『S−Report』  10/10 二つの震災で − コーポラティブ住宅 


 同潤会アパートの建て直しが始まり、また保存・再生を求める活動もおこっています。
 同潤会は、1924年関東大震災の復興の中で内務省の外郭団体として設立されました。当初の事業は、よく知られているのが震災で失われた住宅の供給のための住宅建設であり震災等で身体的にハンディキャップを持つことになった人々の収容と授産所の運営でした。後者の事業は1928年には分離独立されることから、1928年以降住宅営団へ発展的解消する1941年までわが国唯一の国家的視野に立つ住宅供給機関として様々な住宅を供給し続けてきたのです。その存続した時期は僅か18年間でしたが、わが国戦前期の住宅の発展には大きな影響を与えたことが知られています。
「同潤会の建築を考える会について」 同潤会の建築を考える会
http://www.rs.kagu.sut.ac.jp/~olab/dojun-kwai/

 同潤会アパートというと建てられた当時はモダンな生活の象徴であり、その後もオシャレなスポットでしたが、このように「震災等で身体的にハンディキャップを持つことになった人々の収容と授産所」の役割を担い、公営集合住宅のルーツだったことも重要です。

 また、1995年の阪神淡路大震災の復興の中で神戸市はインフラ、公共施設の回復、区画整理にかかりきりで、住宅復興に対しては融資制度を充実させる程度でしたが、コーポラティブ住宅を推進していたグループが「共同再建でしか復興できない地区」の人々にコーポラティブ住宅(及びコレクティブ住宅)を提案して建築しました。

 もちろん、コーポラティブ住宅は以前から建てられていましたが、阪神淡路大震災の復興が一つの契機なったと思われます。

 コーポラティブ住宅は「自ら居住するための住宅を建設するものが、組合を結成し、協同して事業計画を進め、土地の取得、建設の設計、工事発注、その他の業務を行い、住宅を取得し、管理していく方式」と定義されている。不動産会社や公社・公団などが売り出す既製品の集合住宅ではなく、「家を建てたい人々が集まり、協同して建てられた集合住宅」である。

 コーポラティブ住宅の特徴は、費用や設計の自由性、あるいは管理や人間関係の選択性等様々な面で、居住者にとってのメリットを引き出す可能をもつ住まいであるというところにある。どのようなメリットに重点を置くかは、それぞれの計画によって異なるが、いずれにしても通常の集合住宅が画一的に、またモノとしてだけ供給されるのに対して、コーポラティブ住宅では自由性をもって、そして住むことのソフトをともなって住宅を取得することが可能である。参加のもたらすさまざまな可能性、たとえば参加することによる費用の削減、ふれあいやたすけあい、健康や生きがい、あるいは環境や障害の問題への取り組みなどを、集まってつくり、集まって住むプロセスを通じて、獲得することが可能なのだという住まいづくりの考え方がコーポラティブ住宅の特徴であるといえる。

「コーポラティブ住宅とは」コープ住宅推進協議会関西
 http://www.coopkyo-kansai.gr.jp/coop_house/coop_house1.htm

 このようなコーポラティブ住宅は既存の集合住宅とは異なり、自分の住みたい住環境を創造するためには自ら参加して造り上げるものです。日本でも30年以上の歴史があり、コーポラティブ住宅は多くの大都市圏を中心に建設され、自治体や都市基盤整備公団も取り組んでいます。

 詳しくは下記のサイトをご覧ください。

 コープ住宅推進協議会関西       http://www.coopkyo-kansai.gr.jp/
 都市住宅を自分たちの手で創る会   http://www.tojuso.com/
 都市住宅とまちづくり研究会       http://www.tmk-web.com/   

