『S−Report』  11/28  自転車こいでインターネット ”But we would love to learn and explore."
                −「持続可能な地域開発におけるICTの活用戦略」日本語バネル中間報告

 
  「テーマ2:適切な情報通信技術」でこのような事例が提示されました。

 ラオスは他国と比べコンピューター普及率が低いのですが、そこで今ジャイ・ファンデーションがICTプロジェクトを実施しています。これが興味深いんです。 もともとラオスの村などで井戸掘りや工芸細工作りをしてたんですが、現地の人々が本当に欲しがっているものがインターネットへのアクセスだと知りICTプロジェクトを始めました。
  だからといって、コンピューターを送りこめばいいなんて簡単なもんじゃありません。

対象はラオスの都心から離れた地域なので、村民に適したPCを開発しました。

(1)たいていの環境では壊れない耐久性
(2)少ない電力で動く
(3)とにかく使いやすい ラオスの電気も通ってない村でインターネットにアクセスできるのです。電力はなんと自転車発電。自転車をこいでインターネットにつなげるんです。

  このおかげで電話もできるようになります。 来年から実際に利用できるようになるのですが、インターネットにより広がる村と人々の可能性に大きな期待が寄せられています。
 まだ5つの村でしか実施されませんが、成功はこの開発されたPCがどれだけ村民のニーズを満たしているかにかかっていると思います。 このプロジェクトについての記事はここです。英語ですがそんなに長くないし簡単なので是非読んでみてください。  
  http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/asia-pacific/2495537.stm
  みなさんのご感想をお待ちしてます!
 「自転車こいでインターネット」長谷川まい

  長谷川まい様
 
  大変重要な事を教えて頂きありがとうごさいます。具体的なことを書かせていただきます。
  (以下、引用は上記の発言と上記BBCの記事からです。)
  「ペダルの力によって、ラオスネットの夢を動かす」  
  ”Pedal power drives Laos net dreams”By Alice Donald "BBC East Asia Today”

1.JhaiPC(ジャイ・ファンデーションの開発したパソコン)・パソコン単体の適正技術の可能性について

(1)記憶装置−たいていの環境では壊れない耐久性
「壊れやすいハードディスクの代わりに、JhaiPCはデータを格納するためにフラッシュメモリチップに使用しています。」

  フラッシュメモリチップ(EEPROM)は今後、パソコンの記憶媒体として普及していくことになります。
1 - 2004年頃にはハードディスクと価格が同等になりえます
2 - ハードディスクと比較して面記録密度の限界がありますが省スペースは関係ないので不便はない
3 - 省電力効果が大きい 4 - パソコンのOSもフラッシュメモリチップに搭載されることで起動が早くなり、また、ネットアクセスも早くなる
(将来はパソコンのOSもフラッシュメモリチップに搭載されることになる−現在も、WIN-CE系は実装)

(2)電源−少ない電力で動く
「Jhai PCは自転車をこいで充電された自動車用バッテリーの電気で動きます。」

  まずは、省電力型の設計でしょうが、今後は多様な電源がありえます。
1 - ソーラー(コスト検討された結果採用されなかったんでしょうが)  
2 - 超小型水力(ラオスに適しているかどうかは)
3 - 燃料電池(ノートパソコンに搭載する試作も行われている)

  燃料電池は化学反応により「水素と酸素から電気と水」を作り出すものです。
  *排気が非常にきれいで環境にやさしく発電効率が高い*
  *天然ガスから取り出した水素も使えるが、バイオマスエネルギーでも可能*
  **水も作れるので広く地域開発で使ってほしい**

(3)OS−とにかく使いやすい
「村民が使えるようにJhaiがカスタマイズしてLinuxベースのソフトウェアのラオスクリプト(Lao script)を作った。」

1 - ライセンスフリーであるLinuxはコストの面でも効果を発揮します。
2 - そして、Linuxはオープンソースなので自由なラオスクリプト(Lao script)の開発が可能です。


2.LaoNet(ジャイ・ファンデーションの作り出したICTネットワーク)・ICTネットワークの適正技術の可能性について

「個々の村PCはワイアレスなインターネットカードを経て最も近い町にあるソーラー発電の頂上中継局に接続されます。町ではラオネットの電話システムとインターネットと接続されます。」

 現在は上記の方法で行われているようですが
1 - 現在進行している無線ルーティングプロトコルの研究開発やアドホックネットワークの開発によってより省電力型の効率の良いICTネットワークが可能になります。
2 - ワイアレスインターネットカード(IEEE802.11b及びIEEE802.11系)の価格は普及度合が高まるに従って価格が下がっていて、また、アッセンブリも家電程度のアッセンブリ施設・能力で生産可能になります。

