『S−Report』  8/29   巣立ちの宝箱 1年1組  −「自分探し」の行方


 六本木交差点から少し奥に入った所に三河台中学校がありました。ありましたというのは周辺の就学人口減少にともない三河台中学校は廃校になったからです。
 現在各地で廃校になった校舎をいろいろと有効活用する試みがなされています。東京都港区では民間NPOを区政のパートナーと して位置付けて三河台中学校をNPO事務所として活用するために「みなとNPOハウス」にしました。
 今回は「みなとNPOハウス」の4階の1年1組に入居したNPOキ ャリナビのオープンハウス(イベント)にお伺いしました。  
 キャリナビとは「自分のOnlyOne探しを行う若者達が活動する新 しい場」です。
 私たちキャリナビメンバー(16〜23歳)は自分だけの生き方と「夢中になれるモノ」を探すために、様々な職業で実際に働いている輝 く大人(ナビゲーター)と「取材」による"出会い"を数多く積み重ねて います。
 社会との接点があまりない私達にとってこの出会いは本当に衝撃 的なものばかりです。
 インターネットの「お仕事人」辞典 http://www.carinavi.org/ ではその取材で私達にお話していただいたオンリーワンな大人達の"生き様"を記事やラジオ・映像などのメディアで作品として残したものを公開しています。 一人でも多くの同世代のみなさん 特に、高校生のみなさんにこの感動を伝えることで 自分らしく生きること/本当の意味で「夢中になれるモノ」をみつける ための何かしらのきっかけを作るお手伝いができればと願っています。
99年4月から、自分達のために自主的に制作をしてきました。
「NPOキャリナビについて」  http://www.carinavi.org/from_office/index.html  
 1年1組キャリナビのオフィスは「インターネットの『お仕事人』辞典」 にナビゲーターとして登場したインテリアコーディネーターの藤倉静子さんが「分校」をイメージしてデザインし、キャリナビメンバーが大工さ んと一緒につくりあげたものです。
 http://www.carinavi.org/information/mikawadai/index.html

 自然素材につつまれたやさしい空間の中で行われたオープンハウスはキャリナビ代表の平尾ゆかりさんの挨拶で始まり、藤倉静子(古未来工房)さんのキャリナビのオフィスの改装にあたってのお話がありました。
 その後は教室のあちこちでキャリナビのメンバーと来場者の間で穏やかながらも真剣な話がされていました。  その中の1人の高校生の斉藤優さんはキャリナビが楽しいと語っていました。彼は海外から日本に戻り、日本の教育になかなか馴染めなかっ たこともあって、「自分とは何か」、「社会(特に日本社会)では自分は何者なのか」と悩んだ時期もあったそうです。
 その後、キャリナビと出会い、「様々な職業で実際に働いている輝く大人」をインタビューすることで少しずつ自分や社会について考えが深まったとのことです。
 今では、彼はキャリナビのメンバーして新しいプロジェクトのために企業とも交渉するようになったと語ってくれました。
 青年期の猶予された時間(モラトリアム)で「自分とは何か」、「社会では自分は何者なのか」を問う「自分探し」は近代以降の青年期の現象です。(註1)
 しかし、従来の「自分探し」はどちらかというと「自分とは何か」にばかり 重点がおかれていて、「社会で自分は何者なのか」についてはあまり考えない傾向がありました。
 「社会で自分は何者なのか」ということを問い直さずに「自分探し」を続けると、社会とはかけ離れた世界での「自分」しか見つからなくなりがちです。つまり、こういう場合には仕事は社会の役割にすぎず、仕事をしてい る「自分」は本当の「自分」ではなく「仮の自分」としてしか思えなくなります。
 キャリナビの活動では実際に働いている大人とインタビューという形で対話することによって、社会の中での仕事の意味や、その仕事をしている人にとっての意味を考えるようになっています。また、この成果を多様 なメディアで伝えることによって社会との関係の結び方ゃ表現仕方を体得できます。
 このような中で自分のやりたいことを見つけるばかりでなく、自分と社会の関係を再構成し、つまり、仕事をしている「自分」と本当の「自分」の 関係を考えていくと同時に、新たに仕事をしていくスキルを獲得するとこと ができます。
 もちろん、こんなことを偉そうに大人が言うのではなく、大人もまたこのような「自分に対する問い直し」をする必要があります。(註2)

 このオープンハウスでも代表の平尾ゆかりさんはキャリナビでは「自分探し」 を終えたら卒業するものと語っていました。
 このことがキャリナビがすばらしい活動になっている理由だと思います。 青年期の猶予された時間(モラトリアム)で得られたものを持って旅立ち をすること、そして、社会の中で仕事をしていく中で問い続けること、これ が従来の「自分探し」に欠けていたものではないでしょうか。

 最後に、藤倉静子さん(古未来工房)の「巣立ちの宝箱 1年1組」文章で今回のレポートを終わりたいと思います。    

 廃校になった中学校の一室そこを初めておとづれた時、子供たちの喧噪でかつてはにぎやかであったろうこの空間はまるで時が止まったように、そして空気さえもよどんでいたただの箱であった。
 しかし、今そんな教室がキャリナビの若者たちの情熱でみごとよみがえった。
 今や、それは単なる箱ではない。そうここは、多くの夢多き若者達の巣立ちの宝箱となってよみがえった。

旧三河台中学校改修工事 1年1組 キャリナビ新事務局完成にあたって」  藤倉静子(古未来工房)

 最後に今回もいろいろとご協力頂いたすべての皆さんに感謝します。

(註1)しかし、最近では「自分探し」も青年ばかりでなく多様な年齢層に広 がってきました。
    栗原彬 「〈やさしさ〉の闘い」 1996年 新曜社

(註2)キャリナビとは違いますが、この大人の「自分に対する問い直し」の活動に「南アルプス山の学校」があります。
    NPO法人 南アルプス山の学校  http://www.yamanogakkou.jp

   芝居の紹介  


 この旧三河台中学の校庭を使って芝居が行われます。

      あの大久保鷹を見るなら今のうち!!

   新宿梁山泊第28回公演  「吸血姫」作・唐 十郎/演出・金 盾進
     〜2002年夏-秋、紫テントが各地を巡る〜 

  会 場 : 新宿梁山泊、久々の各地でテント興行  

 8月31日(土)・9月1日(日)  愛知  田原町・シロキヤ跡地
          〈問合せ〉タハラジャ(渡会) TEL0531-22-2438

 9月 8日(日)〜14日(土)   東京 港区 六本木・旧三河台中学校庭  
           〈問合せ〉新宿梁山泊事務所 TEL03-3385-7188  

 9月20日(金)・21日(土)  仙台  西公園・旧図書館前広場        
            〈問合せ〉仙台市青年文化センター TEL022-727-1875

 9月28日(土)・29日(日)  金沢  金沢市民芸術村憩いの広場  
           〈問合せ〉もっきりや TEL076-231-0096   

 10月12日(土)・13日(日) 岐阜  飛騨 国府町福祉の里広場         
           〈問合せ〉飛騨国府公演実行委員会 TEL0577-72-3111

 料 金 : 前売予約(全席自由 整理番号付)3,500円     当日3,800円  

 時 間 : 全日 夜7:00開演/開場は6:40より /受付開始は6:00から。

  

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