『S−Report』  12/24 千年紀と百年紀 − TraditionからRenaissanceへ

 
  2000年を過ぎてもうクリスマスは3回を過ぎました。
  さて、百年紀でも遠いのに千年紀というとすごく遠いですね。

  11月に哲学者の鶴見俊輔さんが東京に来られました。東京は嫌いと言われる鶴見さんが生活に密着した活動をしている女性たちや空襲を意味を問いなおす人々、ピースウォークを行っている若者たちの求めに応じて「千年紀を一人で生きる心がまえ」というテーマで話されました。
(以下の内容はそのお話とそれに関連して私と鶴見さんとの「退行計画」のに関する問答[禅問答みたいでしたが]からです。)  

  その内容はテレビドラマ「ランチの女王」を見て鶴見さんが思いついたことからでした。

   「ランチの女王」  http://www.fujitv.co.jp/jp/lunch/  

  それも「ランチの女王」のストーリーとは関係ないこのドラマのひとつのシーンに考えさせられたという話です。
  それは、主人公の麦田なつみ(竹内結子)が鍋島純三郎(妻夫木聡)に抱きしめられて、それをふりほどいて逃げ出して、ある所から全速力でも戻ってきていきなり純三郎を跳び蹴りをするというシーンです。
 これを見て、鶴見さんは「現代の状況から一度、過去に戻ってその時代を検証して、再び現在を問いなおす。」ということが「千年紀を一人で生きる心がまえ」として必要ではないかと提案していました。

 この話はいつもの鶴見流で、ご本人には「ランチの女王」と「歴史と現在」の関係は明らかなのでですが「ランチの女王」と「歴史・哲学」の両方に精通していないと分かりにくいものでした。 (このときの参加者は若い女性でも「歴史・哲学」には精通していても「ランチの女王」は見ていない真面目な方々だったので困りました。というか、参加者のうち私しか「ランチの女王」を見たことがなかった!)

 さて、次に「現代の状況から一度、過去に戻ってその時代を検証して、再び現在を問いなおす。」ということを具体的に19世紀末から20世紀初頭(幕末から明治前期)までに遡って語られたのですが、これを明治の戦争の大将である児玉源太郎について語られたので「歴史と現在」に精通していて戦争を憂う真面目な方々はますます分からなくなってしまいました。

 まず、ここで鶴見さんは「日本は歴史ではどの時代でもどこかの国をお手本にしてやってきた」と言われているが、新しい時代にはお手本がなく、「お手本のない中で、もがいてつかみ取ったものが日本の新しい独創的なもの」になっているということを指摘されました。
 つまり、19世紀末に西欧文明と接触して、それまでのお手本であった中国文明から西欧文明にお手本を変えるのか、どうするのかという混乱の中で幕末の人々や児玉源太郎が模索したものが20世紀の日本の土台となったということです。

 しかし、それ以降は西欧やアメリカをお手本に進めていくことになり、その独創性は失われていき、20世紀末からはこのような遺産で食いつないでいる状態であるということでした。
 そして、今は世界がお手本を失い混乱しつつあるので、この中から「お手本のない中で、もがいてつかみ取ったものが日本の新しい独創的なもの」が21世紀の土台になるだろうし、千年期を生きる生きる心がまえとして必要だということです。

 最近、越前伝統開発研究会(OPEN DOOR)から今月東京青山291で行われた「101展−100の伝統と未来の1」の来場お礼のハガキをいだきました。 越前伝統開発研究会は千四百年以上の歴史に培われた越前の伝統技術を活かして新たなライフスタイルや価値創造を目指しています。今年は特に「千年芸工」を目指していろいろな活動をしていました。(5/16号 「オープン・ドア」 )

 そのハガキには”TraditionからRenaissanceへ”とありました。

 政府・行政や大企業の方々はいろいろな「お手本」を示して「百年の計」とか口ではおっしゃっておきながら、実際は政策やポリシーが十年も持たないことです。

 これでは千年の伝統の上に千年芸工を目指す越前伝統開発研究会の活動には及びません。
 今年は具体的にいろいろなことを行うことで地域から国や社会を相対化してきました。そして、鶴見さんのいうように歴史から現在を相対化することも重要だと思います。

 来年は地域からと歴史から国や社会を相対化しつつ、「お手本のない中で、もがいてつかみ取る新しい独創的なもの」を目指したいと思います。
 そうはいってもかっこのいいものでにはなりませんが。

 そういうことで、最後に鶴見俊輔さんの今年の文章で終わりたいと思います。
 
 八十歳にひとつきをあまし
 ひとにほこれるものは何もなく
 おのれにほこれるものは、
 運だ。
 あれ、
 これ、
 それ、
 をさけることはできた。
 そのくらいのことか

  鶴見俊輔「意外になが生きして」   「はなかみ通信」其の四通 2002年5月20日  


   お勧めの本とテレビドラマ 


 
毎年恒例の今年のお勧めの本とテレビドラマです。 (今年は他のことが多くて特集できましせんでした。)

○お勧めの本

 鶴見俊輔 全著作リスト http://www.andrew.ac.jp/sociology/teachers/harada/profile/benkyou.html#books

  とてもたくさんあるからとりあえず。

  『太夫才蔵伝』(平凡社)
  『アメノウズメ伝』(平凡社)
  『日本人のこころ:原風景をたずねて』(岩波書店)
  『鶴見俊輔座談』(全10巻、〜1996年 晶文社)
  『鶴見俊輔集』(全12巻、〜1992、筑摩書房)  

