『S−Report』  11/7  たんほぽの綿帽子のように  − まちづくりのあらたな展開を求めて−1
                 SEEKING FOR A ROLE PLAYED BY STUDENTS IN TOWNPLANING
 


 10月25日に「学生まちづくり学会2002」(後援 埼玉県、さいたま市、週間まちづくり、まちしゅう、建築学会埼玉支所)が開かれました。
 「学生まちづくり学会2002」は地域のまちづくりを支援する学生が自らの役割を模索する試みで今回が初めてです。

企画趣旨

 学生が主体となり高い志をもって活動をしている団体や研究室が集まり、参加団体の活動内容や活動事例の紹介を行います。学生が地域活動に参加することで『学生が地域に貢献をする時に、学生側も机上では得られないことを経験している』といえるでしょう。どのような貢献をし、どのような経験を得ているのか、どのような組織運営を行っているかなどを実際の活動事例をふまえて紹介してもらいます。  

  お互いの活動内容を知ると同時に下記のようなテーマについて意見交換を行い、その後、交流会を開らくことで他団体との交流の場にしたいと考えています。

ディスカッションテーマ

1.活動の外的要素や効果 どのようなきっかけでプロジェクトを始め、地域に対してどのような貢献ができたのか
2.活動の内的要素や組織運営 団体がプロジェクトを通じてえたもの、また、プロジェクトを行うための組織運営方法など
3.活動の参加による個人的要素. 参加者自身がプロジェクトにどのような考えで参加したのか、また参加して得たことなど

 http://www40.tok2.com/home/basket/gakkai/

 学会となっていますが、ボランティア学会(7/11号「コミュニティの力とのまちのカルシウム-潜在的なコミュニティの力」)と同じく、実践性を持ち、そのあり方を問うもので、普通の「学会」とはまったく異なります。
 そして、この会の名前を活動報告会・交流会ではなく、あえて「学会」としたところに志の高さと、これからのまちづくりのあらたな展開を予感させます。

 学会はコーディネーターである小泉秀樹氏(東京大学大学院助教授)の的確な進行のもとに始まったパネルディスカッションはパネリストたちの具体的で実践的な事例報告と活発な質疑応答がありました。
 内容は、上原佑貴氏(早稲田大学後藤研究室、地域づくりインターンの会・事務局長)による山間地域の地域間交流プログラムデザインの報告、藤原美保氏(千葉大学都市計画研究室、菜の花里美発見展事務局)による「菜の花里美発見展<アートユニバーシアード>」の報告、天野裕氏(東京工業大学土肥研究室、玉川まちづくりハウス)のまちづくりとの関わり、田島寛子氏(芝浦工業大学水口研究室、学生NPO「場助っ人」事務局長)による学生NPO「場助っ人」のまちづくり市民活動への支援活動報告など同じ学生まちづくり活動といってもいろいろな活動が発表されました。

 これだけでなく参加者からも自分たちの活動が報告され各地で学生が自主的にまちづくりに参加しいてることが分かりました。
 もちろん、今までもまちづくりの「学生ネットワーク」はありましたし、JCCI(日本商工会議所)も「街づくりインカレ」などで紹介していました。
 しかし、いろいろな地域から学生たちが自ら集まり、お互いに知らないうちに同時多発的に「まちづくり支援の学生ネットワーク」を模索し、相互にコネクト(つなぎ)始めていることが分かったことに大きな意味があると思います。   (関心のある方は、ぜひこの「学生まちづくり学会2002活動紹介集」を入手してお読みください。各地の学生まちづくりの現状などすごく良くできています。)

 各大学の多くの研究室の他に参加した主な「まちづくりの学生ネットワーク」「まちづくりの学生団体」です。

地域づくりインターンの会(非公式サイト)  http://www11.u-page.so-net.ne.jp/zb3/tshiba/intern/  
                           http://www3.vc-net.ne.jp/~eisuke/web/chiiki.htm
まちづくり市民活動を支援する学生NPO「場助っ人」  http://www40.tok2.com/home/basket/  
まちづくり学生ネットワーク           http://yokohama.cool.ne.jp/gakune/  
日本橋学生工房                 http://www.n-kohboh.jp/  
IEFふれあいキャンパス市川          http://www.cuc.ac.jp/~j910489/ief/
ほんまちラボ                    http://www.ceres.dti.ne.jp/~sun-lab/

