『S−Report』  10/30 祭り − 伝承から共創へ


 川越祭り10月19日から20日にかけて行われました。今年は川越市市制施行80周年記念ということもあって27台のすべての山車が勢揃いしました。
 同時に、第七回小江戸サミット川越大会が「伝承から共創へ−祭りルネサンス2002」というテーマで開かれました。
 小江戸サミットとは「大江戸との舟運で栄えた街、伝統の町並みのある街、山車祭りのある街」という小江戸の共通点を持つ栃木県栃木市、千葉県佐原市、埼玉県川越市が行っているまちサミットです。
 サミットシンポジウムの他に、大会参加者の中から希望者100名に大手町の山車を曳いて貰う「川越まつりの山車を曳こう」やイベント「小江戸にぎわい茶屋」「小粋な夜の分科会」などがありました。

 さて、サミットシンポジウムでは映画監督の斉藤耕一氏の記念講演の「祭りについて」が行われました。
 斉藤監督は1929年東京八王子生まれで「津軽じょんがら」「旅の重さ」などの名作を撮っています。また、八王子文化連盟理事長を務めるとともに八王子祭り検討委員長でもあります。
 ただのお祭り好きと話を切り出した監督は地元の八王子市の祭りの状況について語りましたが、その祭りの様子が現在の祭りの問題を浮き彫りにしていました。 (但し、内容は私が聞いた範囲ですのでその点はご了承ください。)
 八王子は古くから甲州街道の宿場町として栄え、現在では国道20号線が市の中心部を通っています。  毎年8月の第1週目の土日に行われる八王子市民祭は1日目は山車を町内で曳き回しが行われ、夜は花火大会で甲州街道沿いの商店街に夜店が出ます。2日目は昼に各種パレードや民謡流し(踊り)や千貫神輿の渡御のあと夜には山車の曳き回があります。すっかり寂れた八王子の中心市街地もこの時は神田囃子の流れをくむお囃子が響き渡り賑わうようです。

 八王子市民祭りの中心になるパレードは国道20号線などの幹線道路で行われ、完全交通規制ができないため祭りが非常にやりにくいそうです。このような問題を抱えているまちは多いと思いますが斉藤監督はこの経験から交通規制や環境整備は警察等とのねばり強い交渉が必要だと強調されていました。
 また、八王子でも山車を持つ町内に住む市民が少数になり、ブラスバンドや民謡流し(踊り)の数が多くなってきたそうです。  このようにして、年々「八王子市民祭り」のパレートが長くなり、お祭りの中心が分からなくなり、また、交通規制も大変なので、ある年に「八王子市民祭り」を伝統的な山車の曳き回しや神輿の渡御などの祭りに限ってしまう案がでたそうです。しかしながら民謡流し(踊り)やその他のパレード参加者から猛反対を受けて今の形で行われているようです。
 斉藤監督は「新しい祭りであっても長いこと続けられ定着すると、やはりひとつの伝統的な祭りになるので、そのことに配慮しなくてはならない」と指摘していました。  

 八王子市民祭りの民謡流し(踊り)のように新しく地元に根付いたお祭りでは高円寺の阿波踊り、浅草のサンバカーニバルが有名ですし、この影響を受けて各地で行われるようになった阿波踊りやサンバカーニバルなどの祭りが各地で見かけられます。

 さて、この頃のこのような新しい祭りといえば、なんといっても北海道から始まった「よさこいソーラン(YOSAKOIソーラン)」です。このよさこいソーラン祭りはこのような経緯で始まりました。

 平成3年、高知県出身で当時北海道大学に通っていた大学生が、高知県の「よさこい祭り」で、あるチームの踊りに衝撃を受けたのが「YOSAKOIソーラン祭り」のはじまりです。本場、高知県のよさこい祭りで感動を受けた学生は、北海道にも「よさこい祭り」のような祭りをつくれないかと、その年の12月に仲間たちと「よさこいソーラン祭り実行委員会」を立ち上げました。

●大人たちの冷たい態度
 実行委員会が開催に向けて活動を始めた頃は、大人たちからの風あたりも強く悔しい思いを何度もさせられます。新しい事を始める難しさ、学生という信用の薄さ…。それでも、実行委員会は開催を目指して奮闘を続けました。すると、どんな事を言われても、前むきに開催を信じて活動を続ける学生たちの熱意に理解を示し、協力してくれる大人達が増え始めたのです。

●札幌の街に感動を
 第1回YOSAKOIソーラン祭りは、平成4年6月13・14日に開催されました。この時、学生が高知県の「よさこい祭り」で鳥肌が立つほど感動を受けた、あのチームが参加してくれました。学生は、実行委員会をたち上げる時から、あのチームが参加してくれなければ「YOSAKOIソーラン祭り」は成功しないと確信し、何度も高知県へ足を運んでいたのです。

