すのか 」(佐野眞一 プレジデント社)など本の将来像について書かれた本が話題になっています。

 「だれが「本」を殺すのか」も刺激的なテーマですが、今回は 「電子の本」についです。このレポートでも前々から出版流通 (2/15号)や電子テキストとサイト(3/22号)などいくつかレポ ートしてきました。

 現在、出版社が電子テキストのネット販売を始めていますが 、こういった企業ばかりでなく作家自身が個人的にも自分の作 品を電子テキストのネット販売を始めています。その目的は宣伝であったり、ファンサービスであったりいろいろです。 このような中に作家たちが自ら運営してる作者直販サイトと してe-NOVELSというサイトがあります。
 http://www.e-novels.net/  
  e-NOVELSはプロの推理作家等が既発表の短編を電子本で販売するサイトです。これまで無料で公開されいる作品は書 き下ろし・未発表のエッセイ・評論のみで書き下ろしの小説は公開されることはありませんでした。
 しかし、今回から二階堂黎人氏の連載小説『宇宙捜査艦<<ギガンテス>>』が書き下ろし小説として初回のみですが無料で読めるようになりました。
 また二階堂氏のサイト「二階堂黎人の黒犬黒猫館」には(http://homepage1.nifty.com/NIKAIDOU/より)「e-novelsにて、『宇宙捜査艦《ギガンテス》』の連載が4月17 日(火)から始まります(初回は無料ダウンロードができます)。 合わせて、二階堂黎人特集(評論特集)が組まれていますので、ぜひ御覧ください。」とあります。初回のみとはいえプロが無料で作品を公開するというところに、プロも紙の本ではなく電子の本も対象にして執筆をす るようになったようです。

 このような作家の動きに対して既存の印刷会社や出版社が共同で設立したテキストやマンガ等の電子化及び配信サービスの 会社である株式会社 イーブック イニシアティブ ジャパンでは専用のブックリーダーを発表してます。つまり、パソコンなどを使わずこのブックリーダーつまり電子の本専用機で電子テキスト・マンガの読めるようなにしようということです。
 http://www.10daysbook.com/  

 イーブック イニシアティブ ジャパンは紙の本がなくなっても印刷会社や出版社が出版関連事業が続けられるような方向です。ただ、肝心の専用のブックリーダーの試作機の出来はいまいちのようですが今後はこのようなものが普及するかもしれません。 また、複合商品化したPDA(電子手帳)携帯ゲーム機でも読めるようになるかもしれません。(3/15号) その他にも、このサイトではDVDの大容量を活用してマンガなどを全巻提供するという試みもなされてます。(特に、現在マルチメディアとしてのDVDのあたらしい使い方を検討している私たちにとっても参考になります。)
 このような「だれが「本」を殺すのか 」や「電子の本」へ向かう動 きにの底には出版の世界の危機感があると思います。IT化の影響、ブックオフを始めとする大規模古本チェーンの影響もあり新刊 があまり売れなくなり、採算性の問題がある本は出版されなくな りつつあります。作家や出版関係者のこの危機への対応のあらわれです。

 本が売れない時代に出版を支える制度としての再販制度についても真剣に論議されて(2/15号)いますが「文化としての出版」と 「事業としての出版」の問題は難しく一概には言えません。

 しかし、この問題は媒体が「紙の本」であっても、「電子の本」であっても課題として残ります。目新しい「電子の本」でもこのことは考えなくてはならないのではないでしょうか。

 イベントの紹介


 この現状を関係者はどう考えてるのか、どうしようとしてるのかに ついて参考になると思います。

東京国際ブックフェア2001  
 http://web.reedexpo.co.jp/tibf/exhibition.html  

趣  旨:      
 東京国際ブックフェアは、書籍・雑誌・コミックから、自然科学書、人文・社会科学書などの専門書、児童書、学習 書、さらには最新のデジタルパブリッシングまで、世界中のあらゆる出版物が一堂に集まる日本最大のブックフェアです。
日  時: 2001年4月19日(木)〜22日(日) 一般公開日21〜22日  
場  所: 東京ビッグサイト    
主  催: 東京国際ブックフェア実行委員会  
入場料 : 1200円(消費税込み)

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