○お勧めのテレビドラマ

 「ランチの女王」−ビデオレンタル中  http://www.fujitv.co.jp/jp/lunch/  

  鶴見さんがどうこうではなくてもおもしろいラブコメです。   


   劇場バリアフリーを目指した劇場上映の試み


 映画 「AIKI」 劇場バリアフリーを目指した劇場上映の試み

 「AIKI」公開中  各地劇場で

    日活  http://www.nikkatsu.com/   「AIKI」 http://www.aiki.cc/  

. 「AIKI」第59回ベネチア国際映画祭正式出品作品日活創立90周年記念作品


 ○  五つ星満点! サンデー毎日 11月17日号
 ○ 「ピンポン」に続く元気が出ること間違いなしの爽快青春映画 パウゼ12月号
 ○ 「人にとって大切なもの」が詰まった映画でした。とてもよかったです。 井上雅彦さん漫画家・「リアル」作者

 ボクシングに情熱を傾けていた芦原太一(加藤晴彦)にその悲劇が訪れたのは、新人王決定戦の準々決勝で劇的勝利を収めた帰り道だった。興奮冷めやらぬ太一が恋人チカ(木内晶子)を乗せたバイクに、一台の乗用車が突っ込んできたのだ。 不慮の事故は彼のすべてを奪った。医師の診断は脊髄損傷による下半身麻痺。太一はあれほどまでに打ち込んできたボクシングを捨て去らねばならないばかりか、一生、車イスの生活になると宣告される。 夢を失い、自暴自棄になり、「ただ生きてるだけじゃダメなんだ!」と一度は自殺すら考えた太一 。

 だが、偶然、座ったまま、力を使わず門弟を投げ飛ばす師範の鮮やかな技を見た太一は、その<AIKI=合気柔術>に入門を志願する。 主演の加藤晴彦が、見事に車椅子を扱い、主人公の太一をリアルに体現しているのも大きな見どころ。だが、これは間違っても障害者を特別視した映画じゃない。スゴい武術を見せつけるアクション映画でもない。

 映画が描くのは、状況は違っても誰もが一度はブチ当たる試練や障害、それを乗り越えていく普遍的なドラマ。胸を熱くする感動と共感がある、爽快で前向きな青春映画なのだ。

 この「AIKI]の上映にあたり、 「情報提供電話&チケットテレフォンセンター」 のサービスを実施します。

●情報提供電話  03−3664−2539 AIKIホームページの内容を電話(自動音声)でお聞きいただけます

●チケットテレフォンセンター 03−3980−5866 サポートが必要な人とサポートする人のチケット購入ができます 電話またはファクスでお受けします。 チケット受け取りは劇場窓口で。

・お身体など障害の状況をおうかがいし、 対応できる映画館を出来る限りお伝えします。
・各映画館で何が出来て、何が出来ないかを、 お客様に事前にお知らせします。

☆団体販売 簡単な団体登録をします チケット料金
  1枚1000円 ただし10枚以上まとまれば  1枚900円に割引します。
☆個人販売 連絡先、障害の状況等を伺います チケット料金 1枚1000円

●売上金の一部を劇場のバリアフリー化推進に使わせていただきます。

●バリアフリーシアタージャパンに賛同し、協力しています。
○株式会社フェローは電話(自動音声)でお聞きいただける情報提供電話を担当します。
○株式会社プラーナはテレフォンセンターの運営と観客データベースを担当します。

バリアフリーシアタージャパン T&F 03−3971−9577 MAIL tegami@bft.jp  

※音声ガイドは1月中に実施の方向で、現在調整中です。


   世界情報社会サミット(WSIS)


  世界情報社会サミット(WSIS)アジア地域準備会合 (1月11日〜15日) NGO参加のよびかけ

 世界情報社会サミット(WSIS)は、国連が主催するサミットで、2003年12月に ジュネーブで、2005年にはチュニジアで開催される予定の大規模な国際会議です。
 このWSISのアジア地域準備会合が、日本政府がホストして、来る2003年1月13日 から15日まで、東京・高輪プリンスホテルで開催されます。それに先立つ1月11日・12日 には国連大学でNGO中心の「サイドイベント」が開催され、両方を含めてアジア・太平洋地域から多くのNGOの人々が参加する予定です。

 「情報社会」をテーマとするこのサミットは、各国政府、国際機関に加えて、産業界、 NGO(市民社会)も重要な構成メンバーとされ、対等の立場で参加できるものとされています。情報技術を推進剤としてグローバリゼーションが進む世界の流れのなか で、いま形成されつつある情報社会とはどのような社会なのか、どうすれば市民に とって真に望ましい情報社会ができるのか、情報の富者・貧者、いわゆるデジタル デバイド問題にどう取り組むべきか等々、国際的な視野で議論すべき点は多々あ ります。  
 
この東京会合では、言語や文化の問題、デジタルデバイド問題を含めて、アジア 型社会の特色、本質を踏まえて議論を行い、サミットそのもののテーマ設定の準備 プロセスに、アジアからの声を主張し、フィードしていくことが目的です。
 アジアのNGOは、11-12日に、Youth, Gender, Pacific Islands, Communication Rights,Defining Information Society といった独自テーマでのプレイベントを国連大学にて 開催します。こちらは原則として事前の参加登録は不要です。
 日本では、十分な広報活動ができていないこともあって、この会議への関心はま だまだ低いのが実態です。開催まで一ヶ月を切り、日にちもないところを恐縮です が、皆さんの参加をぜひ呼びかけたいと思います。

 なお、参加するためには申込み・登録が必要です。締め切りは1月3日の予定です ので、ぜひ至急お申込みください。
 申込みは、http://www.wsis-japan.jp からお願 いします。13-15日は日英の通訳も用意される予定です。

  WSIS日本NGO委員会 事務局:国際大学GLOCOM (担当:会津泉、Adam Peake、増田由美子) 

   e-mail: ap-wsis@glocom.ac.jp


 

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