 街づくりインカレ(インターカレッジ)−JCCIによる学生まちづくりの紹介
 http://www.jcci.or.jp/machi/incolle.html

(また、サイトe-tiiki.netではこれから大学の研究室も含めて学生まちづくりをご紹介します。)

 さて、9月22日に開催された「まちづくり支援専門家ネットワーク総会」でもあらたなまちづくり支援の方向が提起されていました。
  ここではまちづくりの専門家たちが自分たちが築いてきた従来の「まちづくりにおける専門性」を厳しく問い直していました。そして、討論の中では自戒を込めて従来の専門家とは異なるあらたな「まちづくり支援専門家像」を素描し始めていました。
 この中でまちづくりの先達である林泰義氏は「まちづくりの進展の中で一番力になったのはワークショップなどの技法の普及」だと総括されていました。
 もちろん、その通りですがもう一つ、ここでは「多くの学生たちがまちづくりに参加して多くの地域の力になってきたこと」も加えたいと思います。最初は地域からは単なるお手伝い扱いされていた学生たちが専門的な知識を増やし、力を蓄え、今ではまちづくりを支援する専門家になりつつあります。
 そして、何よりもまちづくりの現場で地域と共に考えている学生たちがまちづくりのあらたな専門性を問い直して、現場から生み出していくことなります。
 もちろん、「まちづくり支援専門家ネットワーク総会」のように彼らの先生たちやまちづくりの専門家たちもまた、厳しく自らの専門分野を問い直し「まちづくり支援専門家像」を確立していくと思います。

 最近あることのためにこの「学生まちづくり学会2002」に参加している学生たちが生まれたか生まれてなかった頃の「全国まちづくり集覧」(ジュリスト増刊総合特集9-1977年)を読み返しました。当時も全国のあらゆるところで<まちづくり>や<むらづくり>が行われ、新しい時代への対応が始まっていました。ちょうど、彼らの先生たちやまちづくりの専門家たちが今の学生たちのような活動を始めた頃ではないでしょうか。
 この冊子の中で当時の新しいまちづくりを展望した文章を紹介します。(イラストにこの言葉がちりばめられているですが、ここでは省略したものもあります。)

  新しい<まちづくり><むらづくり>を総合する展望がほしい。

1.これまでの<ひとつの日本>を目指す専門家の提案は、市民の生活実感から離れ始めた。
2.そこで、日本各地に、考える市民による多様な<まちづくり><むらづくり>が展開されたが、
3.これから・・・・・<ひとつの環境>の中に<まちづくり><むらづくり>を総合する展望がほしい。
4.自然の循環系を生かして、狭い国土の中に高密度の人口を支える、日本独自の<地域経営>が出来ていた。 5.流域の連帯をきった都市化は、自然の循環系を破壊した。このままでは、農山漁村も、又、都市さえ自立はむずかしい。
6.新しい時代を、流域のコミュニティの<第3の市民>たちに
7.<第3の市民>のめばえ・・・生活と地域の自立を問い直す<まちづくり><むらづくり>のめばえが・・
8.流域のコミュニティ支える<第3の市民>たちの協同へ・・・
 人間と生活と生産
 人間と土と水
 <まち>と<むら>の結びつき  
 山による連帯も  
 川による都市と農村の連合も  
 海による統一も  
 まちづくり  
 むらづくり  
 日本各地で、<まちづくり><むらづくり>は、新しい状況をむかえるだろう。

                                        つばた 1977    

 津端修一 「全国まちづくり集覧」(ジュリスト増刊総合特集9-1977年)