3.ICT・情報支援と適正技術の可能性

 現在の途上国、途上地域の都市部の現状についてはaasakuraさんが報告してくれた通りです。
「この正月に調査でラオスやミャンマーといった東南アジアの国々に行きましたが、例えばラオスの首都ビエンチャンでは街中にほとんど公衆電話は無いのに、電話線を使った「インターネットカフェ」が何軒もある(でも利用者は殆ど旅行者だったように見受けられました)、といった、アメリカや日本とは違った、ある意味でちょっといびつなメディア進化が見られました。」 aasakuraさん発言
「このテーマで考えたいこと」「テーマ7:バーチャルな世界と共生する社会」

 途上国、途上地域の都市部ではこの通りなんだと思います。一部、住民が非常に遅く使いづらいこの「インターネットカフェ」を使ってビジネスに役立ている例はあるようですが。

 LaoNet・ICTネットワークが導入されたことによって「ちょっといびつなメディア進化」とは違うオルタナティブなメディア・ICTによって地域の改善が達成されたと思います。
 ・農産物の市場情報の入手・海外マーケッティングの可能性・知識習得・etc−上記BBCの記事  

 さて、ここでひとつの(オルタナティブな)可能性について

1.ICTソフト開発支援の可能性−実現されていると思う
 LaoPC,NetのOSであるLinuxはオープンソースなのでラオスクリプト(Lao script)の開発を世界中で支援し、即座にネットワークを使って現地に送ることが出来る。つまり、自宅ネットワークボランティアの可能性

2.情報支援
 LaoNetによって現地でいろいろな情報を入手出来るようになると同時に、その情報支援を行うことが来る可能性

3.ハード・情報通信インフラ
 ハードや情報通信インフラのICT情報通信技術における「適正技術」の検討を行う必要があります。

 長谷川まい様より

  現在のところラオス国内にICTのスペシャリストがいると考えるのは難しいと思います。開発するような設備もありません。ですから技術面、設備面、ICT関連のものはすべて輸入になっています。
  ですが最新のテクノロジーに触れることができ、コンピューターのある生活が当たり前の国にラオス語ができる人材がたくさんいます。ラオスから移民してアメリカやヨーロッパに住んでいるラオス人がいます。アメリカ・カリフォルニア州にはラオスコミュニティーがあるぐらいです。彼らを通しベスト結果をもたらす開発ができるのではないかと思います。

  私は特に長岡様があげられた、「2.情報支援」と「3.ハード・情報通信インフラ」に着目しました。 情報というのは常に増え変わっていきます。それをどのように支援し続けるかというのは大きいと思います。
  例をあげてみますと私が今年ラオスに行く際ホームページで検索したのですが、情報が一年以上も前のままだったり、作ったっきりのホームページだったりと少し困りました。また凝りすぎて重いページもあり、ラオスだったらどれだけアクセスに時間がかかるだろう?と思うようなのも。ハードもソフトも技術面で課題は山積みのようです。 (一部略)
  長谷川まい

  さて、このごろ国際関係や環境NGOの若手の方々の広報の講座で勉強させて頂いています。ここでは熱心に自分たちの思いを伝えたいということだけではなく、どうやったらきちんと伝える事ができるのかをみんな真剣に学んでいます。
 これからのNGO・NPOの将来は多くの人たちにNGO・NPOを理解してもらえるかにかかっています。
 また、同時にNGO・NPOが自分たちの活動をきちんと説明し、理解してもらい、それだけにとどまらず責任のとれる体制をつくれるかにかかっています。 (単なる「説明責任」ではなく「MutualAccountability(双務的・互恵的アカウンタビリティ))  

 その先にICT情報通信技術の適正な利用により、例えば「自転車こいでインターネット」とそれを現地と国外でサポートする人たち、例えばカリフォルニア州のラオスコミュニティとラオスの小さな村をつなぐようなプロジェクトが、  また、現地でいろいろな情報を入手出来るようになると同時に、その情報支援を行うことが来る可能性も含めた「NGO・NPOジャーナリズム」や「情報NGO・NPO」 が生まれてくるのだと思います。

 最後にBBCの記事からICT情報通信技術を人々にとって適正に活用した「自転車こいでインターネット」により農産物の市場価格などの「情報が得られるようになった」村のその後のお話でこの文章を終わりたいと思います。

"We've never used the internet before, so we don't know what's there," says Vandone's husband Khamphan. "But we would love to learn and explore."


★2004年追記

というはずであった。
しかしながら、佐賀健二氏の現地調査によるとラオス政府のとトラブルによってこのプロジェクトは挫折している。
 

   イベント紹介


 
国連地域開発センター 「持続可能な地域開発におけるICTの活用戦略」開催中

    http://www.uncrd.or.jp/ict/eworkspace/japanese/

 e-ワークショップ(ネット会議場)日本語

   http://www.uncrd.or.jp/ict/cgi-bin/jyabb/YaBB.cgi?board=;action=logout

 日本語バネルではこのこういう外国の話は少数です。日本の具体的な現場発、現場への議論がされています。ぜひ、ご参加を。

 

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