 このレポートではこれからの時代の新しい多様な「コーポラティブ住宅」を御紹介します。

 田園住宅型コーポラティブ住宅
 この例では北海道石狩郡当別町の「里山のアトリエ 当別田園住宅」プロジェクト(PRAHAまちづくり情報センター・辻野建設工業株式会社)があります。
 この「里山のアトリエ 当別田園住宅」プロジェクトでは都心居住ではなく、集合住宅ではないところが特徴的です。さらに、定住型ばかりではなく、週末型の計画もあるところが特徴的です。
  「里山のアトリエ 当別田園住宅」辻野建設工業株式会社
 http://www.tsujino-gr.co.jp/new/satoyama/index.html  

 都市型(建設困難斜面地)コーポラティブ住宅
 この例では長崎県長崎市の「長崎にコーポラティブ住宅を作る会」プロジェクト(長崎にコーポラティブ住宅を作る会・梵建築工房)があります。
 この「長崎にコーポラティブ住宅を作る会」プロジェクトは市の協力も仰ぎながらグラバー邸近くの老朽木造住宅が密集している傾斜地に計画されています。
「コーポラティブ住宅が進行中です」梵建築工房  http://www.angel.ne.jp/~bon/worksframe.html  

 地域コミュニティ再生型コーポラティブ住宅
 この例では東京都千代田区神田の「コーポラティブハウス神田東松下町」プロジェクト(特定非営利活動法人 都市住宅とまちづくり研究会)があります。
 「コーポラティブハウス神田東松下町」地権者が立て替えで集合住宅に建て替える際にマンションの新住民に地域社会を担う一員になってもらおうと、コーポラティブ方式が採用された。
「千代田区神田における地域コミュニティ再生型コーポラティブ住宅」  http://homepage1.nifty.com/ebizuka/hikaku/kanda.PDF

 環境共生型コーポラティブ住宅
 この例では期間限定ですが、東京都世田谷区の「松陰コモンズ」プロジェクト(コレクティブハウジング社)があります。
 男女6人一つ屋根の下 東京・世田谷の古民家を再生 26歳から63歳、単身同士「適度な距離感いい」
 築150年の民家で、26歳から63歳までの単身男女6人が共に暮らす試みが東京・世田谷で始まった。高齢化や女性の社会進出で、血縁によらない共同生活を求める人々が都市に生まれている。相続税対策で壊されかけた古民家が、その先駆けの場として再生された。
「松陰コモンズ」より http://www.chc.or.jp/project/shouin_commons/

  このように、同潤会アパートもコーポラティブ住宅も震災をきっかけに時代の要請に要請で興隆してきました。さらにこれからは環境やコミュニティに配慮してコーポラティブ住宅やコレクティブ住宅が発展していくことでしょう。


   イベントの紹介



 名 称 : 2002年度 芸術家の解放区 池袋モンパルナスの集い  
              記念企画展   大塚睦画伯の追悼展(同時開催)

 日 時 : 10月26日(土)PM13:30

 会 場 : 豊島区立勤労福祉会館 6F大会議室 

 費 用 : 1000円 講演

 主 催 : 小熊秀雄協会・池袋モンパルナスの会   

 池袋モンパルナスの会事務局(株)三慧内 
 TEL 03-3987-4650 FAX 03-3987-4659       e-mail ske@sankei-inc.co.jp

 昭和の始めから敗戦頃まで、池袋周辺にいくつもの「アトリエ村」があった事をご存知でしょうか。美術を志す人たちのために多くの貸しアトリエが建ち並び、「村」を形成しました。そして、ここがパリのモンパルナスにならって、「池袋モンパルナス」と呼ばれました。
 そして、「池袋モンパルナス」ゆかりの野見山暁治画伯の講演も聞けるイベントがあります。

  プログラム
   あいさつ    尾崎眞人(美術史家)  
   司会      土方明司(美術史家)
   第1部     講演 「桜ヶ丘パルテノンの思い出と一期一会の人ひと」  野見山暁治(画家)
   第2部     公演 「ぐるりとまわして魚の目」                 アーサー・ビナード(詩人)
   閉会あいさつ  木島始(詩人)

   記念企画展   大塚睦画伯の追悼展(同時開催)



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