●成功を確信した瞬間!
  高知県から100人もいるチームをよぶ事は一筋縄ではいきませんでしたが、「札幌の人々に本物の踊りを見せてください」という、学生の熱意と誠意でチーム側も心を動かされ実現。現在では、このチームが第1回に参加してくれなければ、今の「YOSKAOIソーラン祭り」はなかったと言われるほど、札幌の市民を釘付けにし、感動を与え、本物のよさこいを印象づけてくれました。

http://www.factory4.net/yosakoi/basic/soran.htm  

  さて、「ただのお祭り好き」という斉藤耕一監督は今回の講演では話さなかった映画のお話があります。
 この札幌の「よさこいソーラン祭り」以前に別に「よさこいソーラン」(「南中ソーラン」)を行っていたお話を監督は映画に撮っています。
 それは「学び座 ソーランの歌が聞こえる」(斉藤耕一2000年作品)です。  
 http://www.aster.ne.jp/korona/tsuhan/manabiza-newpage.htm  

 この映画の内容は日本最北端のまち稚内市で実際にあった地元の「日本一荒れた中学校」市立稚内南中学校で教師と地域の人たち共に生徒たちに向きあい、生徒たちが行う「南中ソーラン」で学校が立ち直っていく姿を描いたお話です。  この映画ではいじめや校内暴力など子どもたちの問題や先生や地域のあり方などの大人たちの問題と地域文化や祭りなどの地域の問題などいろいろな問題の解決の糸口があります。
 この話はテレビドラマ「3年B組金八先生」シリーズにも取り入れられ、全国的に有名になり、各地の中学校などにも広がっていきました。たとえば今年も

 「南中ソーラン」は80年代、「日本で最も荒れた中学校」と言われた市立稚内南中が地域と協力し、「子どもたちの心を育てよう」と始まったソーラン踊り。91年には、ロック調のオリジナルが完成した。生徒たちが立ち直るきっかけになり、取り組みの様子は、映画化されるなどした。
 赤穂東中では今年度、社会体験を通じて学ぶ「総合的な学習の時間」で、3年生が「踊りを通した、人との出会い、ふれあい」をテーマに「南中ソーラン」に取り組むことを決定。今年5月にあった修学旅行も北海道に行き、「南中ソーラン」を初体験するなど、9月の体育祭での発表へ向け、練習に励んでいる。
 この日は、北海道大の学生を中心にしたソーラン踊りのチーム「縁」が踊りを指導。5月の修学旅行でもレッスンしており、今回は大阪などのイベントに出場する合間に、赤穂に来てもらった。
  3年生約110人は蒸し暑い体育館などで「体を大きく動かして」などと指導を受けながら、懸命に練習。大河隼也君(15)は「迫力が違う」と感心しきりだった。
 「縁」代表の北海道大2年、印南雄太郎さん(20)は「生徒は元気いっぱい。ひとつのことをする大切さを感じてもらえれば」と話していた。 
   「赤穂東中が総合学習でソーラン踊り体育祭で発表へ」    毎日新聞 姫路面 8月21日  若狭幸治  
   http://www.mainichi.co.jp/osaka/itiosi/200208/21.html

 このように小さな街で生まれた祭りと北海道の若者が生み出した祭が全国に広がっていき、それが地域や学校に活力を与えています。

 小江戸サミット川越大会のテーマ「伝承から共創へ」にはいろいろな意味が込められていますが
 ひとつには、祭りの単なる伝承にとどまらない、いろいろな試みをするという「伝承から共創」と
 もうひとつには、古い祭りを伝承し、新しい祭りも含めて共に祭りを創り上げて行くという「伝承から共創」があるのではないでしょうか。

 このように祭りを「伝承から共創」をテーマに考えれば、地域の活性化における祭のありかたもまだまだいろいろな試みができるでしょう。

 さて、最後に再び「祭について」の斉藤監督の講演でお話で終わりたいと思います。

 私があと何本映画を撮れるか分かりませんが、どうしても撮りたい映画があります。それは私の地元の八王子の映画です。
 戦争の時、私の地元八王子は空襲によりほぼ市街地の全域が焼けだされました。それはものすごいものでした。  敗戦後も八王子の人たちは住むところもままならず、打ちひしがれていました。子供ながらにその暗い気分は今でも覚えています。
 ところが食る物もままならないその年に「我がまちの先輩」たちは、なんと空襲の焼け跡の生々しい八王子の街で焼け残った山車を出してお祭りを行ったのです。
 その祭りの鮮やかで、大人達も楽しそうで、夜店も御菓子もないお祭りがどんなに楽しかったか、子供ながら思いました。
 また、そこには当時日本を占領していたGI(米軍の兵士)もいっしょになって踊っている姿もありました。  祭りのすばらしさはここにあると思います。  

 (自註)ところで、祭の話をくだくだ講釈するような野暮してすみません。

   チャリティーイベント紹介


 テレビドラマ「3年B組金八先生」の脚本家小山内美江子さんが運営するボランティア団体「JHP学校をつくる会」のチャリティーイベントです。

  JHPチャリティーイベント

  2002 11/14  赤坂ACTシアター 

  カンボジアと世界の子供たちへ、 TVドラマ「3年B組金八先生」の出演者や日本のまつりのイベント

  JHP・学校をつくる会事務局            http://www.ne.jp/asahi/jhp/home/

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