  しかし、残念ながら1977年からその後のバブルの時代はさらに「流域の連帯をきった都市化は、自然の循環系を破壊し」、現在、その後遺症による長期の不況で全国各地は厳しい状況にさらされています。
 しかし、今でも持続しているまちづくり活動も数多くあり、それらの活動は当時の”新しい<まちづくり><むらづくり>を総合する展望(ビジョン)”を反映してあらたな形で「持続」しています。

 ”新しい<まちづくり><むらづくり>を総合する展望(ビジョン)”は今のまちづくりにも通ずるものが多くあり、ある部分ではこの新しいまちづくりは一段と進歩し、深まったでしょう。また一方では、この新しいまちづくりが形骸化し、公式化して政策に取り込まれたり、停滞している部分もあります。  だからこそ、今またあらたな「新しい<まちづくり><むらづくり>を総合する展望(ビジョン)」が必要になってきていますし、もうその流れは始まっています。

 ここでは「あらたなまちづくり展望(ビジョン)」についてお話するような力はないので、これから「あらたなまちづくり展望(ビジョン)」を生み出すような、もう既に始まっている「まちづくりのあらたな展開」についてレポートしたいと思います。 (ということで、「まちづくりのあらたな展開を求めて」の連載を始めます。)

 この「まちづくりのあらたな展開」の最初のひとつは、まさにこの「学生まちづくり学会2002」に参加した多くの学生、そしていろいろなまちづくりに参加している学生たちが教えてくれた”SEEKING FOR A ROLE PLAYED BY STUDENTS IN TOWNPLANING”です。
 つまり、「学生としてまちづくりのために何をするのか、何が出来るのかを考えてやってみよう」ということであり、このことが従来の専門性や専門家の役割を問い直し、新しいまちづくり支援のあり方、新しい専門性やまちづくり支援専門家の役割を生み出していくのではないでしょうか。
 これから彼らの先生たちや従来のまちづくりの専門家たちと学生たちはいい意味で現場で対立することもあると思います。(既にあるようですが)しかし、そのようなことも含めて地域の中で活動し、地域の人たちとまちづくりをしていく中で新しいまちづくり支援のあり方、新しい専門性やまちづくり支援専門家の役割が生まれてくるのではないでしょうか。
 「学生まちづくり学会2002」のことをあちこちで話していたら、共感を持って聞いてくれる人や同じ様な想いの学生も多かったのですが、やはり「学生が社会に出て持続するかどうかが問題だ」というご意見も多数聞きました。  もちろんその通りですが、このような多くの学生たちかふだんに自分たちの役割を問い直し、まちづくりに限らず地方自治体や企業やあらゆるところで仕事をしていったら大きくいろいろなことが変わると思いませんか。
 
    たんほぽの綿帽子のように
       地に着いたなら、その種から根を張って花を咲かす
          そしてまた綿帽子となり、次の地へと飛ぶように

 最後に今回も学会の開催のためにがんばった学生NPO「場助っ人」の皆さんをはじめとしてお会いしたすべての皆さんに感謝します。

(付記)  まちづくりではありませんが、この同じ潮流の中にNPOキャリナビ(8/29号 「巣立ちの宝箱 1年1組 −「自分探し」の行方」)もあります。

   イベント紹介


 サミットといってもいろいろありますがこれはおもしろい。

 地域寄席サミット

 蔵の中で落語を語る、落語を聞く全国大会です。

 11/12 18:00〜  くらづくり茶屋 埼玉県川越市  

  川越蔵造り落語会 全国地域寄席連絡会

 

 ご購読・ご利用規約
 
 ご意見、ご感想、ご要望をお聞かせください。
 掲載された記事を許可なく使用することはご遠慮ください。
 ご紹介または転載等のご相談は下記までお願いします。
 掲載している情報は各人の責任においてご利用ください。
 『S−Report』は既存の配信システムや問題になっているマイクロソフト社のメーラーを使わず「独自の配信システム」で配信しており、ホストマシン自体にもファイヤーウォール、「最新のワクチン」を導入し必ずチェックを行い対策を とっておりますのでご安心ください。