『S−Report』  3/22号  ネットは楽座楽市に − 紙の本、電子の本(2)

 
 
以前、このレポートで出版・流通の革新について触れましたが出版・流通関係者以外にも多くのメールを頂き関心の高さが伺 えました。
  このごろ本のありかたについての本もたくさん出されていますしやはり本の将来について考えてる人が多いようです。最近はマイクロソフトのe-Bookの本格化、各種電子本プロジェ クトの事業化、作家の運営による作者直販サイトとしてeNOVE LSなどの「紙ではない本」のありかたはますます進化・多様化しています。(この点はまた今後詳しくレポートします。)

  ところが個人でネットで電子本(テキスト)を販売しようとすると いろいろな問題点も出てきています。 今回、ノンフィクションライターの中田潤さんWebsite(ホームペ ージ)を構築するために打ち合わせを行っていて問題になったのもこの点でした。最終的には中田さんが著作や文章をネットで販売する目的でこのサイトを企画した訳ですが、

「どうやって、本のおカネを徴収するわけ?」 「その手数料が…」  
 そんな打ち合わせをしてたわけ。
 彼の話によると、ネット上でクレジットカード決済をすると、事業主には莫大な手数料コストがかかるとのこと。電子マネーも今のところは顧客にとっては手間がかかり事業主には手数料が高すぎる。私らみたいな小商いをしようとする場合、手も足も出ない状況なのだ。
 そんなことも知らない私がアホなんでしょうけどね。
「結局、郵便振り込みが一番安いんだよね」
 パソコンを閉じて、郵便局まで自転車走らせなきゃならんのか。 IT革命の正体ってそんなものなのね。
インディーズのバンドやってた頃(80年代)のほうがまだ、自主流通のなかのゼニカネは実感があったような気がする。
  (中田潤オフィシャルサイト   「JUN−K−TEXT」より −現在試験運用中−)

  元インデーズバンドのボーカルで今は野球選手・プロレスラーから銀行役員までインタビューしていろいろな世界に精通している中田さんでさえあきれるような「IT革命の正体」、ネット決済のこれが現実です。
  自分で販売サイトを運営されてる方はクレジットの手数料やウエブマネー、その上をいくショッピングモールサイトの加盟・利用料の額をよく知っていしらっしゃると思いますが、小額の商品を少量売るにはこれらの決済システムは適してません。
  書籍の流通と同じで資本力や(書籍取次のように)既存のルートがある企業が有利になります。 また販売者もネット取引の安全性や確実性を考えると高額の費用を払ってショッピングモールサイトに加入するようになるかもしれません。
  つまり、高額商品や多量に販売できるもの以外は小さな商いは難しくなりつつあります。もちろん郵便振込で代金徴収を行 っているサイトも多いわけですが、ネットの世界ではネット決済・ウエブマネーなどがあたりまえになるようにいわれてます。

  中田さんのいうゼニカネの「実感」は私たち生活者の実感でもあり、そういう実感に基づいた商いがネットから駆逐される危険性を含んでます。
 今進行しつあるネット経済?は二重の意味でこの実感を失っています。
 まず、ネットが経済の起爆剤になりうるとはいえ、ネット自体は経済活動の重要な基盤ではありますが、その一部を担うもです。また、確かにある程度は既存の流通や情報産業の代替えとして機能し、また、経済の質の変化・パラダイムチェンシの大きな要素である と思います。しかし、ネットバブルという言葉が当たってるかどうかわかりませんが、言われるほどネットで現在の経済が良くなった実感はないです。
 次に、ネットで展開されてるトレーディングは実感としての商いの感覚を喪失し、平板な商取引になっています。商いにともなうコミュ ニケーションがないネットの取引きは人が日々の生活の中で必要とする商いの完全な代わりにはならないです。もちろん、ネットの中でもコミュニケーションをとりながら商いをしている例はあります。(いや、そういうコミュニケーションをメールのやり取りとかメールマガジンなどでとらないとネットでの取引はうまくいきません。)
  このように生活者の実感とかけ離れたところでITが国家事業や民間事業として行われ小さな商いがやりににくなるのが現実のようです。

  歴史を溯ると中世の商業・産業の発展も制限された交換経済から「楽座楽市」による小さな商いの自由な活動が経済を活性化・発展させました。江戸時代に入りこれが統制経済に移行し全般的に経済は一種の停滞期を迎えたといえます。ちょうど今、ネットはいろいろな意味で開放期から統制期にはいりつつあります。

 こういう時期だからこそ「ネットと実感の温度差」をここで考え直してはど うでしょうか。
 ここにネットが新世紀の「楽座楽市」になりうるかの鍵があると思います。

 サイトと本の紹介


 
今回、取り上げた中田潤さんのサイトが3月28日より正式公開されます。
 
 「JUN−K−TEXT   Writer JUN NAKADA on the Web」

  http://homepage2.nifty.com/junkt/

 「JUN−K−TEXT」ではスポーツ選手を取材している過程で雑誌では発表されない物語などを「ここまでしか書けない!」のコーナ ーでほぼリアルタイムで提供しながら、未発表原稿等も読めるようにした徹底的に活字にこだわったサイトです。
 野球・プロレス・競馬から社会・経済迄広く中田さん的なモノの見方でこだわっておりますので一度見ていただければ幸いです。

 

 
また、同じ日に中田さんは『新庄君はアホじゃない!』が飛鳥新社より刊行されます。
ご覧いただければ幸いです。
「わからないです。バッティングのことはあまり聞かないでください (白い歯がキラリ)」
宇宙人に接近遭遇してしまった私の、愛と憎しみと腰砕けと激怒とバカ騒ぎと至高の日々……。
ジャイアンツ・ファンには絶対に味わえない野球の解放感に満ちた待望の「新庄本」。
新庄こそが野球だ!
              −別にジャイアンツ・ファンもどうぞ。
 
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